日本農業新聞2024年花の販売キーワード 昨年とおなじ「物流」と「価格転嫁」 | 宇田 明の『もう少しだけ言います』

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毎年、新年の恒例
日本農業新聞 花のトレンド
2024年、
見出し「枝物、草花類に関心」
小見出し「日持ちのよい洋菊も」
(卸や小売り、輸入業者ら59人が回答)



画像 日本農業新聞(2024年1月13日)

 

リード記事をそのまま引用します。
2024年の花き業界の関心は、枝物に集まる。
季節感をだせる商材として家庭用、装飾向けともに小売からの支持が厚い。
猛暑を受けて日持ちが良いディスバッドマムなど洋菊も注目される。
問題は物流だ。
集出荷の効率化を求める声が多く、輸送力不足が懸念される。
「物流の2024年問題」への危機感が高まっている。


あれ?
どこかで見たような記事。
そうです。
昨年の調査にそっくり。
今風にいえばコピペ。
2023年1月22日「日本農業新聞2023年花の販売キーワードは「値頃感」より「価格転嫁」」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12785331595.html

 

昨年2023年の見出し「草花」「枝物」に期待
小見出し 季節感で家庭需要定着
リード記事

花き業界の関心は草花や枝物に集まる。
近年好調な家庭需要の定着に向け、季節感を演出し、飽きさせない提案が重要になる。
注目の物日では「ミモザの日」が順位を上げた。
課題は物流だ。
トラック運転手の労働力不足が懸念される「2024年問題」に備え、集出荷の効率化や短茎規格の浸透も急務になる。


日本農業新聞にしてはすこし安易な紙面づくりに思えます。
昨年とどう変わったかの考察がほしい。

日本農業新聞トレンド調査にはひとつの法則があるようです。
表1は、過去からの花のトレンド調査の見出し一覧(表1)。
23年-24年が「枝物・草花」
21年-22年が「家庭向け」
17年-20年が「安定供給」
15年-16年が「日持ち」



表1 日本農業新聞、過去からの「花のトレンド」記事の見出し一覧

 

おなじトレンドが2年続くのが慣例。
まるで1期2年の役員任期のようです。
「安定供給」は永遠の課題ですから、2期4年続いたのでしょう。
年が明けたとたんの来年の話ですが、2年の任期が終了した「枝物・草花類」のあとが気になります。
枝物・草花類がどうなったかの深掘りもほしい。

次に、花の販売キーワード(最大3つ選択)。
昨年まではベスト10をグラフで示してくれていましたが、今年は文章のみでベスト3までで、簡略化(表2)。
2024年の販売キーワード
1位 物流の効率化(63%)
2位 コストの価格転嫁(54%)
3位 安定供給(44%)

 

過去のキーワードを見ると、
「物流の効率化」は2022年から、「コストの価格転嫁」は2023年から顔をだしました。


表2 日本農業新聞 花の販売キーワード順位の推移

 

いずれも世間で騒がれだしてからということです。
重大なことは理解できますが、なんとなくおつき合い的な感じもします。
農畜産全体のキーワードとまったくおなじです。



画像 2024年農畜産物の販売キーワード

    日本農業新聞(2024年1月1日)    

 

今年の農畜産物トレンド調査における販売キーワード(日本農業新聞2024年1月1日)。
1位 物流(64%)
2位 適正価格(値上げ・コスト転嫁)(58%)
3位 安定供給(40%)

安定供給は農業が続く限り、生産者の努力目標。
物流はメニューが示されているので、産地、生産者、市場それぞれがどう対応するかだけ。
しかし、
適正価格・価格転嫁は、それぞれに相手がある。
生産者は花屋、花屋はエンドユーザー。
しかも生産者の価格は市場で決まる。
労働者の賃上げのように、組合と経営者との団体交渉で決まるものではない。
また、米価のように、「カカクテンカ、カカクテンカ」と叫んでいれば国が何とかしてくれるものでもない。

農水省は昨年から、「適正な価格形成に関する協議会」を立ちあげ、適正な価格形成のための仕組みづくりなどを検討しているそうです。
しかし、検討する対象は牛乳と納豆・豆腐だけ。
生鮮野菜や果実ではなく、加工食品。
しかも、価格転嫁の前提になるのは「生産コストの上昇」。
その生産コストを消費者に見える化することも関係業界の考え方がちがい、むずかしいのが現状。

そもそも経営が苦しいからと言って、国に価格転嫁をお願いすることがまちがい。
価格は、花はもちろん、野菜や果実も市場で決まる。
自助・共助・公助では、自助・共助が優先される。
2023年11月12日「このままでは国産切り花は消滅する(対策②)自助>共助>公助」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12828109875.html

 

その観点からすると、2024年に儲かりそうな品目を農業新聞に教えてもらうなんてことはありえない。


画像 2024年に販売が伸びそうな品目

    日本農業新聞(2024年1月13日)   

 

なにをつくって儲けるかは、まさに自己責任。
すでに花市場の社員が産地に出向き、全国津々浦々にミモザなどの枝ものを植えさせている。
村中一斉にタネをまくのが稲作。
となりがタネをまいたら、時期をずらしてタネをまくのが花づくり。

日本農業新聞のことし売れそうな品目調査、

情報としては重要。
しかし参考ていどに。
愚ブログもおなじです。

そんなこと、わかってますよね。

 

 

宇田明の『もう少しだけ言います』(No.412. 2024.1.21)

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