【小説】年下の彼。④
***********
あれから、中澤くんからはなんの連絡もない。
仕事してる間も彼の事を思い出す自分にウンザリしつつ、誰にも相談出来ず、悶々とした毎日。
結局。
あれは事故。単なるアクシデントだったんだ。
あたしなんかに本気になる訳ない。
そんな風に思い込ませて、時折泣きたくなる気持ちを、無理矢理押し込んだ。
そして、また金曜日が来た。
今日は男4人、女4人の8人の予定。
でも男子はまだ3人。
…中澤くんは遅れているらしい。
「あ、そういえばさ。」
生中をおいしそうにゴクリとやった、相田くんが嬉しそうに話し始めた。彼は中澤くんの同期だ。
「なになに?」
「中澤のやつ、総務の新人から告白されて、付き合うみたいなんだよね。」
「…えっ?…本当?凄いじゃん。さすがイケメン!」
…嘘だ。
相田くんは枝豆を片手に続ける。
「イケメンかね~あれが。でも女の子のほうは、すっげー可愛いんですよ!ムカつくことにっ。22歳だし。」
うわっ14も下だわ。しかも…可愛いんだ。
「あ~。私も、若くて可愛い奥さんが欲しいなぁ。」
やけくそだ。
「しのぶさん、発言が親父ですよ。」
「そうなの、最近おばちゃん飛び越えて、おじちゃんなのよね~。」
いっそおじいちゃんになっちゃえば楽なのに。
「ハハハッ!ヤバイッすよ、加齢臭とかしだしますよ!」
おい、相田。
「そうなっちゃう?ハハハッ!」
笑う度にどんどん虚しくなる…。
そんな中
「しのぶさん、加齢臭するんですか?気付かなかったなぁ。」
と呑気な顔でやってくる中澤くん。
「よぉ~中澤。待ってたんだぜ、色男!」
「やっと解ったか、相田。」
ムカつく。
なんかムカつく。
いや、はっきりムカつく!
「ちょっとトイレ。」
と明らかに大人げない私は席を立つ。
「いってらっしゃ~い!」
へらへらと手を振る中澤にイライラMAX。
「ごめん、やっぱり急用思い出した、帰る。」
と言い残し、歩き出した。
「ちょっと、しのぶ?!どうした?」
追い掛けて来たのはサチコ。
「大丈夫、ちょっと気分悪くて。みんなに迷惑掛ける前に帰るね。」
「そっか。じゃ送ってこうか?」
心配そうなサチコに嘘をつく。
「大丈夫、今なら一人で帰れるし。」
「大丈夫ですよ、サチコさん。僕が送って行きます。」
やって来たのは…ムカつく中澤だった。
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あれから、中澤くんからはなんの連絡もない。
仕事してる間も彼の事を思い出す自分にウンザリしつつ、誰にも相談出来ず、悶々とした毎日。
結局。
あれは事故。単なるアクシデントだったんだ。
あたしなんかに本気になる訳ない。
そんな風に思い込ませて、時折泣きたくなる気持ちを、無理矢理押し込んだ。
そして、また金曜日が来た。
今日は男4人、女4人の8人の予定。
でも男子はまだ3人。
…中澤くんは遅れているらしい。
「あ、そういえばさ。」
生中をおいしそうにゴクリとやった、相田くんが嬉しそうに話し始めた。彼は中澤くんの同期だ。
「なになに?」
「中澤のやつ、総務の新人から告白されて、付き合うみたいなんだよね。」
「…えっ?…本当?凄いじゃん。さすがイケメン!」
…嘘だ。
相田くんは枝豆を片手に続ける。
「イケメンかね~あれが。でも女の子のほうは、すっげー可愛いんですよ!ムカつくことにっ。22歳だし。」
うわっ14も下だわ。しかも…可愛いんだ。
「あ~。私も、若くて可愛い奥さんが欲しいなぁ。」
やけくそだ。
「しのぶさん、発言が親父ですよ。」
「そうなの、最近おばちゃん飛び越えて、おじちゃんなのよね~。」
いっそおじいちゃんになっちゃえば楽なのに。
「ハハハッ!ヤバイッすよ、加齢臭とかしだしますよ!」
おい、相田。
「そうなっちゃう?ハハハッ!」
笑う度にどんどん虚しくなる…。
そんな中
「しのぶさん、加齢臭するんですか?気付かなかったなぁ。」
と呑気な顔でやってくる中澤くん。
「よぉ~中澤。待ってたんだぜ、色男!」
「やっと解ったか、相田。」
ムカつく。
なんかムカつく。
いや、はっきりムカつく!
