ふらちな同窓会
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「美味しい!」
 
「俺のも食べるか?」
 
「うん!」
 
 
ここはブルーシールの牧港本店。わたしが食べているのはバニラ&紅イモソフトクリーム、隼人はバニラ&チョコ味。ブルーシールはバニラアイスが濃厚だから、紅芋でもチョコでも美味しい。
 
 
「やっぱりチョコも美味しいね!紅芋と迷ったんだけど・・チョコ食べようかな?」
 
「チョコ味上手いよな。俺が注文してくるよ。」
 
 
テーブルの上のトレイを持っていく。さっきハンバーガーを食べた私たちはデザートにソフトクリームを食べていた。
 
2個目のアイスを食べたいと言っても、茶化さない隼人がアイスより好き。
 
 
「ほら。」
 
「ありがとう!」
 
 
少し恥ずかしながらもソフトクリームを受け取った私は、一口目をパクっと頬張る。
 
美味しい!
 
 
美味しそうなソフトクリーム
 
 
 
 
そんな私を見つめる彼が嬉しそうに感じる。ついその笑顔に私も嬉しくなる。
 
店内はカップルが多かった。もちろん家族連れもいるけど、やっぱり若い子達が多い気がする。
 
 
牧港店は他店とは違いレトロ感たっぷりのソファーや装飾品が観光客にも人気で毎日のように賑わっていた。
 
 
携帯をいじる彼を見ながらチョコソフトクリームを口に運ぶ。
 
 
 
隼人って顔が整っていて顎が小さい。こうしてみるとお兄さんと似ている。瞳の色は黒と言うよりも茶系だった。確かお兄さんも同じ目をしていた。
 
それもそのはず、おじいちゃんはフランス人で二人はクオーターだから、おじいちゃん譲りの綺麗な茶色の瞳だった。
 
 
じっと見ている私に気が付いたのか、携帯から目を離さずに彼が喋りだした。
 
 
「そんなに見つめるなよ。」
 
視線は画面をみたままだ。
 
 
 
 
 
「隼人の目ってカラコンつけてるみたいで綺麗よね。」
 
「俺は黒い方がいい。この色のせいで何回注意されたことか。」
 
 
苦笑いする。
目は茶色でも顔は日本人。
 
 
 
そんな隼人のことをクオーターと知らない人たちは二度見するか、その瞳に見惚れる。それは先生たちも同じで、これまで学年が上がる度に担任に注意されて嫌な思いをしてきた。大会先で他校の先生に注意されたことさえあった。その度にまたかとため息をつきながら「自分はクオーターなんです。」と説明する。すると相手は急にあたふたして謝まってくる。その態度に更に不機嫌になる。いつもこのパターンだった。
 
 
「わたしはその色好きだよ。隼人は黒より茶色が似合ってると思うし。」
 
 
その言葉に反応したように、ピタッと動きを止めるて携帯をテーブルへ置いた。じっとこっちを見ていた。
 
ん、なに??
 
 
笑顔で見つめ返す私。
 
 
 
 
すると突然ソフトクリームをつかんだかと思ったら、身をのり出してキスをしてきた。驚いた私はうっかりソフトクリームを落としそうになる。でも彼の手はしっかりと私の手を握っていた。
 
 
 
慌てて周囲を見渡す私。
 
「ちょっと、ここお店の中!」
 
「大丈夫だよ。誰も見てないから。」
 
 
 
 
 
店内はお昼時で混んでいた。レジにも人が並んでいる。この席はレジから遠くソファーの背もたれが高いから確かに見えない。それでもここはお店の中だ。
 
 
「ソフトクリーム落としそうになったでしょう。」
 
「大丈夫。俺がちゃんと掴んでるから。」
 
 
訝しげに隼人を見るとニヤッと笑った。そしてゆっくりと手を離す。
 
 
 
 
「誰かに見られたらどうするの。」
 
「俺は構わないけど。」
 
 
「わたしが良くないの!」
 
 
 
ほんと隼人って時々子供みたいなことをする。私の反応を見て楽しんでいるのがわかる。
 
心臓がバクバクと音を立てていた。顔は真っ赤だ。
 
 
 
「水飲む?」
 
いたずら顔で聞いてくる隼人。
 
私は精一杯の目力で睨みつける。その様子に満足したように彼は笑って歩いていった。戻ってきて水を手渡そうとするが私は動かない。
 
 
「はい、どうぞ姫。」
 
 
コップをテーブルへ置く。私のご機嫌を取る時に使う呼び方だ。
 
 
 
