永遠を誓って
蕁麻疹の痒みと腫れは数週間続き、私は
病院で診察を受けていた。
薬の副作用は、痒いだけの辛さだけではなく、
薬を飲むと苦くて、味覚がなくなっている。
髪が痛み、抜け毛がひどくなっている。
白髪が増え、爪が割れる。
一応私も女なので、容姿が悪くなってくるのは
かなり凹んでしまう。
医師はあと1ヶ月で良くなると言う。体重も増えることだろう。
今の私は体重は40㎏位、誰が見ても痩せすぎている。
病院ですれ違う人が振り返って見る。もともと目は大きい方だが、
この病気になってそれはさらに目立つ。
痩せて目が大きい私は、もしかして異様に映るのかな。いやな感じ。
会計をしてお薬を待っている時、彼からメールが来た。
「病院はどうでしたか?」と聞いてくれた。
「まだ病院で、もうすぐ終わるので帰ってからメールします」
夫は何も聞いてこない。今日病院へ行っていることすら
忘れてるらしい。だからメールはしない、帰ってから報告しよう。
家に帰ってから、彼にメールを送った。
「あと1週間、薬を飲んで様子を見ることになりました。
また一週間痒い(>_<)。。
痒いのを我慢しないとね手術になるから。
「頑張れ!しか言えなくてごめんな。」
短い文章だけど、ちゃんと気持ちは伝わってくる。
でも元気にならないと、いつまでたっても会えない。
今度会える日はいつなんだろう・・・
私は会いたい気持ちが募っていくばかりだった。
本気で、彼しか愛せなかった私は思い切って
気持ちを聞いた。私はいつまでたっても友人以上
恋人未満でしかないのだろうか。
募る想いとは反比例に、いつも去っていく彼。
いったい彼は、私のことをどう思っているのだろう・・・・。
「あのね、聞きたいコトがあるの。
言わなくても多少わかっているつもりだけど
あなたの気持ちが知りたい。ダメかな?」
メールの返信はすぐにこなかったが、30分ほどして
着信音がした。私は恐る恐るメールを開いた。
彼は正直な気持ちで、気持ちを伝えてくれた。
世間では、とうてい許されない関係だけど、
それでも、お互いが満足して楽しい時間を過ごしたいと。
25年の歳月を経て、やっと想いが通じた瞬間だった。
私はその時の気持ちを詩に込めている。
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抜けるような青空の日。
秋風が心地いい。
25年間の私の叶わない想いは
こうして秋風にさらわれて行った。
でもこれで終わりじゃない。
私のEndless Love
いつまでもあなたを好きでいたい。
たとえ、また さよならがあっても
この想いは変わらない・・・
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秋の日のデート
待ちに待った彼に会う日の朝、それは起こった。
薬の副作用が出てしまったのだ。
朝、手が痒くなってきた。
もしかしたら、副作用の蕁麻疹かもしれない。
そう思ったが、我慢して彼に会う事にした。
会ってすぐ、
「薬の副作用が出たかもしれない」
そう伝えた。
あまり無理は出来ないので、カラオケに行くことにした。
「歌う?」
そう聞かれたが、そんな気にはなれない。
彼が歌った
福山雅治の桜坂・・・・・
君よずっと幸せに
風にそっと歌うよ
愛は今も 愛のままで
揺れる木漏れ日 薫る桜坂
悲しみに似た 薄紅色
君がいた 恋をしていた
君じゃなくダメなのに
ひとつになれず
愛を知っていたのに
春はやってくるのに
夢は今も 夢のままで
頬にくちづけ 染まる桜坂
抱きしめたい気持ちでいっぱいだった
この街で ずっとふたりで
無邪気すぎた約束
涙に変わる
愛と知っていたのに
花はそっと咲くのに
君は今も 君のままで
逢えないけど
季節は変わるけど
愛しき人
君だけが わかってくれた
憧れを追いかけて
僕は生きるよ
もう何も言わなくても気持ちは通じあう。
彼が歌い終えて振り返った時、ふたりは、ごく自然に唇を重ねる。
やっと素直な自分の気持ちに戻れたような気がした。
ただ、こんな日に出てしまった副作用が憎らしかった。
蕁麻疹が出てはこれ以上一緒にいられない。
2人の帰る電車の方向は逆でホームの向う側に彼が見えた。
彼はベンチに座り携帯でメールを打っているようだった。
『誰にメールしてるのかな』
そうしているうちに私の方に先に電車が来てしまった。
一瞬彼の方を見たが、すぐに席に座った。
その時、私の携帯が鳴った。
「今日はごめん。体の調子が悪いのにつきあわせて」
「気にしなくていいよ。今日は色々話が出来て楽しかったよ」
走っている電車のなか、しばらくはメールのやり取りをした。
時々外を眺めると、もう秋の景色。稲穂が黄金色に染まっていた。
その日、副作用がしっかり出た私は
想像した以上のつらさを味わうことになった。
体中に出た蕁麻疹、ところどころ赤く腫れ上がってくる。
そしてその痒みと言ったら尋常じゃなく、のた打ち回るほどのものだった。
大きな病院なので担当医のいない時は、診てもらえない。
近くの医院に行った時には、血圧が上がり、脈も速い、熱も高かった。
担当医が薬を飲まないと「心不全」を起こすと言っていたが
もはやそれは現実味を帯びてきた。
気づかないうちに、私の病気は確実に進行しているのだ。
だからいくら痒くても、薬は飲み続けなくてはいけない。
点滴をして抗ヒスタミン剤を飲みながら、担当医の診察の日を待った。
担当医は薬を変えた。その病気に効く世界にたった2種類しかない薬。
その後、新しい薬でも蕁麻疹は治まらず
私は数ヶ月の間、痒みと戦うことになる。