「ちょっとトイレ。」
と明らかに大人げない私は席を立つ。
「いってらっしゃ~い!」
へらへらと手を振る中澤にイライラMAX。
「ごめん、やっぱり急用思い出した、帰る。」
と言い残し、歩き出した。
「ちょっと、しのぶ?!どうした?」
追い掛けて来たのはサチコ。
「大丈夫、ちょっと気分悪くて。みんなに迷惑掛ける前に帰るね。」
「そっか。じゃ送ってこうか?」
心配そうなサチコに嘘をつく。
「大丈夫、今なら一人で帰れるし。」
「大丈夫ですよ、サチコさん。僕が送って行きます。」
やって来たのは…ムカつく中澤だった。
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【小説】年下の彼。③
***********
…どれくらい眠ったんだろう?
外に目をやると薄ぼんやりと白んでいる。
…帰らなくちゃ。
身体を起こそうと反対を向く。
「わっ!」
目の前にソファに頭を預けて寝ている中澤くん。
「ん…しのぶさん、おはよう。」
爽やかな中にも、ちょっと抜けた感じの彼にキュン。まずいなぁ、あたし。
「お、おはよう。なんでここに?」
「だって、ここ俺ん家ですよ。昨日のこと覚えてないの?」
「そうじゃなくて、ちゃんとベッドで寝ればいいのに…!」
「ん~。あんまりしのぶさん気持ち良さそうに寝てるから、見てたらそこで寝ちゃった。」
欠伸をしながら、なんでもないように言ってる。
寝顔見られるなんて、正直恥ずかしかったけど、女っぽいとこは見せたくない。今は特に。
自分が勘違いしそうになるもん。
「やだ~!もうお嫁に行けな~い!」
ワザとらしく、おどけた声で言った。
なのに…。
「大丈夫、俺が居ます。」
何時になく、落ち着いた声で返す中澤くん。
今、なんて?
「しのぶさんには俺が居ますから、大丈夫です。それとも、俺じゃ頼りない?」
そう言いながら、近付く中澤くん。
ソファに座ったまま動けない私。
なんだ?この流れ。
やっすい昼メロ?
動揺している間にも、近付く中澤くん。
「あ、そうか据え膳食わぬはなんとかってやつ?私に恥を掻かせないように?も~気にしなくていいのに~。」
ぺらぺらと思ってもないことを口にしている。
あ、とうとうおでこがくっついてる。中澤くんの目は今までの優しい草食系から、肉食系に変わってる。
「ずっと…こうしたかった。」
ちょっと掠れた声が色っぽくて、私はもう目をつぶるしかなかった。
***********
触れ合うようなキスは、いつの間にか互いを貪るようなものに変わっている。
上手いな~、中澤くん。
てか歯磨きしてない。
やだやだ~!恥ずかしい!
…でも気持ちいい。
唇を離した中澤くんが、いい?と目を合わせて囁く。
何が?
そんなの言える訳ない。
…結局、気持ちに負けて最後まで許してしまった。
…すべて終わる頃には、眩しい陽射しが窓に映っていた。
でも…。私は事が終わるとそそくさと服を着て、部屋を出た。
「待って!」って言われたけど、そんなの無理だった。
だって…中澤くんは終わった後、
「ごめん。」
と後悔したような、切ないような顔で一言言うと、俯いてしまった。
ごめんってなに?