「簡単に許さないからね。」
 
「はいはい、ほらソフトクリーム垂れてるよ。」
 
 
 
「やだっ、、もう、誰のせいよ!」
 
 
垂れてきたアイスを舐める。その様子を見てさらに満足げに笑う彼は、私の気を逸らすように話題を変えてきた。
 
 
「ところで、飲み会だっけ。」
 
「食事会って言ってたけど、きっと飲み会だよね。」
 
 
 
「ユリが珍しいな。そういうの好きじゃないだろ。」
 
「うん、そうなんだけど。困ってるようだったから、それで・・・。」
 
 
 
私はエマに恋人の振りをして欲しいと言われたこと、エマに5回告白した人がいることを話した。
 
 
 
 
 
「あぁ、なるほど。その5回告った男子に興味があるんだね。」
 
「うん、ちょっと見てみたいの!すごくない?5回だよ。どんな人かな?」
 
 
 
「5回って女子から見ては勲章ものでも、男からみると諦めが悪いというか。さすがにそろそろ相手の事を思って引くべきじゃないか?って思うけど。」
 
「確かにそうだけど、でも5回だよ。それってかなりキツイでしょ。」
 
 
 
「まぁ確かにキツイな。きっと抗体ができてるんじゃん彼は?」
 
「何それ。振られても平気な抗体ってこと?」
 
 
 
「まっ、そんな感じだ。それか、それほど本気でないか。または程よくモテてる奴で女に困ってないタイプとかさ。」
 
「えー、それって軽い男ってこと。」
 
 
 
「ああ、そんな感じかな?」
 
「それなら見なくてもいい。」
 
 
がっかりした私の様子に隼人が笑う。
 
 
「まぁ、気晴らしに出かけてこいよ。帰りは俺が迎えに行くから連絡して。」
 
「わかった。」
 
 
 
ウキウキ気分が半分消えていた。軽いノリで5回も告白したなら最悪だ。エマが怒るのもわかる。
 
顔だけだして途中で帰ろう。
 
 
 
ソフトクリームの最後の一口を口の中へいれた。
 
 
 
 
 
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今日の図書館は人が多かった。テーブルが確保できず諦めて本を物色し始める。借りたい本が見つからない。何かを探しているわけじゃないけど、興味のある本が見つからなかった。集中できていないせいだと自分でも分かっていた。昨日から頭痛がしていて講義中も少しぼーっとしていたから。
 
 
風邪かな?喉は痛くないのに・・。
 
 
そんなことを考えながら、ある本に手を伸ばす。「星の王子様」懐かしい本だった。子供の頃その題名に惹かれて手に取った本。
 
どの本屋さんにも置いている。幾度と増刷されパッケージも多種にわたっていた。
 
 
私が持っている本は少し特殊で、ブルーの布張りの上に刺繍がされていてとても珍しい本だった。本屋で見つけた時はその可愛さに興奮してしまい、完全に一目ぼれだった。
 
本棚の前で本を読んでいる女性
 
 
それとは違って、この本は手の平サイズの小説本のようでかなり古かった。中はところどころ浮き染みがついている。
 
懐かしさに誘われ、通路のベンチに腰を下ろしページをめくり始めた。
 
 
 
 
 
「さゆりちゃん?」
 
 
どこからか声が聞こえた。
 
わたしのこと?
 
 
 
 
いや、たぶん違う。
 
 
 
その声は男性だった。
 
 
 
「さゆりちゃん。こんなところで寝てると風邪ひくよ。」
 
 
ハッとして目を開けると葵先輩が立っていた。
 
いけない、眠ってた!?
 
 
眠くなると座って寝てしまう器用なわたし。座ったままどこでも寝ってしまうから・・恥ずかしい。
 
 
 
 
先輩が本差し出す。
 
「はいこれ、落ちそうだったよ本。」
 
膝の上で本を開いたまま寝ていたんだと思った。慌てて本を受け取る。
 
 
 
「すいません、ありがとうございます。」
 
「顔赤いけど気分悪い?」
 
 
 
「いいえ大丈夫です。」
 
「そうなの?熱があるんじゃない?」
 
 
 
先輩は躊躇することなく、おでこに手を当てる。
 
 
思わずピクつく。
 
 
手を離した先輩は、しゃがんでこっちを見ている。その視線にいたたまれなくなった私は、距離をおくように後ろへとのけ反った。
 
 
 
