ラストラブ -10ページ目

彼④

出会ってまだ1か月たたないのに、彼ともう4回逢っていた。
それでも、彼は名前すら明かさないでいた。
こう言った出会いでは、よくあることだったので、
あまり深くは聞かなかった。


ただ、彼がいる業界では、かなり高い(偉い)地位にあると
いうことは分った。
何気ない会話の中、彼が仕事の話をするときが
一番楽しかった。
これがヒロだったら、家の事、家庭菜園の話題しかない。


女は生物学的に、優れた遺伝子を持つ男性に好意を持つ。
仕事ができる男、出世した男、賢い男、強い男。
彼はそのすべてを兼ね備えていた。

だから、反対に私のような女で良いのかと不安になる位だった。
まさに、私にとって彼は白髪の王子さまだった。


だから、私は彼に抱かれると、身も心も溶けるように感じる。

正志に逢うまで、私は女としての喜びすら知らなかった。
愛する人と、身体を重ねる喜び、そして快感を得ることの素晴らしさ。
私は正志の手によって、女としての部分は開眼していた。

それは、彼も私の身体を抱けば簡単にわかることだろう。


「あっ・・・・」
私の体から、熱いものが飛び出していた。
彼は気づいのか、軽くほほ笑んだ。
「いまの・・・し、潮・・・」
私は、熟成された女の身体になっていた。


こんな身体をして、まったく夫だけしか知らないなんて
言える訳がなかった。


「ごめんね、私こんな恋愛は初めてじゃないの」


はじめて、私は彼に過去のことを少し話した。
彼は、そんな私に少し心を開きはじめた。


「昔、もう20年くらいまえになるけど、
 女性関係で揉めたことがあって、それから女性とは
 付き合いしてないんだ」


そう話した。


「そうなんだ・・・・。何となくそんな気がしていたよ」


以前付き合った男性は、みんなベットの上で、甘い言葉を囁くのに
彼はその言葉がなかった。


男の甘い囁きは、女を狂わせる。そう、私が正志に狂ったように。


「大丈夫、私はわきまえているから」

そう言った。

私ももう二度と、あの過ちは繰り返したくない。


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コスモス愛を語るよりも

少しづつ

心を開いていくね

あなたもわたしも

愛を語るよりも

手と手を繋ぐだけで

肌を重ねるだけで

まえよりずっと親しくなれる



ヒロとの出会い

家庭も仕事も上手く行き、そしてボランティアで友達もできた。
何の申し分のない生活だったが、私はまた虚しさを感じはじめる。
夫も退院後は優しかったものの、1年も経つとまた元の性格に
戻っていた。
以前ほど、飲んで暴れるということは無かったが、それでも飲むと
多少の暴言を吐いた。


娘たちは、そんな父を嫌がり長女は遠くの大学で寮生活。
二女は彼と同棲生活で、家には寄り付かなくなった。
当然、夫との二人暮らしとなり、私の寂しさは増すばかりだった。


私は結局、恋愛依存症からは抜け出せなかったのかもしれない。
あるサイトで、ヒロという50代後半の男性と知り合った。
ヒロは、早期退職をし悠々自適な隠居暮らしをしていた。
家では主夫と、良いおじいちゃんをしている。
そんなヒロだが恋愛経験は豊富で、今までの女性遍歴を
包み隠さず話した。


ヒロが現役のころ、単身赴任が多かったので、行く先々で
いつも女を作っていた。博多妻に札幌妻・・・etc。
「僕は嘘がつけないから」それがヒロの口癖だった。
そして、ヒロはこう言った。
「別れるときは綺麗に別れようね」
ドロドロした男女の別れ話は、誰でもしたくはない。
私は、そんなヒロに恋愛感情は持てなかったが、セフレにするのには
良いと思った。


正志との恋愛が最悪だっただけに、ヒロはとても優しく感じた。
毎朝、決まった時間にメールをくれる。
2週間に一度のペースで逢い、近くまで車で迎えに来てくれる。
本当にマメな男だった。


マメな男は、家庭や妻に対してもそれは変わることがなかった。

「今日は家内と映画に行くよ」
「今日は家内と花見に行くよ」
「今週は家内と旅行に行くよ」
「今日は孫のところへ行くよ」

ヒロのくれるメールには、いつも奥さんや孫のことが
書かれてある。
やっかみかもしれないが、それは私のような外の女にとって
気持の良いものではなかった。


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出会ったばかりの
あの人は
別れのときを言い始める

お互いに
別れる時は
あとくされのないように
綺麗に別れよう

僕が出会った女性は
みんな良い人だったと。


彼③

彼に初めて抱かれた日の事は、
不思議な事にほとんど記憶がない。
ただ肌と肌を重ねた瞬間に、この人だと思った。


ヒロとは、ときめく事も、ドキドキすることも
溶けそうな感覚もなかったのに、
彼は、私の身も心も完全に溶かしていた。
恋とは、きっと、そういうものなのだ。
私はあれから、今まで、恋をしていなかったのだ。


そして、安堵した。あの忌まわしい過去、恋で傷ついた心は
彼との出会いで、すべて消えてゆく。

もうどこへ行こうとも正志との過去は
思い出さないだろう。


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恋の傷は

恋で治す

そんな簡単なこと

気付かなかったのは

あなたに出会わなかったから


そして

この悲しみから抜け出せたのは

あなたに出会えたから


だから

少しずつ少しずつ消えていく

過去の心の傷も

過去のあなたも・・・