ずっとこうしたかったって言ったじゃない。
嘘だったの?
やっぱり据え膳?
悔しいやら、情けないやらだったけど。許したのは私だ。あの時は私だってしたかったのだ。
もう思い出にしよう!と無理に気持ちを奮い立たせ、知らない街を駅まで急いだ。
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…どれくらい眠ったんだろう?
外に目をやると薄ぼんやりと白んでいる。
…帰らなくちゃ。
身体を起こそうと反対を向く。
「わっ!」
目の前にソファに頭を預けて寝ている中澤くん。
「ん…しのぶさん、おはよう。」
爽やかな中にも、ちょっと抜けた感じの彼にキュン。まずいなぁ、あたし。
「お、おはよう。なんでここに?」
「だって、ここ俺ん家ですよ。昨日のこと覚えてないの?」
「そうじゃなくて、ちゃんとベッドで寝ればいいのに…!」
「ん~。あんまりしのぶさん気持ち良さそうに寝てるから、見てたらそこで寝ちゃった。」
欠伸をしながら、なんでもないように言ってる。
寝顔見られるなんて、正直恥ずかしかったけど、女っぽいとこは見せたくない。今は特に。
自分が勘違いしそうになるもん。
「やだ~!もうお嫁に行けな~い!」
ワザとらしく、おどけた声で言った。
なのに…。
「大丈夫、俺が居ます。」
何時になく、落ち着いた声で返す中澤くん。
今、なんて?
「しのぶさんには俺が居ますから、大丈夫です。それとも、俺じゃ頼りない?」
そう言いながら、近付く中澤くん。
ソファに座ったまま動けない私。
なんだ?この流れ。
やっすい昼メロ?
動揺している間にも、近付く中澤くん。
「あ、そうか据え膳食わぬはなんとかってやつ?私に恥を掻かせないように?も~気にしなくていいのに~。」
ぺらぺらと思ってもないことを口にしている。
あ、とうとうおでこがくっついてる。中澤くんの目は今までの優しい草食系から、肉食系に変わってる。
「ずっと…こうしたかった。」
ちょっと掠れた声が色っぽくて、私はもう目をつぶるしかなかった。
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触れ合うようなキスは、いつの間にか互いを貪るようなものに変わっている。
上手いな~、中澤くん。
てか歯磨きしてない。
やだやだ~!恥ずかしい!
…でも気持ちいい。
唇を離した中澤くんが、いい?と目を合わせて囁く。
何が?
そんなの言える訳ない。
…結局、気持ちに負けて最後まで許してしまった。
…すべて終わる頃には、眩しい陽射しが窓に映っていた。
でも…。私は事が終わるとそそくさと服を着て、部屋を出た。
「待って!」って言われたけど、そんなの無理だった。
だって…中澤くんは終わった後、
「ごめん。」
と後悔したような、切ないような顔で一言言うと、俯いてしまった。
ごめんってなに?
ずっとこうしたかったって言ったじゃない。
嘘だったの?
やっぱり据え膳?
悔しいやら、情けないやらだったけど。許したのは私だ。あの時は私だってしたかったのだ。
もう思い出にしよう!と無理に気持ちを奮い立たせ、知らない街を駅まで急いだ。
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【小説】年下の彼②
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がっしりとしたとこに寄り掛かって、気持ちいい。大好きな柔軟剤の香りもする。けど騒がしい。
額の冷たいおしぼりに手をやりながら、目を開ける。
「しのぶさん、大丈夫?」
頭の上に心配そうな中澤くん。
「あ~、大丈夫。」
「良かった!」
ん?
このがっしりとした感じ…
「え~っ!ごめんっ。」中澤くんの腕の中から、ガバッと起き上がる。
途端に頭痛が。
「痛てて…。」
「あ~無理しちゃダメだよ。」
甘いムードになる筈もない、スタンディングバーの控室。
どうりで騒がしい訳だ。私達は深々お詫びをして店を出た。
「しのぶさん、家、埼玉だよね?」
「うん。」
「終電、行っちゃったよ。」
「マジで?!」
「うん。」
あ~やっちゃった。仕方ない、タクシーかな?
