シャンゼリゼを泣いて歩いたあの日 パリと別れたくない でも ロンドンに向うしかなかった | 「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド

「あの日 あの時 世界の街角で」バカブンド

ブラジル移民から世界放浪 若い頃にフラッシュバック
消せないアルバムの話。

冬のパリ、コートの襟を立てマフラー姿が似合うパリジェンヌ達。

 

カフェは、笑いながらの会話を楽しむカップルが目につく。

 

俺は夜中の2時にパリを出て、ランディス市場に週二回の仕入れの日々。

この仕事も慣れたけど「朝は暗く寒いな」「早く春が来ないかな」

でも、市場で朝飯のタルティンヌにカフェオレ「これは最高、バターがうまい」

空が明るくなる頃にパリ市内に戻る、道が綺麗に掃除されたシャンゼリゼは美しい。

 

10時には作業が終わり眠りにつく。そんな時「トントン」ドアのノックで目があく。

「ごめん もうお昼休憩なので」、信州の彼女だ「いや もう起きようしてた所だから」

「カフェでも行こうか」、すっかり仲の良い友達になっていた。

「今度の休み、ベルサユーでも行こうか」「いいね」

 

春は未だ来ないけど「楽しい パリはいいな」、ルーブル美術館で絵を鑑賞したり、

サントノーレの高級店で、買えない商品を見て楽しんだり「いつか買えたらいいね」

冬は会話が多くなり、お互いを見てる時間が長い。

 

春が近づくと、パリの日差しが強くなり空が青くなる。

 

「パリジェンヌ達も春近しって感じだ」、信州の彼女も「少しパリ色になってきたかな」

「今度 電車に乗って葡萄畑を見に行こうよ」「どこの ボルドーかな」「いい〜ね」

そんなプランが次々に出てくる。

 

ある日の朝「今でも目に浮かぶ」。店の表の方で何やら騒がしい「イミグレだ」

誰かの声が聞こえた。俺は地下の裏にいた「ダメだ 逃げなきゃ」

裏口から、荷物を抱え知らんぷりして近所のカフェに飛び込んだ。

 

「バイトの仲間どうしてるか」、通りの向こうの店から仲間達が連れていかれる。

「大丈夫かな」言葉にならない。俺はそのままアパートに戻り荷物をまとめた。

 

「トントン」「わたし」、ドアを開けると彼女だ「もう大丈夫だから 店に来てって」

店に行くと女将さんが「店は当分休みにします」「落ち着くまでバイトの人達は自由にして」

パリを出なきゃ行けない「俺はパリを離れます」「解ったわ でも また戻って来てね」

「わかりました」店を出てシャンゼリゼを歩くと涙が止まらない。

「こんな形でパリを出るとは」なんて運命なんだ。

 

彼女が追いかけて来た「これからどうするの」「ロンドンに行くよ 仲間がいるから」

「私はどうしようかな」「君はちゃんとした契約があるから大丈夫だよ」彼女の目には涙が。

「貴方がいなくちゃ つまんないよ」「ロンドンに着いて落ちつたら電話するよ」

「絶対だからね 忘れたらロンドンに探しに行くぞ」「嘘はつかない」

 

パリがこんなに好きなっていた俺「行きたくない」「辛い」

 

シャンゼリゼ通りにはミモザが似合い、香りも街行く人達にも春が来た。

 

「別れのパリと彼女」俺にも春を感じられたのに。

 

「さよなら 大好きなパリ」