「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド -2ページ目

「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド

ブラジル移民から世界放浪 若い頃にフラッシュバック
消せないアルバムの話。

冬のパリ、コートの襟を立てマフラー姿が似合うパリジェンヌ達。

 

カフェは、笑いながらの会話を楽しむカップルが目につく。

 

俺は夜中の2時にパリを出て、ランディス市場に週二回の仕入れの日々。

この仕事も慣れたけど「朝は暗く寒いな」「早く春が来ないかな」

でも、市場で朝飯のタルティンヌにカフェオレ「これは最高、バターがうまい」

空が明るくなる頃にパリ市内に戻る、道が綺麗に掃除されたシャンゼリゼは美しい。

 

10時には作業が終わり眠りにつく。そんな時「トントン」ドアのノックで目があく。

「ごめん もうお昼休憩なので」、信州の彼女だ「いや もう起きようしてた所だから」

「カフェでも行こうか」、すっかり仲の良い友達になっていた。

「今度の休み、ベルサユーでも行こうか」「いいね」

 

春は未だ来ないけど「楽しい パリはいいな」、ルーブル美術館で絵を鑑賞したり、

サントノーレの高級店で、買えない商品を見て楽しんだり「いつか買えたらいいね」

冬は会話が多くなり、お互いを見てる時間が長い。

 

春が近づくと、パリの日差しが強くなり空が青くなる。

 

「パリジェンヌ達も春近しって感じだ」、信州の彼女も「少しパリ色になってきたかな」

「今度 電車に乗って葡萄畑を見に行こうよ」「どこの ボルドーかな」「いい〜ね」

そんなプランが次々に出てくる。

 

ある日の朝「今でも目に浮かぶ」。店の表の方で何やら騒がしい「イミグレだ」

誰かの声が聞こえた。俺は地下の裏にいた「ダメだ 逃げなきゃ」

裏口から、荷物を抱え知らんぷりして近所のカフェに飛び込んだ。

 

「バイトの仲間どうしてるか」、通りの向こうの店から仲間達が連れていかれる。

「大丈夫かな」言葉にならない。俺はそのままアパートに戻り荷物をまとめた。

 

「トントン」「わたし」、ドアを開けると彼女だ「もう大丈夫だから 店に来てって」

店に行くと女将さんが「店は当分休みにします」「落ち着くまでバイトの人達は自由にして」

パリを出なきゃ行けない「俺はパリを離れます」「解ったわ でも また戻って来てね」

「わかりました」店を出てシャンゼリゼを歩くと涙が止まらない。

「こんな形でパリを出るとは」なんて運命なんだ。

 

彼女が追いかけて来た「これからどうするの」「ロンドンに行くよ 仲間がいるから」

「私はどうしようかな」「君はちゃんとした契約があるから大丈夫だよ」彼女の目には涙が。

「貴方がいなくちゃ つまんないよ」「ロンドンに着いて落ちつたら電話するよ」

「絶対だからね 忘れたらロンドンに探しに行くぞ」「嘘はつかない」

 

パリがこんなに好きなっていた俺「行きたくない」「辛い」

 

シャンゼリゼ通りにはミモザが似合い、香りも街行く人達にも春が来た。

 

「別れのパリと彼女」俺にも春を感じられたのに。

 

「さよなら 大好きなパリ」

その夜は暑く、いつもの様の洗濯物干し場に涼みに登った。

家の中で、俺の一番のお気に入りの所。

空の星は綺麗に見え、東京タワーも見えた。

 

一人で空を見ていると、皆から先生と呼ばれている人がここに登って来た。

「君も暑いのか」「うん」先生は、少し酒臭かった。

「勉強はしているか」「うん」俺はあまりこの人とは話したくなかった。

先生だっただけに、勉強の話が好きで色々と聞いてくる。

 

その時、もう一人上がって来た。「ケイゾウさんだ」

その日はお酒あまり飲んでいなくて、普通に先生と話しをした。

ケイゾウさんは、田舎の夏祭りの話をした。

田舎は東北の秋田で、夏祭りの楽しい思い出を語った。

 

