細い糸
このような出会いでの恋愛期間は、非常に短いものだ。
彼と出会って3ヶ月目、まるでマニアル通りに恋の危機は訪れる。
その当時の私は、まるで何かに取り憑かれたように彼のこと
ばかり考え、会っては触れたい、話をしたいと思うばかりだった。
それが彼が一番嫌っていた相手への依存だった。
そんな時、彼の奥さんが突然倒れた。彼と知り合った頃、
彼は奥さんとはとても仲が良くて夫婦の交わりもかなりの頻度で
あると言っていた。
このような恋で相手を選ぶ場合、円満な家庭を持つ男性の方が
安心して付き合えるのだ。それは男女とも当てはまることだが。
彼は私と付き合い始めてから、奥様とは一度も交渉が
無かった。それは数回の彼との情事のなかで、彼が自身の口から
私に話した言葉だった。
「もう妻とはできない、心は君にあるから」
そんな言葉を聞いて、嬉しくない筈はない。女は不倫関係の中に
あっても欲しいものは、心なのだから。
けれど、奥さんが病気になったことで彼は
奥さんへの罪悪感を持ちはじめる。
「もうこんな状況で、君との関係は楽しめない」
それは、彼が長年私以外のたくさんの女性と関係を持ってきた
ことへの、反省も含まれていた。私はその彼の
まるで私が悪いと言うような「置き換え」をしたことが許せなかった。
ただ・・・私も妻の立場であり、奥さんの気持ちも理解出来てしまう。
今まで仲良かった夫が突然相手にしなくなる。それは外に女が出来たと
認めざるを得ないことだった。私もそんな時期があった。
妻は夫の浮気は簡単に解ってしまうものだ。
いくら携帯の着信履歴を消し、家で平静を装ったところで・・・。
当時の詩ブログより抜粋
◆細い糸
細い糸の繋がりは
何気ない一言で
切れてしまった
幾度も切れては繋ぎ
それの繰り返し
けれど
報われない想いに
涙しても
気持ちは沈むばかり
◆恋愛のカタチ
恋と愛の違いがわからなかった
人を愛することが出来ても
愛されることは難しい
けれど、愛されかたがわからない人は
無理に愛を探さなくていい
恋だけをすればいい
恋愛を「恋」と「愛」をひとつにせず
恋だけをすれば気持ちは楽になる
その場限りの恋でさえ
軽く考えれば辛いものではないのだから
恋のカタチはひとそれぞれで
与え合うのも恋
奪い合うのも恋
求め合わないのも恋
破滅の恋
約束の日、彼が向かった先はホテルだった。
既婚者同士が一目につかず話せる所はここしかないと彼は言った。
もちろん私も子供ではないのだから、多少の心の準備が出来ていた。
けれど、そうなってしまうのには少しばかりの「好意」がなければ
簡単に身体を許すことは出来ない。
彼は私が拒食で、チョコレートだけしか食べていないと言ったことを
覚えていて、待ち合わせの前にチョコを買ってきてくれていた。
わたしは彼のそんな気遣いが嬉しかった。
けれど、今思えば彼は女性の扱い方に慣れていた
だけに過ぎないのだけど。
私は彼と出会って、いとも簡単に恋に落ちてしまった。
彼の囁きは限りなく甘く、愛撫は果てしなく丁寧だった。
男の甘い言葉は、女の五感に直接届き
私は今まで感じたことのないような快感を得ることになる。
それがこの男が何年もかけて培ってきた女性に対しての
熟練されたテクニックであっても。
私は彼の思惑どおり、彼の女になった。
ある日、彼は言った。
「君のことを考えてばかりで仕事が手に付かない」
私はその言葉に驚きを隠せないでいた。
それは彼が新しいロマンスの中にいて、心を燃やしていた
だけに過ぎないのだけど。
「一生、君を大切にするから」
彼は言った。
私は、そんな言葉は信じない。愛に永遠はないのだ。
それは私が元彼との別れで、身を持ってわかったことだった。
元彼と出会って25年間、私は一途に元彼だけを愛してきた。
それが、元彼というだけの関係であっても。
そんな気持ちと裏腹に、私は彼を愛してはじめる。
