ラストラブ -16ページ目

幽閉という名の地獄(5)

入院して一月間は、外出も許可されずに病棟の中だけで
過ごした。
主人は、週に一回程度見舞いに来てくれるが
精神が安定していない私は、来るたびに口喧嘩をしていた。
それでも、欲しいものは何でも届けてくれた。
一番に気なるのは、娘たちの事だったが
病棟に公衆電話があるので、元気であることは確認できた。
ただ、二人の娘が思春期であったため
母親が精神病で入院したことは、かなりのショックだったと思う。
その証拠に、娘たちは自宅で暮らす事を嫌がり
高校を卒業すると、それぞれに独立していってしまったのだから。


一か月して、やっと外出が許された。
その後は、一泊止まりで自宅に帰ったり出来るように
なったのだが、病棟の外に出られないという閉鎖感は
かなり辛いものがあった。

ただ、精神が落ち着くと、保護入院から任意入院になるので
開放病棟へ変わることができる。
入院しているみんなは、開放病棟へ行きたいと願っていた。


私は3か月の間、この閉鎖病棟に居たのだが
その間、悲しく辛い目に遭い精神を壊した女性を
たくさん見ることになった。


私は人柄からか、病棟の若い子からは
第二のお母さんと呼ばれるようになった。
そこで、自分の娘らと変わらない子たちが遭った壮絶な過去を
知ることになる。
いじめ、強姦、リストカット、自殺願望、拒食・・・。
人は、想像を絶するほど辛い経験をすると

必ず、精神してしまう。

それほど人の心は弱いものなのだ。




幽閉という名の地獄(4)

拒食症の子は、痩せすぎですぐわかった。
統合失調症の子は、頭が良くて理屈っぽい。
登校拒否の子。リスカの子は、当たり前だが腕にたくさん傷がある。
鬱の子は、部屋の隅で丸くなっている。


だいだい精神の病気の子はすぐに分ったが、
どこが悪くて入院しているのかわからない人も
たくさんいた。

特に私も含めてだか、主婦層の人は
あまりに普通すぎて、よくわからないのだ。
ただ、入院の仕方が保護入院であるのは共通している。


たとえばだが、
夫婦喧嘩の末、妻が包丁を持つとどうなるか・・・
普通なら警察を呼ぶだろう、だけどその場合
妻がパニックになっているので、救急車で精神科に
連れてこられる。
拘束されて、叫びながら保護室に入れられるのだ。


私が入院している間、何人もの女性がその入院だった。
廊下を通って保護室に行くのですぐわかった。


白井さんは、


「また被害者が来たわ」


といつも呟いていた。


私は保護室に入ったことがないので、よくわからないが
白井さんの話では・・・・。


窓もなにもない暗い部屋で、ベットもなく
マットだけが置いてある。トイレはポータブル。
トイレットペーパーがおいてある。
日も差さず、時計もないので、時間がわからない。
だいだい食事の時間まえに、排便をしないと
臭くていられない。まるで、刑務所の独居房に等しい。
泣いてもわめいても、誰も来てくれない。
アメリカの独居房もひどいが、ここも同じよう。
悪いことをして、閉じ込められるのは変わりがない。
まるで、お仕置き部屋だった。


保護室からは、
「出して」
叫び声と、泣き声が聞こえてくる。
他人事とは言え、聞くだけで辛かった。


私がこの病棟を「幽閉という名の地獄」と名付けたのは
そのせいだった。


悲しい女たちが、ここに集められる・・・

まるで生き地獄のような世界。


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閉じ込められた窓からは
空は見えなかった


幸か不幸か
現実から隔絶された場所で


自由であることの幸せを知り

まだ生きたいと思った。


★画面にて 咲く菊の花 香りなく


2005/10/6

某精神病院;閉鎖病棟にて。


テレビの画面でしか、菊の花は見られない
見られたとしても、香りのない映像だけしかない。


幽閉という名の地獄・闘病句集

私が入院中、詠んだ句です。


「白き枠 隙間覗けば セミが鳴く」


semi

白き枠とは、病院の窓枠でした。
精神科保護病棟という、閉じ込められた病棟で・・・


闘病句(8/8)


★一輪の白き花咲く 誰のため

★巻いて咲く朝顔を切る 悲しみよ

★出来るなら 君の幸せ わたしにも


闘病句(8/9)


★切花に 愛を語りて 返事なし

★過ぎ去った 昔の恋に涙する我

★抜け殻となった 我が身 炎消え


闘病句(8/12)


★朝顔も切花となり 捨てられる

★夢と言う 不思議な恋をした記憶


闘病句(8/13)


★君知るや 囚われ我 羽切られ

★いつの日か 消えゆく記憶 美しきと

★差し出した その手は今も君探す


闘病句(8/15)


★ひきもどず 恋のうたさえ 歌えぬ身

★流せぬと誓った涙 幻想夢

★さざ波は 心のざわめき 涙うた

★優しきも やわらかき指 ほどけゆく

★心とて 繋がりあえば 愛しきと


闘病句(8/17)


★ピリオドは 君から打った メール文字

★真実を知っては もう 恋なくて

★まだ耳に残るは 君の笑い声

★からみつく 蜘蛛の糸さえ もう切れぬ

★あるかない 真実さぐり 何も出ぬ

★蝉の声 聞いたところで 変わらぬ世

★早朝に迷いし トンボ 羽休め