このままでは国産切り花は消滅する(対策②)自助>共助>公助 | 宇田 明の『もう少しだけ言います』

宇田 明の『もう少しだけ言います』

宇田 明が『ウダウダ言います』、『まだまだ言います』に引き続き、花産業のお役に立つ情報を『もう少しだけ』発信します。

オオカミ少年のように「このままでは国産切り花は消滅する」と言いつづけています。
国産切り花は、花産業のバブルがはじけた20世紀末から減りつづけています。
減っている原因は、花農家が減っているからです。
花農家が減っているのは、花をつくっても儲からなくなったことと、高齢化した生産者のリタイア。
毎年3,000戸近くの花農家が花づくりを辞めています。
何もしなければ2035年にはゼロになります。

 


図1 花販売農家数の推移と将来予測

   5年ごとの調査の農林業センサスのデータを宇田が作図

 

前回は花農家を減らさないための対策①として、通常規格を実需に合わせて5~10cm短くしましょうという具体的な提案でした。
2023年11月5日「このままでは国産切り花は消滅する(対策①)切り花長規格の短茎化でコスト削減」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12827143135.html

規格を少し短くするだけで、

例えば輪ギクなら現状の90cmを80cmにするだけで、生産コスト、出荷コスト、花屋さんで発生する生ごみ処分コストなどで100億円が削減できます。
当面は、

その100億円を輪ギク農家に還元することで、経営が大幅に改善され、花農家として存続できるようになります。

今回のお題は対策②です。
対策①の通常規格の短縮に続いて、具体的な画期的な対策を期待されていると思いますが、なにもありません。
対策②では、「花農家それぞれの自助努力で生きのこれ」です。
生きのこった先には、大きな残存者利益が待ちうけています。
残存者利益を手にするには、いま花をつくって儲けることが必要。
それには自助努力しかありません。
それが自由主義経済の鉄則。

菅前首相は「自助・共助・公助」を提唱しました。
公助より自助を優先することは、政府の役割を放棄したようなスローガンで、国民からもマスコミからも評判は良くありませんでした。
しかし、「自助・共助・公助」の自助を優先することは、社会の成り立ちの基本です。
公助はセイフティネットにすぎません。



画像 菅前首相のスローガンは「自助・共助・公助」

 

稲麦など主作では、食料安全保障、国土保全、伝統文化継承などの観点から公助が当然と全中・農協は主張しています。
生産資材の値上げによる生産コストアップに対しては、価格転嫁を求めています。
これらの主張は、いつまでも国が管理をするすでに廃止された食管法のぬるま湯から脱却できていないからです。
農産物であってもその価格は、市場において需要と供給で決まるべきものです。

花はもともと農業本流からはずれた亜流、傍流の立場。
国の援助、公助とは無縁の分野(でした)。
それが2014年に「花き振興法」ができてからは普通の農作物になり、10億円近くの振興予算がつくようになりました。
役所用語で、振興とは保護と読みかえることができます。
花き振興法ができたということは、花も国により保護が必要な普通の農産物になったということです。
その結果、花農家や花関連団体は補助金に慣れ、公助を求める気持ちが強くなりすぎているように思えます。

花は自己責任の産業です。
儲けるのも損をするのも自己責任。
参入するのも退場するのも自己責任。
儲かれば参入し、儲からなくなれば退場するだけです。
ですから、儲からなくなった花づくりを花農家が辞め、戸数が減ることは不思議ではありません。

 

災害や、市場価格が低下し、収入が減ったときには共助があります。

すなわち、収入保険や園芸施設共済。

もちろん、保険・共済ですから掛け金(50%ほどは国庫補助)が必要です。



画像 共助には収入保険

    もちろん保険ですから掛け金が必要(国庫補助があります)

 

日本の花づくりには正規軍が健在といいましたが、実体は正規軍など存在しません。
2023年10月29日「日本は正規軍の四大切り花が健闘しているが、米国は草花などでのゲリラ戦」
https://ameblo.jp/awaji-u/entry-12826312518.html


日本の花づくりは小農の集まり。
小農が系統やグループに集まって共撰共販をしているだけ。
正規軍とよべるのは、JA愛知みなみの輪ギク部会(渥美のキク)など少数。
共撰共販といってもほとんどは個人農家の集合体。
共撰共販のブランド名で、個人個人が思い思いにゲリラ戦を戦っているだけ。

ですから、これからも、
超高品質の高級品で高単価を目指すのもよし、低コストでホームユースを目指すのもよし、だれも持っていない品種、品目でオンリーワンの勝負をするのもよし。
さらにブライダルは高級で、ホームユース、仏花は劣るといったマーケットに貴賎、
上下はない。

くどくどと書きましたが、花農家を減らさないためには、まず花農家自身が生きのこる強い意志をもたなければならない。
生きのこるために、公助をあてにしてはならない。
自分の力、才覚で生きのこる。
花は自助の産業。 
味も素っ気もありませんが、これが対策②の結論です。

 

ただし、自助にがんばりすぎないように。

引き際も大切です。

自分の代で花づくりを終えるとしても、子どもに経営を引き継ぐとしても、

ハッピーリタイアが第一です。

 

宇田明の『もう少しだけ言います』(No.403. 2023.11.12)

2015年以前のブログは

http://ameblo.jp/udaakiraでご覧頂けでます

 

農業協同組合新聞のweb版(JAcom 無料)に、

コラム「花づくりの現場から」を連載しています。
https://www.jacom.or.jp/column/