【小説】Seesaw‐sideしのぶ
***********
「あの主人公がまさかあっちとくっつくとは思わなかった。」
「あたしも~。最初の彼のほうがかっこよかったよね。」
出汁の効いてるタレのかかったおぼろ豆腐と焼酎を片手に、さっきまで観ていたラブコメ映画の話で、ひとしきり盛り上がる私たち。
「そういえば…あんたたちもくっつくとは思わなかったけど。」
サチコがニヤケ顔でこちらをみた。
気にしない風を装って、「あたしだってくっつくと思わなかったし。物好きよねぇ、中澤くん。」
とぶっきらぼうに答える。
「フフッ。でも良かった。しのぶ幸せそうで。」
「そうかな?」
なんだか恥ずかしい。
「そうだよ~。最近キラキラしてるよ。」
「じゃ、今まではどんよりしてたの?」
照れ隠しに怒った振り。
「まぁね。ハハハッ。」
「ひど~い!フフフ…。」
気のおけない友達との会話はあっという間だ。
私…ホントに光ってるかな?
***********
「ただいま~。」
パタン。
誰もいない部屋に向かって、挨拶しちゃうのは一人暮しの癖だ。
「ふぅ。」
楽しかった。
でも、以前のようには楽しめない自分にも気付いた。
ずっと頭の隅から離れないのだ。
どんな時も。
…まだ仕事してんのかなぁ、中澤くん。
—23:30を指す携帯の液晶画面には、メールの着信すらなかった。
確かに明日連絡するって言ってたけど…さ。
電話くらいくれたっていいのに。
声…聞きたいなぁ。
ブィーン
ブィーン
ブィーン
携帯が鳴る。
中澤くんから?
ディスプレイも見ずに、電話に出る。
「もしもし?」
「しのぶ?」
残念。母さんだ。
「なに?」
ついついテンションが下がって低い声になる。
「なんで急に低い声になるの?」
「そんなことないよ。」
「まぁいいわ、ねぇ、しのぶ。明日家に来て欲しいんだけど。」
「え?いいけど…なんで?」
本当はヤダけど。だって中澤くんから連絡来るかもだし。
「ほら、北海道からジャガ芋とトウモロコシが来たから。」
「あ、秋子おばちゃん?」
「そうそう、食べにおいで。」
「うん!分かった。じゃね。」
秋子おばちゃんのジャガ芋と、トウモロコシは格別だ。
私の実家は電車でたった30分。
中澤くんにも食べさせてあげたいし、行って来るか。
と…軽い気持ちだった。
あんなことがあるとは思わなかったから。
***********
「あの主人公がまさかあっちとくっつくとは思わなかった。」
「あたしも~。最初の彼のほうがかっこよかったよね。」
出汁の効いてるタレのかかったおぼろ豆腐と焼酎を片手に、さっきまで観ていたラブコメ映画の話で、ひとしきり盛り上がる私たち。
「そういえば…あんたたちもくっつくとは思わなかったけど。」
サチコがニヤケ顔でこちらをみた。
気にしない風を装って、「あたしだってくっつくと思わなかったし。物好きよねぇ、中澤くん。」
とぶっきらぼうに答える。
「フフッ。でも良かった。しのぶ幸せそうで。」
「そうかな?」
なんだか恥ずかしい。
「そうだよ~。最近キラキラしてるよ。」
「じゃ、今まではどんよりしてたの?」
照れ隠しに怒った振り。
「まぁね。ハハハッ。」
「ひど~い!フフフ…。」
気のおけない友達との会話はあっという間だ。
私…ホントに光ってるかな?
***********
「ただいま~。」
パタン。
誰もいない部屋に向かって、挨拶しちゃうのは一人暮しの癖だ。
「ふぅ。」
楽しかった。
でも、以前のようには楽しめない自分にも気付いた。
ずっと頭の隅から離れないのだ。
どんな時も。
…まだ仕事してんのかなぁ、中澤くん。
—23:30を指す携帯の液晶画面には、メールの着信すらなかった。
確かに明日連絡するって言ってたけど…さ。
電話くらいくれたっていいのに。
声…聞きたいなぁ。
ブィーン
ブィーン
ブィーン
携帯が鳴る。
中澤くんから?
