「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド -3ページ目

「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド

ブラジル移民から世界放浪 若い頃にフラッシュバック
消せないアルバムの話。

寒いパリの12月。

 

仕事が終わり、いつも様にいつものカフェでお疲れビール。

 

誰かが「今日、クリスマスじゃない!」「そうだよ」

「なんか寂しくない」「今日は忙し過ぎて、早く寝たい」

「明日も朝が早いしな」

 

皆んなパリに集まったバックパーカー族。

 

「色々な世界を見てきた連中だ」

でも、今は真面目にバイトしている。

 

プロスキヤーの人、絵描きの人、慶応ボーイ、コック、ウエター等々。

 

パリの裏通りのこの店に集まって来た。

 

俺もブラジルから来た移民くずれの人間だ。

 

ビールからワインにと量が進むと「やっぱり メリークリスマスだろ」

後はいつもの飲み会に変わった。

 

「俺たちはいつもクリスマス見たいだよ」

青春のど真ん中、パリで俺たちは跳ねていた。

 

「あの連中、今何してるのかな」「皆んなおっさんだ」

あの空気は今でも臭いを感じる。こんな青春は俺の宝。

今でも笑える、今でもあの時の続きを話せる。

「あの時のパリの青春、バンザイ」

数週間後に店のオープン。

 

今度は食材確保での準備の問題が起きた「店の女将も、それは調理責任者の問題と言う」

日本なら兎も角ここはアメリカだ、仕入れルートも決めていないなんて信じられない。

「特に寿司は魚が命それも鮪は必須の食材」開店までに、最低五十キロ位は必要と言う。

 

「開店の一週間前に、ニューヨークまで買い付け」「何てこった、この先どうなるのかな」

ニューヨークに向かうトラックは、夜のハイウェーを不安飛行「バカヤロー」が腹の中にこだました。

 

どうにか店はオープンをした。

 

開店からも何回かニューヨークへの買出し、これもいい経験と自分に言い聞かせた。

 

パリに居た時も週二回、夜中の二時に開く市場へ食材の買出しに行っていた。

「朝方のパリの街は、何とも言えずカッコいい」

「昨日の臭いを残し、新しいパリの朝が生まれてくる」

 

ニューヨークに行く時も、前夜の十時位に出て朝の市場を目指した。

市内に入る手前の橋を渡る時「その時の町もカッコいい これ位の役特は当然」

 

この風景は、俺の中の世界の景色の「ベストグループに入る」

暑い夏も少し和らいだローマ。

 

「秋には早いけど皆んなステキなる」イタリア人は季節感がいい。

 

仕事終わりの時「明日 なにか用事あります」「なければ 私に付き合ってもらってもいい」

 

「急にどうしたの 別にいいけど」「なんか変だな 今日でもいいけど」

 

「ダメ 明日じゃないと」「いつものコロッセオ近くのバールで待ってて」

 

「時間は10時でお願いします」気にする事なく了解した。

 

次の日は日曜日、朝から蝉が鳴いている「まだ暑いな」

 

バールでカフェフレッドを注文「もう10時か」

 

彼女がやって来た「私も同じ物飲もう 待ちました」「いや別に」

 

相変わらず可愛い服装だ「これからどうするの」

 

真面目な顔になって「コロッセオの周りを一緒に回って」「ええ〜 この暑いのに」

 

「その間 私がいいって言うまで声を出さないで」「それって何」

 

「守ってくれたら トレビの泉のお願い事を教えあげる」うなずいた。

 

何かあったなと感じながら歩き始めた。

 

一周が終わり二周目に入った時「あそこのベンチ座ろう」急に彼女が話した。

 

「もういいのかい」「実は私 日本に帰るの」「えっ そうなんだ」

 

「日本の彼が帰って欲しいみたいで」彼女の目を感じる。

 

「そーか よかったね」「本当にそう思ってる」「当たり前じゃない」

 

「トレビの泉のお願い事言うね」じっと彼女を見た「泣いている」

 

「このまま時間が止まれ いつもお願いしてた」「こんな楽しい時なかったもん」

 

「もっと早く会いたかったよ」胸の中で泣いている。

 

何も言えず青い空を見ていた「幸せになってね いや 幸せになれ」精一杯の一言。

 

あの夏のコロッセオは、遠いイタリアの風色。

 

「ローマ恋物語 今も心にある」