圧力隔壁破断説の根拠と示されるものは衝撃波による外部要因で説明できる
☆以下に事故調査報告書が後部圧力隔壁から破断が始まった根拠として挙げている事項を羅列するが、これらは全て衝撃波による外部からの衝撃力で説明できる事柄である。
⚫︎後部圧力隔壁は上方の第1ストラップと第2ストラップの間で大きく非与圧側に折れ曲がっていた(報告書.写真77〜83)
⚫︎与圧側の断熱材が後部圧力隔壁の後方の非与圧区域(水平尾翼.垂直尾翼残存部.胴体後部)に広く付着していた(同写真94.95.97.98)
⚫︎ 後部胴体外板のファスナ孔より吹き出したと思われる断熱材(同写真43)
⚫︎垂直尾翼アフト.トルクボックス左側外板付け根部のアンテナケーブル等に断熱材覆いのフィルムが絡まっていた(同写真96)
⚫︎垂直尾翼アフト.トルクボックス右側外板の一部に、ストリンガとの結合リベット頭の縁より筋状に吹き出した黒色の付着物(アルミ粉.作動油.グリスの混合物)の痕跡があった(同写真58.59)
⚫︎ 飛行経路下で回収された垂直安定板の外板は縦横方向ともに外側への反りがあった。(同P34)
⚫︎相模湾で回収された垂直尾翼の前縁下部左側は内側から圧したように膨らんでいた(同写真23)
⚫︎耳がつんと詰まった感じがして、客室に白い霧が立ち込めたが数秒間で収まった(落合証言)
☆上記の事柄は本編の検証にて、衝撃波による外部からの衝撃力で全て説明できるので以下に示す
【検証の記録3から抜粋】
超音速流が右斜め後方から垂直尾翼(垂直安定板と方向舵の隙間)で強力な斜め衝撃波を形成した。方向舵は粉砕して飛び、垂直安定板は、もぎ取られるように損壊した。
その際、後方に堆積して押し寄せる超音速の圧縮波は垂直安定板を内側から圧して膨張させた。
【検証の記録4から抜粋】
初期外力の前方への分力は、力点を垂直尾翼リアスパー上1/3とし、仮の支点をフロントスパー中央やや上部、作用点をフロントスパー胴体取り付け部として働いた。
垂直尾翼取付け部には瞬間的に後下方へ回旋する様に強いモーメントが働き、半球状の圧力隔壁を前上方から圧迫した。続いて下方への分力が更に機体後部を押し下げて圧力隔壁を歪ませた。同時に左回旋力も生じている。
圧力隔壁はこのように非与圧部方向に一部が折れ曲がり、撓んだ隔壁上縁のyコード接続部はリベット孔に沿って破断し、隙間が開いて微小時間の客室急減圧を生じた。しかし塑性変形を最小限に留めて、与圧に押されながら徐々に原型に近い形状に復元した。以上の経緯で微小時間の急減圧から速やかに緩減圧へと移行したが、これは与圧システムにより速やかに回復したと考えられる。
この間に与圧部最後部の断熱材や部材の一部が非与圧部に放出されたものと推測する。
ー 追記として ー
⚫︎後部圧力隔壁のL18接続部において、下側ウェブとスプライトプレートの合わせ面に煙草のヤニが付着していた(事故調.写真87〜93)
▶︎これは長年の金属疲労により合わせ面が歪みリベットヘッドの沈降で隙間が生じた為に、何年もかけてヤニが堆積したものである。内部起因か外部起因かどうかに直接関与しない。
⚫︎プレッシャ.リリーフ.ドアの開閉については「分解検査.調査では明らかにできなかった」と記されているが、後述では「損傷具合から開いた可能性が高いと推定される」と結論を翻している矛盾...(事故調P106)
▶︎ドアはヒンジ部外板の小さな捲れと連結棒の折損を除けば、本体はほぼ損傷がない状態で墜落現場から発見されている。(同写真26.27)
事故調としては圧力隔壁破断時に差圧で開いていなければ困るだろう。しかし飛行中に強い風圧を受けながら前方にオーバースウィングするまで開くことは有り得ず、開いたまま墜落するまでぶら下げ続ける把持力はなく、ドアそのものがほぼ無傷で回収されるはずはない。開いたとすることは物証に反している。
よって事故初期に生じた差圧ではプレッシャー.リリーフ.ドアは開かなかったとする。墜落時の衝撃で後部胴体が大きく撓んだ際に、枠から外れオーバースウィングして弾け飛んだと推定する。