大人女子の恋愛小説 -6ページ目

【小説】年上の彼女⑦

***********


相田に「俺も行くから」とメールして、一時間後。


残業もそこそこに俺はいつもの居酒屋に向かう。


しのぶさん、来ない?いや、来てるかもしれない…。


いるなら、少しでもしのぶさんの顔がみたい…。




案内された席にはすぐに行かず様子を伺う。



いた!



そこには、相田と楽しそうに会話するしのぶさんの姿。



なんだ…気にしてたのは俺だけ?


一回のアヤマチなんて、大人な彼女にはよくある事なのか?


少しずつ近付くと会話も聞こえて来る。





「…しのぶさん、発言が親父ですよ。」


「そうなの、最近おばちゃん飛び越えて、おじちゃんなのよね~。」

「ハハハッ!ヤバイッすよ、加齢臭とかしだしますよ!」


「そうなっちゃう?ハハハッ!」



この一週間、悩んでた俺が馬鹿だったのか?

真剣になったら、また逃げられちゃうのかな?



仲よさ気に相田と話す、しのぶさんに堪えられなくて

「しのぶさん、加齢臭するんですか?気付かなかったなぁ。」



と呑気な感じで声掛けた。

間髪入れず



「ちょっとトイレ。」



と俯いて席を立つしのぶさん。


あ~やっぱ俺、完璧嫌われたな。



もういいや、どうでも。


「いってらっしゃ~い!」


へらへらしながら手を振った。




…すると、くるっと振り返った彼女がガシッと片手で荷物を掴み



「ごめん、やっぱり急用思い出した、帰る!」



と足早に俺の前を通り過ぎた。




「え?どうしたんだろしのぶ。ちょっと見てくる。」


同僚のサチコさんが後を追う。



「おい、中澤!お前が加齢臭に突っ込むから、しのぶさん怒っちゃっただろ?!微妙なお年頃はナーバスなんだからな、謝ってこいよ。」


「そうですよ、中澤さん謝ったほうがいいですよ。」


相田と鈴木に背中を押されて、俺も後を追った…。


***********

【小説】年上の彼女⑥

***********



じっくり育てて行こうと思ったのに…。



結局、余裕無くして、自分の気持ちだけぶつけて、強引にしのぶさんを抱いてしまった。




すべてが終わると申し訳なさがいっぱいで、気付いたら



「ごめん。」




と口に出していた。



俯いたしのぶさんは何も言わず、部屋を出て行った。


このまま終わりそうで



「待って!」


と声掛けたけど。



やっぱり許しては貰えないよな。




俺は自分の馬鹿さ加減に苦笑いした。




せっかく本気になれるヒトを見付けたと思ったのに…。



電話する勇気もなくて。

だって…嫌われて当然の事をしたのは、俺だから。



***********

次の週。



メシを食うのを惜しんで仕事した。



残業もバンバン入れて、余計なこと考えないようにした。


仕事は嫌いじゃない。



人並みに責任感もあるつもりだ。



でも、今の俺は完璧に仕事に逃げていた。



隙間が出来ると、あの俯いたしのぶさんが浮かんでしまうから…。


「中澤、大丈夫か?」



同僚の相田が帰り支度をして、後ろから声かけてくる。



「何がだよ。」


パソコンから目を離さずに、答えた。


「なんか負のオーラ満載だぞ、お前。」



「ほっとけよ。」


「何があったんだよ。」

「言いたくない。」


「なんだそれ。せっかくいい話持って来てやったのに。」


「なんだよ。」


そこでようやく相田の顔を見た。


しのぶさんのことか?


「お前の事好きだってよ、総務の若宮。」


若宮?誰だそれ?



「きょっとーんと、してんなよ。お前若宮っつったら、新人の中で1番人気だぞ。」


「…あ、…ミス桜ヶ丘?」


「そうそう、桜ヶ丘女子大でミスだった若宮文香。お前のことタイプだってよ。」


「なるほど、可愛いな。」

それだけだけど。


「おっ乗ってきたか?よし!合コンしよう!」


「なんでだよ?!」


「お前だけ幸せになるなんて、ずりーだろ?俺にも分けろ。」


「べつに幸せじゃねーだろ。」


どんなに可愛い子より今はしのぶさんだ。

でも…
俺、完全に嫌われたし。
やっぱり俺には軽いのが合ってんのかな?


ぐるぐるしてる俺の無言を、同意と捉えたのか



「よし、決まりだな。じゃ、俺はいつもの飲みに行って来る。残業、頑張れよ~。」


あっという間に去っていく相田。


いつもの…?



あ…。



…週末だ。



***********

【小説】年上の彼女⑤

**********



夢をみた。

知らない奴としのぶさんが、通りの向こう側で仲良く笑いながら歩いている。
知らない奴は顔は見えないけど、しのぶさんの腰に手を回していて、夢だと思いつつも、激しく嫉妬していた。

さわんなと強く思った。



「わっ!」


驚いた声で、夢から覚める。


目の前には真ん丸目のしのぶさん。


「ん…しのぶさん、おはよう。」

とあいさつをすると、頬を染めてる。


照れてる?




「お、おはよう。なんでここに?」


「だって、ここ俺ん家ですよ。昨日のこと覚えてないの?」



「そうじゃなくて、ちゃんとベッドで寝ればいいのに…!」



寝起きの顔で慌ててるしのぶさん、可愛い。ついからかいたくなって


「ん~。あんまりしのぶさん気持ち良さそうに寝てるから、見てたらそこで寝ちゃった。」


なんて言った。


そしたら


「やだ~!もうお嫁に行けな~い!」



なんて、ワザとらしくおどけて普段通り。


また中澤くん扱い?って思ったらなんかムカついて。


「大丈夫、俺が居ます。」


「しのぶさんには俺が居ますから、大丈夫です。それとも、俺じゃ頼りない?」


ついマジ告白してた。


「あ、そうか据え膳食わぬはなんとかってやつ?私に恥を掻かせないように?も~気にしなくていいのに~。」


マジで言ってんの?

一回溢れ出した気持ちは押さえてた分、コントロールが利かない。


ゆっくり近づくと思わず



「ずっと…こうしたかった。」


って言いながら、しのぶさんの唇を奪っていた。




***********




「ん…。んっはぁ。」

ヤバい。
しのぶさんの吐息可愛い。

触れ合うようなキスは、いつの間にか互いを貪るようなものに変わっている。


…もう、止められなかった。


「いい?」
唇を離して、目を合わせて囁く。


黙ったまま真っ赤な、しのぶさん。


「ダメって言われても止まらないけどね。」



そのままソファにしのぶさんを押し倒した…。



***********