「もし良かったら、始発まで俺んち来ますか?」
「え~?!いいよ、悪いし。タクシー拾うから。」
「でもまだ具合良くないでしょ?あんなの並べる?」
そこにはタクシー待ちの長蛇の列。
「う~。」
あと3時間だし。
中澤くんは、こんなおばちゃん襲わないか。
よしっ!
「じゃ、ちょっとだけ休ませてくれる?」
私は気になる中澤くんの家に、図々しくもお邪魔することにした…。
***********
「ごめんね~。すぐ帰るから。」
「さっきからそればっか。気にしないでいいですよ。」
「ありがと。」
「そうそう。素直が1番!」
フっと笑う中澤くんにキュンとする私。
あんまり優しいのも…勘違いするなぁ。
「休んでていいからね。」
と笑顔で自販機で買ってくれたほうじ茶をテーブルに置くと、中澤くんはシャワーを浴びに消えた。
ソファに座る私の傍らには、タオルケット。
ベッドは頑なにお断りした。
酔い潰れて、胸借りて、いくらおばちゃんでも、そんな図々しいことは出来ない。
雑然としつつも綺麗にしてる部屋。モノトーンの家具と好きだと言ってた映画のポスター。
なんか、お持ち帰りされたみたいって…中澤くんに失礼だよね。
あっちは仕方なくお家に上げてくれたんだし、余計なこと考える前に寝よっと。
私はソファに横になり、目を閉じた…。
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がっしりとしたとこに寄り掛かって、気持ちいい。大好きな柔軟剤の香りもする。けど騒がしい。
額の冷たいおしぼりに手をやりながら、目を開ける。
「しのぶさん、大丈夫?」
頭の上に心配そうな中澤くん。
「あ~、大丈夫。」
「良かった!」
ん?
このがっしりとした感じ…
「え~っ!ごめんっ。」中澤くんの腕の中から、ガバッと起き上がる。
途端に頭痛が。
「痛てて…。」
「あ~無理しちゃダメだよ。」
甘いムードになる筈もない、スタンディングバーの控室。
どうりで騒がしい訳だ。私達は深々お詫びをして店を出た。
「しのぶさん、家、埼玉だよね?」
「うん。」
「終電、行っちゃったよ。」
「マジで?!」
「うん。」
あ~やっちゃった。仕方ない、タクシーかな?
「もし良かったら、始発まで俺んち来ますか?」
「え~?!いいよ、悪いし。タクシー拾うから。」
「でもまだ具合良くないでしょ?あんなの並べる?」
そこにはタクシー待ちの長蛇の列。
「う~。」
あと3時間だし。
中澤くんは、こんなおばちゃん襲わないか。
よしっ!
「じゃ、ちょっとだけ休ませてくれる?」
私は気になる中澤くんの家に、図々しくもお邪魔することにした…。
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「ごめんね~。すぐ帰るから。」
「さっきからそればっか。気にしないでいいですよ。」
「ありがと。」
「そうそう。素直が1番!」
フっと笑う中澤くんにキュンとする私。
あんまり優しいのも…勘違いするなぁ。
「休んでていいからね。」
と笑顔で自販機で買ってくれたほうじ茶をテーブルに置くと、中澤くんはシャワーを浴びに消えた。
ソファに座る私の傍らには、タオルケット。
ベッドは頑なにお断りした。
酔い潰れて、胸借りて、いくらおばちゃんでも、そんな図々しいことは出来ない。
雑然としつつも綺麗にしてる部屋。モノトーンの家具と好きだと言ってた映画のポスター。
なんか、お持ち帰りされたみたいって…中澤くんに失礼だよね。
あっちは仕方なくお家に上げてくれたんだし、余計なこと考える前に寝よっと。
私はソファに横になり、目を閉じた…。
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