日本農業新聞2023年花の販売キーワードは「値頃感」より「価格転嫁」 | 宇田 明の『もう少しだけ言います』

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毎年、新年の恒例
日本農業新聞 2023年花のトレンド
見出しは「草花、枝物に期待」
小見出しが「季節感で家庭需要定着」

(小売、卸、加工業者、輸入業者ら63人から回答)



画像 日本農業新聞(2023年1月13日)

    2023年花のトレンド調査

    松山誠さんのFBより引用

 

その内容については、すでにさまざまな方がブログなどで紹介されています。
MPSジャパン松島社長のブログ

2023年1月13日「2023年花きのトレンド~日本農業新聞調査」
http://mpsjapan-blog.jugem.jp/?eid=5613

わたしは紙面上だけの限られたデータから、2023年花のトレンドを深読み、裏読みします。



表1 日本農業新聞花のトレンド見出し(2014年~2023年)

 

2014年からの見出し、小見出しを並べると、花産業の変化がわかります(表1)。
15年~16年は「日持ち」
17年~20年は「安定供給」
21年~22年は「家庭需要=ホームユース」


今年23年は、いつもの年とニュアンスがちがっています。
いままでは販売のキーワードが見出しになっていましたが、23年は販売が期待できる品目が見出し。
話しが小さくなったようです。
昨年も販売が期待される品目は「草花」、「枝物」が1位、2位でしたから、とくに目新しい動きではありません。
草花は小回りがきくので、ブームで増減します。
枝物は近年、卸売業者(いちば)が、全国津々浦々の産地に推奨しています。

おかげで、全国の産地の空き地、空きハウスに枝物用の樹木が植えられています。

メイン品目を減らし、枝物用苗木を植えた生産者も多い。
なんとしても需要を拡大し、売らなければ全国にユーカリやミモザなどのジャングルが出現します。
日本農業新聞の見出しは、需要喚起に一役買っているのでしょう。

 


表2 日本農業新聞花のトレンド(2023年1月13日)

   販売が期待される品目(最大三つ選択)

 

では2023年花の販売キーワードは?

 


図 日本農業新聞花のトレンド調査(2023年1月13日)

  花の販売キーワードベスト10(最大三つ選択)

 

昨年(22年)に突然1位に躍り出た「物流の効率化」が今年(23年)も1位。
今年も別の突然がありました。
2位の「コストの価格転嫁」。


この1位、2位は見事に時代を反映。
「物流の2024年問題」と「原材料費の高騰」。
花産業だけでなく、日本経済全体の問題。
これらは「外圧」であり、まさにピンチがチャンス。
平穏無事なときには改革はすすまない。
外圧があって、改革・改善。
物流の2024年問題で、市場の業務改善がすすんでいます。
輸送の効率化として、

ゲートウエイ構想、輸送拠点市場・・

待ち時間、積み降ろし時間の短縮・・
前々日出荷、共通パレット、台車輸送、共通出荷ダンボールケース、通い箱・・
送り状のデジタル化・・


原材料費の高騰が続いています。

値上げラッシュ。

価格転嫁できなければ、生産者、小売の経営にシワヨセ。
まず花屋さんが高くなった仕入れ値を販売価格に転嫁。
「値頃感」が10位に沈み、「価格転嫁」が2位に突如登場したことが、23年という時代を象徴。


常連の「家庭需要」、「安定供給」は23年も3位、4位で、花産業岩盤キーワード。
5位の「輸出入の回復」は深読みしなければならないでしょう。
「輸出入」とひとくくりにしているが、花産業の関心はもっぱら「輸入の回復」。
市場入荷量が減っていることが仕入れ値を高くし、花屋さんの経営を苦しめている。

その原因は、輸入が減ったからではなく、国産が減ったから。

2022年11月27日「円安で切り花の輸入は減ったのか?」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12776533693.html


減りつづける国産の回復は一朝一夕にはどうにもならない。
今すぐに輸入を増やして、国産の減少分をカバーしてほしいというのが、卸、小売の願い。
したがって、5位の「輸出入の回復」は4位の「安定供給」とおなじこと。


そうすると、実質1位はあいかわらず「安定供給」ということになる。
安定供給あっての市場・仲卸であり、小売です。
また安定供給あって花農家の経営が成りたつ。


手っ取り早い安定供給は、キーワード5位の「輸(出)入の回復」ですが、
輸入依存は麻薬。
依存しすぎると、花産業の体力をいっそう衰弱させ、やがては崩壊。
ここは急がば回れ。
国内生産の回復。
そのひとつが、市場、花屋さんが期待する品目の生産。
草花、枝物。


花業界、とくに卸売業者は横並びが好きらしい。
産地に伝える情報が画一化。

どの市場もおなじことをいう、金太郎飴。
それは、目利き力、相場観など専門知の衰え。

花市場にスペシャリストがいなくなった。
それぞれの市場で考えること、予想することができなくなっている。
トップカンパニー大田花きに右へならえ。
ふたを開けてみたら、全国から草花、枝物が大量入荷とならないように。
ほどほどに。


花は作ってなんぼではなく、売れてなんぼの世界。

さてさて新年から話が横道にそれました。

日本農業新聞の花のトレンド、
2023年は、
時代がいま求めるのは「物流の効率化」と「コストの価格転嫁」。
花産業が求めつづけているのは、「安定供給」と「ホームユースの定着」。
安定供給には、目先的には輸入の回復、
本質的には国内生産の回復。
ホームユースの定着には「季節感」、
その象徴が「草花」、「枝物」。

そして物価の高騰、値上げラッシュ、

花屋さんは「値頃感」より「価格転嫁」。

 

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宇田明の『もう少しだけ言います』(No.361 2023.1.22)

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