その辛い時に、心のよりどころは彼とのメールのやりとりだった。
朝になると私は、待ちきれずメールを入れる。
彼は今忙しいから・・と返信が来る。
だんだん、イライラして 感情的なメールを送る。
「もう返信はいらない。
私昔みたいに壊れていく。
しつこくしたらまた、のり君は逃げていくね。
もう終わりだね」
そしてしばらくたってから、メールがきた。
「すぐに返信できなくてごめんね」と謝る彼。
そんなやりとりが幾度か続いた。
まだここでは書いていないが、私が連れなくした10年の間
彼は病気をしていた。あとで聞いたので彼がどんなに辛かったか
も理解していなかった。
こうして彼のことを想う様になって、また自分が病気になって、
彼のことがとても心配になった。また悪くなってきている
かもしれない・・・
私はメールで謝った。
「ごめん。謝らないで。自分ばかりが辛いと思ってた。
体は大丈夫なの?ちゃんと病院へ行ってね。
もしのり君に何かあっても、私は何もしてあげられない
お見舞いに行くことすら出来ない。お葬式にも行けないから。」
話がかなり飛躍するように思うけど、私たちは結構それが
現実味がある。お互いに難病をかかえ、いつどうなるか分らない2人。
どうしてこんな因縁めいた2人になってしまったのか・・・
それは神さまが与えた2人への試練かもしれないと思った。
前に会った時、彼は私にしっかり御飯を食べるように言った。
彼が病気の時に歩けなくなったと話してくれた。
病気になった時に体力がなければ、もっと病気は進んでしまう。
そう話してくれた。
それなのに以前の私は彼を思いやることさえしていなかった。
私は何て身勝手なんだろう。
なんてバカなんだろう。
ごめんね。のり君・・・
涙がこぼれてきて、しばらく泣いた。
奇病・眼球突出
だんだん痩せていく私は、実家の親の勧めもあり
近くの病院へ行った。夫は今まで気にも留めなかったことだけど。
私は医院で、基礎的な検査と血液検査をして貰った。
その結果、中性脂肪、コレステロール値が
極端に少なく、いわゆる栄養失調状態だった。
そこで体重を計たのだが、その体重に自分でも驚いてしまった。
私は今年明けから比べて10kgも減り42kgしかなかった。
157cmの私にとっては痩せすぎている。
毎日点滴に通い、経口栄養剤を飲んで様子を見ることになった。
けれども体重は一向に増えずむしろ減っていく。
体がだるくて、仕事から帰っては死んだように眠る日々。
医師は詳しい検査をしてくれた。ただ専門医でないと、きちんとした治療が
できないので医大病院に紹介状を書いてくれた。
詳しい検査をしている間にも、病気はだんだん進んでいく。
足がだるくて階段が昇れなくなった。目が見えにくい・・・。
専門医は私の住んでいる県の南部には、医大病院にしかいないらしい。
やっかいな病気なのかもしれない。そんな風に感じた。
紹介された医師はそこの部長だったが、専門分野ではなかった。
「あなたの病気は甲状腺機能亢進症です。薬さえ飲めば治ります。大丈夫ですよ。」
医師はそう言い、病気の薬と心臓の薬を処方してくれた。
私は病気に気づかず長らく放置したせいで、心臓がかなり弱っていた。
ところが、薬を飲みはじめてすぐ体調が悪くなった。
頭がすごく痛いのだ。さっそく病院へ行った。
その日は丁度良い具合に、専門医がいて診てもらうことができた。
心臓の薬が合わない上、処方された薬の量が多すぎたらしい。
さらに医師は、言った。
「階段、上がれなかったでしょう?それに右目が出てる。
これはね、この病気の典型的な症状なんですよ。
ものが見えにくかったでしょう?これが見えます?」
医師は自分の指を上のほうにやったが、私は全く見えなかった。
今まで、物がが見えにくいと思ったのは、そのせいだった。
「先生、元に戻るんですか、右目、それに視力も・・」聞くと
「眼球はもう戻りませんけど、視力は薬を飲んでいる
うちに安定します。以前の生活に近い状態にまで戻りますよ。
でも今は安静にして下さいね。そして薬は飲むのを忘れたらダメです
よ。心不全を起こしますから。目の方は他に治す方法があります。
念のため一度、眼科で診てもらってください。」
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現在、目の方は回復し、甲状腺機能亢進症も安定したが、
このときの、階段を上がれない症状はずっと続く。
それは、全く違う次の病気のはじまりでもあった。
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ショックだった。この病気は、難病より奇病と呼ばれており、
特徴として、眼球突起がある。そして、その出た眼球はもとに戻らないのだ。
一応私も女なので、容姿が変わるのは辛いことだ。
眼科を受診すると視力は0.1まで落ちていた。もう仕事でPC画面を見ることすら、
辛くなっていく。仕方なく私は、仕事を辞めた。
体調も日増しに悪くなり自宅療養を余技なくされた。
日中一人で家にいる事で、ひどい精神不安になっていく。
朝起きても何もする気がしない。買い物に行っても、何を買っていいのかもわからない。
だんだん家から外に出ることが出来なくなっていく。塞ぎこむばかりの毎日が続く。
私はこの病気がわかった頃から、彼にメールをするようになった。
今までは自分からは絶対しなかったのに、精神的不安からなのかもしれない。
彼は私を励ましてくれた。会う約束もしてくれた。
彼はわざわざ休みをとってくれた。ゆっくり会おうねと言った。
でも、こんな顔でもいいのかな?
そう思ったが、久しぶりのデートが嬉しかった。