ディスプレイも見ずに、電話に出る。
「もしもし?」
「しのぶ?」
残念。母さんだ。
「なに?」
ついついテンションが下がって低い声になる。
「なんで急に低い声になるの?」
「そんなことないよ。」
「まぁいいわ、ねぇ、しのぶ。明日家に来て欲しいんだけど。」
「え?いいけど…なんで?」
本当はヤダけど。だって中澤くんから連絡来るかもだし。
「ほら、北海道からジャガ芋とトウモロコシが来たから。」
「あ、秋子おばちゃん?」
「そうそう、食べにおいで。」
「うん!分かった。じゃね。」
秋子おばちゃんのジャガ芋と、トウモロコシは格別だ。
私の実家は電車でたった30分。
中澤くんにも食べさせてあげたいし、行って来るか。
と…軽い気持ちだった。
あんなことがあるとは思わなかったから。
***********
【小説】Seesaw‐side奏太
カチッ。
フーッ。
“今日は星が見えるな。”
非常階段の踊り場で一服しながら、つかの間の休憩。
“なにしてんのかな、しのぶさん。”
昼間、メールには明日連絡するって書いたし。
休憩出来たけど、マメ過ぎんのも鬱陶しいよな。
中身が中2の年上の彼女は、やっぱり年上なだけあって、普段はサバサバしている。
会うと中2なんだけどなぁ。
「やべっ、こんな時間だ!」
仕事中も彼女の事考えるようになるなんてマジだな、こりゃ。
俺は足早にデスクに戻った…。
***********
「おい、中澤、これ頼む!」
「はいよ!」
「はいよ!っておまえ、こんだけ忙しいのに、気が抜けるような返事すんなよ~。」
弱々しい笑みを浮かべて、二日越しのワイシャツみたいにぐったりとしてる相田。
「え?そんなこと言ったか、俺?」
「げっ。天然かよっ。」
天然…?誰かさんがうつったか?ちょっと嬉しい。
「フフ。まあまあ。…よしっ。仕上がったぞ、さっきの書類。」
「サンキュー。なんでニヤケてんの?こわっ。やったー!今日はこれでおしまいか?」
「何言ってんだよ、さっき会議の召集かかったろ。」
どっちが天然だっつーの。
「あっ!そうだった~。いや!聞いてない、俺は聞いてないぞ。」
「なんの逃避だ、相田。プロジェクトも大詰めなんだ、今日は諦めろ。」
「なんだよ中澤、その余裕は。お前、今日は金曜だぞ。血が騒がないのか?」
「なんのだよ。」
「合コンのだよ。」
「あぁ。俺はもうそういうのいいから。」
しのぶさん居るし。
「なんだよ、彼女持ちの余裕かよ。」
「一途って言えよ。」
「けっ。そんな他の女の臭いがしないやつ魅力ないぜぇ。相手は年上なんだから。」
「大丈夫だよ、気持ちは中2だから。」
「え?」
「フッ…。いやなんでもない。行くぞ、会議室。」
「はいはい。仕方ない、仕事してデキル男でも目指すかぁ!」
相田の大袈裟なガッツポーズに笑いながら、会議室に向かった。
***********
【小説】Seesaw
別れを切り出したのは私だった。
はず…。
付き合って三ヶ月を過ぎた頃、「忙しい」とか「疲れた」とか言って、会えなくなった。
メールも電話も少しずつ減っていった。
真綿で首を絞められるってこういうことかと思うくらい辛い時間。
会えなくて苦しくて、好きな人に嫌われるのが嫌だった。
フェードアウトなんて、堪えられなくて
「別れたい」
って言ったら、あっさり
「解った」
って返ってきた。
その瞬間“自分で言わないのはずるい”って思ったけど。
同時に、“やっぱり別れたくない”って思ってた。
帰り道の途中…道の端に車を停めて、一人でしみじみ泣いた。
もう恋愛は出来ないだろうと思った。
***********
そんなこともあったなぁ…。
…あれからもう5年が経つ。
ずっと一人だったし、これからも一人だろうと思っていた。
ところが。
私には今、隣で微笑んでくれるヒトが出来た。
…中澤くんとはあれから3ヶ月を過ぎ、夏を迎えた。
付き合い始めの頃は、二人とも平日デートが新鮮で、週2回ペースで会っていたけど、最近はお互い仕事が忙しいこともあって、週1回、休日の前に一緒に過ごすことが多い。
今日は金曜日。
やっと取れた昼休みにメールする。
『お疲れ様!
たまには“お家飲み” する?
おつまみ何品か作りっ こしない?
どうかな?』
『ごめん!プロジェクトの立ち上げで今日は会議なんだ。遅くなりそうだし、明日また連絡する。』
『了解!お疲れ様。仕事頑張ってね。』
と、年上の懐深いところをみせたけど…内心はがっかりだ。
通り掛かったサチコに声掛ける。
「ねぇ、今日映画観に行かない?」
「珍しいじゃん。あ、さては中澤くんにフられた?」
「バレた?」
「解るよ~そんな時ばっかり。まーいいけどさ。」
「サンキュー。」
穴埋めに付き合ってくれる、サチコに感謝した。
***********