それが私の人生を狂わせる破滅の恋愛になると言うのに。
これは当時彼に送った詩。
私は、この頃から「あやめ」と名乗り
あるサイトで、恋の詩を書き始める。
・・・もし私に心当たりがあればご一報下さいね(笑)
とまらない船
私の時間は、あの19歳のときのまま、
自分でも知らぬまに止まっていた。
碇を下ろした船のまま、錆びついて、
行き先のないまま、
港で、ただ時間だけを過ごしていた。
そんな錆びついた碇を
もう一度引き上げて、古びたままの船で
行き先は過去のまま、船出をした。
船は目的の港に辿り着けないまま、
あっけなく海に沈んでしまった。
沈んだ船は、もう二度と浮き上がることはない。
そして私は、過去を振り返るような恋は
ただ時間を止めるだけで、決して未来へは
進めないと言うことを知った。
だから今度の船は、
決して過去を振り返ることなく
帆を上げて
今と言う時間を止まることなく
行き先を決めることもなく
ただ広い海に帆をもたげ
流れのままに漂い続けよう。
そして、そのとまらない船の上で、
今あなたと同じ時を刻みたい・・・。
彼の手中に
次の日、彼から携帯に一通のメールが来た。
「昨日は会えて良かったです。
まだ、貴方の手の感触が残っています
PCにメール送りました。読んで下さい」
その日は、たまたま病院の診察日だったので
PCのメールは見ることが出来ない。
仕方なく今病院にいることを伝えた。
当時の私は、薬の副作用の薬疹に悩まされ、
その上、元彼との別れがあり拒食だったので
血液検査の結果は、医師が首をかしげるほど悪くなっていた。
薬は思いのほか増え、私は言いようの無い不安に襲われる
ばかりだった。
病院へ行っている私を心配してか、病院の帰り道
彼が私の携帯に電話をくれた。
「絶対治るから、心配しないで・・」そんな内容だった。
けれど私は、心配してくれている人が出来たと言う喜びよりも
少し複雑な思いがした。
この前の診察日には元彼が
「病院どうでした?」とメールや、電話を入れてくれていた。
でも今は、元彼じゃない。
秋の風がだんだん冷たく感じられるようになった駐車場で、
私はまだ彼よりも、元彼の事を考えていた。
家に戻り、早速PCを開けると長く綴られた彼からの
メールがある。彼は、私に励ましの言葉を
たくさん書いてくれてる。
私はそんなやさしい言葉に幾分、心が和らいだものの
返信したメールはとても短いものだった。
「今日は疲れました。ごめんなさい。」
そこにはまだ、精神的不安定なままの私が居た。
一夜明けて、私は次第に落ち着きを取り戻し
彼にメールを書いた。
冒頭には、心配してくれた事のお礼を書いたものの、
その後には、自分の苦しい気持ちを書いた。
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病気は治るとわかっていても、割り切れないところ
があります。私には逃げられない現実があります。
酒に酔い、呂律が回らなくなり、足をとられて
些細なことで暴言を吐く夫。
傷だらけのリビングの床を掃除するだけで
とても空しくなってしまうのです。
そして思うのです。私は何故ここにいるのだろうと。
自分の生きている意味さえわからなくなる。
今までこの現実から逃げることだけを考えて生きてきました。
いつか自立して、何も気を使わないところで生きたい。
でもその夢は病気になったことで、現実には難しいことになりました。
仕事を失い、健康を失い、夢を失い、私はずっとこの場所で
暮らさなければならない。そう考えると凹むばかりです。
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メールを出してしばらくたってから、彼から電話があった。
直接会って話がしたいと言う。そして会う約束をした。
約束の日は2日後・・・・。