するともう一人、鳶のケンちゃんも来た「狭い物干し場は結構いっぱいになった」

ケンちゃんは、物干し場の隣の屋根に座った。

 

「みんな他人だけど、この家で寝泊りしているので家族見たい」

「何も語らなくても話が通じる」

 

その時、下の方で声がした「そっちに行った」「反対に回れ」

物干し場から下を見ると、警察の人達が何人もいて騒いでいる。

俺は先生に「何かあったのかな」「ドロボーでも入ったじゃないか」

「怖いね」「大丈夫、ここには来ないから」

「何で」「この家じゃ盗む物もないし、ここの住民を見て逆に怖がるよ」

「家が貧乏だから、ドロボーも入らないのか」

他の人達から見れば、ここの住民は怖いおじさん達かもしれない。

 

そこへお父さんが来た「ここから、変な人間が見えなかったですか」

「皆、誰も見えなかったと答えた」お父さんは慌てて降りて行った。

 

入れ違いに人がきた「この人は、家に来て間もない人で名前もよく知らない」

「暑いですね、ドロボーが近所に入った見たいですよ」

先生は「そうなの」「世の中が貧しいから、そんな人間が出来る」

下の方で警察の人達の声が聞こえてきた「この辺のどこかに隠れている、捜せ」

すると、俺の隣に座っていた最近に来た人が「ヤベー」とつぶやいた。

さっと屋根に方に走り、隣の家の屋根からあっと言う間に下に降りて行った。

警官の人の声が「ここにいたぞ」笛がピーピーと鳴った。

「家の住民の人がドロボーだった」

 

今までいて話していた人がドロボーなんて、怖いようだけど何となく興奮した。

先生は落ち着いて「俺達にはなんにもしないよ、同じような境遇の人間だから」

 

お父さんが又来た「何にもなかったですか」「大丈夫」と先生が言った。

「彼がここに上って来た時、足の裏が真っ黒だったので、こいつがドロボーだとピーンきたよ」

すると、お父さんは「お前、いつまでも起きていないで寝なさい」

「明日になると、今夜のドロボーの話が学校でいっぱいだろうな」

友達から聞かれても「ドロボーは、家の住民とは言えない」

でも、ドロボーと捕まる前まで隣に座り、話していたと自慢したかった。

 

そうした長い夏の夜も、佐久間荘にはあった。

あの時の貧乏は「ドラマ見たいな昭和の裏舞台」

 

 

ヨーロッパを転々して、バイトを見つけたジュネーブ。

 

店の感じはカフェ、オーナーは洋食の人見たいな感じ。

奥さんは店でキャシャーをしている「冷たい感じ」

それに若い人がいた「仕事が出来ず いつも怒られていた」

俺は「はい はい」と言って働いた。

 

ジュネーブの街は小さくて「見る所が少ない感じ」

 

綺麗な部屋に泊めてもらい、朝は9時頃までに入ればいいので「楽な環境だ」

 

レマン湖を見ながら歩いて店に向かう「ある朝の事です」

 

ジュネーブの街を抜け、レマン湖の方に向かう時「白いロールスロイスのオープンカー」

信号のある交差点でそれを見た「金持ちの男と毛皮に膝が破れたジーンズの女」

女はシートに座らず、後部の車の上に腰を下ろして「何か叫けんいる見たいな」

背も高そうで金髪「多分モデルだろう」

「かっこいいな ロールスロイスに金髪の女 破れたジーンズ ミンクの毛皮」

「どんな生活をしているのかな 少し覗いて見たいな」

 

今見た光景を考えながら、レマン湖の脇を歩いて店に向かった。

 

白鳥のつがいが「ガーガー言ってる」

そんな朝のジュネーブを迎えた事がある「この時の朝も世界では普通かも知れない」

 

旅の途中の俺には「普通には見えない 羨ましくもない」