「あの・・。」
 
 
 
私の声を打ち消すように喋りだす先輩。
 
「微熱がありそうだよ、今日は早く帰った方がいいんじゃない?」
 
 
 
 
その言葉に頷いてリュックを肩にかけ立ち上がろうとしたその時、先輩が一歩前にでる。
 
 
「なにで来たの?今日もバス?」
 
 
 
 
その問いに嫌な予感がした。答えたくない衝動に駆られる。でも答えない訳にはいかない。
 
 
「そうです。」
 
「じゃ、俺も帰るところだから送るよ。」
 
 
 
 
予想した通りの答えに、私はにっこりとほほ笑む。
 
 
 
「いいえ、大丈夫です。」
 
「遠慮しないでいいよ。」
 
 
「いいえ本当に大丈夫です。それに用事があるので・・もうこんな時間ですね。わたし失礼します。」
 
 
 
腕時計を見たあと横にずれるようにして立ち上がった。何かを言われる前に、その場を離れたくて駆け出していた。角を曲がり先輩の気配が消え足音に神経を使うように耳を澄ませる。追ってこないとわかった私はゆっくりと歩きだした。
 
 
ホッとしていたその時、急に腕をつかまれ本棚へ引き込まれた。
 
 
 
ミントの香りがした。
 
 
 
 
確認する必要などなかった。
 
抱き寄せられたその腕の中で、私はしばらく動けなかった。いいえ、動きたくなかった。今のわたしには動揺した心を落ち着かせる何かが必要だったから。
 
頭を優しく撫でるその手が、今どこにいるのかさえ忘れそうになる。
 
 
思わずギュっとしがみついていた。
 
 
 
 
「どうした?・・ユリ??」
 
 
 
 
わたしの大好きな声。
フランス語で喋りかけられているような柔らかな音色で私の名を呼ぶ。
 
 
 
 
「ユリ?」
 
 
 
 
 
 
見上げるとその瞳がこっちを見ていた。
 
 
「ううん、なんでもない。隼人こそどうしたの?」
 
「俺?陽介からユリっぽい子が図書館へ歩いていたって聞いたから。」
 
 
私は天井を見上げ呆れるように目を回したあと、わざとらしくため息をついた。
 
 
「陽介っていつも私を見つけるんだけど。どこかにGPSでも付けてるわけ。」
 
 
 
「それな、俺も不思議で聞いてみたらさ、
 
”殺気がするんだよ。ユリの殺気。分かりやすく言えばオーラだけど、俺にとってはユリのオーラは殺気でしかないから、寒気がするんだ。” 
 
そう言ってたよ。」
 
 
「陽介のやつ・・・。」
 
目を細める私を見て彼は笑った。
 
 
 
 
 
「まあ、それは嘘だと思うけど。たぶん幼馴染の感ってところだろ。」
 
 
確かにそうかもしれない。
 
小さい頃から迷子になった私を見つけるのは両親ではなく、決まって陽介だった。いつも不思議に感じていた。でも逆に安心していた。どこにいても必ず陽介が探し出してくれるそんな確信があったからだ。
 
 
「まぁ時々ムカつくけどな、俺よりもユリのこと知ってる気がするから。」
 
「陽介に嫉妬しないでよ、なんかガッカリしそう。」
 
 
 
「嫉妬とは少し違うかな、自分にムカつく感じだよ。」
 
「それ、よくわかんないよ。」
 
 
 
「まぁ、ユリは女の子だからな。男の気持ちは分からなくていいよ。それより、いつまで抱きついているつもり?」
 
その言葉に、思わず彼を押しのけてしまった。
 
 
そうだった、ここは図書館。誰かに見られる前に行かなきゃ!
 
 
 
「ひどいなユリ。」
 
「ごめん、思わず反応しちゃった。わたし行くね。」
 
 
 
「今日だよな、食事会。」
 
「うん、帰る時メールするから。もしかしたら途中で帰るかもしれないけど。」
 
 
 
「わかった、何時でも平気だから。連絡していいよ。」
 
「うん、ありがとう。」
 
 
 
胸元で小さく手を振って、私は歩きだした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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「ゆりこっち!」
 
エマが手を振っている。小走りで駆け寄る私。約束の時間の5分前だった。
 
 
「ごめん、遅くなって・・。」
 
「平気だよ、約束の時間より早いし。それより可愛いね!わたしの好みだわ。髪型もいい感じ。今日はフェミニンぽくていい!」
 
 
 
「そっ、そう?ありがとう。」
 
 
ロングスカートに白のサマーセーターを選んだ。一番可愛い恰好できてと言われたが、あまり決まりすぎてもどうかと思ったから。バックは落ち着いた感じのケイトスペードにした。髪は右側だけ編み込みをして耳にかけている。
 
ロングスカートの女性
 
 
 
 
「エマも可愛いね!そのバックも素敵。」
 
「これいいでしょう!すごく気に入って即買いしたのよ。」
 
 
 
エマはいつも通りで黒のミニスカート。ピンクのノースリーブから覗く細い腕が、更に華奢なエマを凛とさせていた。サンダルは薄いピンク色、バックも淡いピンク色でサマンサの夏限定バックだった。
 
 
「行こっか!」
 
腕を組むエマ。お店へ入ってみると、外見とは違って高級感ある店内に驚く。まだ新しいのかとても綺麗なお店。
 
 
「杉田様お待ちしていました。ご案内します。」
 
 
「もう集まっていますか?」
 
「はい、みなさんおいでですよ杉田様。」
 
 
どうやらエマは常連客のようで、入口で待っていたスタッフがすぐに声をかけてきた。
 
 
 
 
「どうそ、こちらです。」
 
スタッフの女性がドアを開ける。
 
 
 
目の前に見えるその光景に驚きを隠せなかった。
 
 
友達の食事会と聞いていた私は10名ぐらいの集まりかと思っていた。とんでもなかった。10名どころか100名近くいる。完全な立食パーティーだ。
 
これは、どういうこと??
 
 
 
テーブルの上のたくさんのワイングラス
 
 
 
困惑している私をよそに、腕を引っ張って中へ入っていくエマ。皆の視線が一斉に私たちに注がれる。驚いた私の表情をみて彼女は小声で話だした。
 
「今日はね、二クラス合同のクラス会なの。まあ、小さな同窓会みたいな感じ?それもパートナー同伴のね。面白い企画でしょう。」
 
 
何も言えなかった。
あっという間に人に囲まてしまったから。次々とエマに声をかける友人たち。エマは私を紹介していく。
 
 
 
「私の親友のユリ。可愛いでしょう!でもダメだからね。ユリは私のお気に入りだから口説いたらダメよ。」
 
 
 
 
そう言って皆を笑わせる。エマは主役だった。きっと高校では目立つメンバーの一人だったに違いない。後ろには彼女に声をかけよう待っている人たちがいる。
 
男子は女子のその圧倒的な囲みに入ることができなくて、女子たちが散るのを更に待っていた。
 
そんな中、大きな声が聞こえた!
 
 
 
「エマぁ~!!」
 
 
 
 
甘ったるいその声が会場内に響き渡る。皆が振り返る。するとその子の為に自然と道ができ始めた。不思議な光景だった。まるでロミオをジュリエットのようだ。
 
その子は膝をつき、両手を広げエマを見ていた。いやエマしか見ていなかった。そして一気に走りだす。
 
エマは私の手を強く握り、隠すように前に出た。走ってきたその子はエマの前で止まった。そして屈託のない笑顔で彼女を見ている。ゆっくりと両手を広げ抱きつこうとしたその時、エマの右手がその子の頭を鷲掴みにした。
 
 
「こら、抱きつくなルカ!100年早い!!」
 
 
 
エマが大きな声で言うと、その子はがっかりしたように小さくうつむいた。そしてゆっくりと顔を上げたその顔は、とても可愛い男の子だった。いや、女の子?わたしにはどっちか分からなかった。それぐらい可愛い子だったから。
 
 
「エマ、大好き!!」
 
エマの手をゆっくりと払いのけたその子は、一瞬の隙をついて彼女に抱きく。落胆したように腕を下ろすエマの様子が後ろにいた私にも分かった。
 
嬉しそうに抱きついたその子の表情は本当に幸せそうだった。
 
 
すると、その子と目が合った。私は目を反らすことができなかった。何故ならその優しそうな瞳の奥に燃えるような赤い棘が見えたから。
 
 
笑顔で見つめるその子のジリジリとした視線が、私の胸を刺す。
 
 
 
 
何?わたし、睨まれてる・・・??
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
次回、「ありありの嫉妬」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

添付・複写コピー・模倣行為のないようにご協力お願いします。連載不定期。

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