「このままでは国産切り花は消滅する」。
どうしたらよいのか?
対策①は、
切り花の通常規格を5~10cm短くすれば、生産コスト、流通コストを削減でき、花農家の経営を改善することができる、でした。
対策②は、味もそっけもない「自助」。
花農家は、自分の力、才覚で生きのこれ、でした。
生きのこれば、大きな残存者利益を手にすることができます。
さらに、
売上が減ったとき、災害を受けたときには収入保険、建物共済などの「共助」がある、
国に助けてもらう「公助」には期待するな、でした。
それでおしまいと思われたでしょうが、しつこくまだ続きます。
今回は対策③として、
「花では、熱き心をもつ人がいれば産地を動かすことができる」です。
稲作や麦作は法律や規則、国の方針でがんじがらめ、
個人の熱意ぐらいでは、1ミリも動かない。
市場経済、自由主義経済の申し子、花は自由度が高い部門。
儲けるのも損をするのも自己責任。
儲かれば参入し、儲からなければ退場するだけのこと。
花のもうひとつの特徴は「人依存性」が高い分野。
花はひとしだい。
人の力で良くも悪くもなる。
産地に、熱い人がひとりでもいれば産地は動く。
閉塞状況を打ち破ることができる。
負の連鎖を断ち切ることができる。
産地を大きく飛躍させることができる。
熱い心を持つ人であれば、農協の営農指導員でも販売担当者でも、役場の花担当者でも、県の普及員や研究員、農林事務所の担当者でも、だれでも産地をかわらせる。
所属や地位、年齢、性別は関係がない。
その人が生産者なら、なおさら良い。
生産者がリーダーになり、農協、公務員が支える形が本来の姿。
産地に根を張る「人」にしか産地を元気にすることができない。
元気な産地には、かならず熱い生産者、農協職員、役場職員、県職員がいる。
まず公務員。
農業では、最大最高のシンクタンクは公務員。
国民の血税で仕事をしているから、情報、相談、指導などは無料。
そのため、農業では有料の民間のシンクタンク、コンサルが育たない。
栽培技術がないから、当然でもある。
したがって、
研修会の講師ならどこにでもいるが、産地のピンチを救えるのは地元に根をはり、持続的に指導し、結果をともに確認しあえる地元の技術者しかいない。
花農家が得られる最大の公助は普及員、研究員などの技術者の支え。
講師は県の普及指導員や農協の営農指導員
もちろん無料、数少ない花の「公助」
消費者が大好きなバラの生産が激減したのは、バラ生産者が地元技術者に門戸を閉じ、活用しなかったから。
自ら公助を放棄した。
もちろん育てることもしなかったから、日本からバラの技術者、研究者がいなくなった。
バラ生産のピンチをいっしょになって考えてくれる技術者がいないことは、生産者だけでなく花産業全体にとっての不幸。
とはいえ、花農家は公務員、具体的には技術者である普及員、研究員に不満をもっている。
いわく、技術レベルが低い、知りたいことを教えてくれない、すぐに転勤する・・
最初から篤農家、ベテラン農家が満足する技術者など存在しない。
技術者は産地が育てるもの。
育った技術者が産地のピンチを救い、飛躍させる。
農家と技術者は、お互いが高めあう関係。
公務員の弱点は、具体的な営業活動ができないこと。
もちろんアドバイスはできるが。
営業活動は農協の担当者。
系統出荷、系統共撰共販なら当然、市場との窓口は農協担当者。
日々の出荷情報、クレーム対応、長期的には予約相対交渉・・
市場での産地の評価は農協担当者で決まるといっても過言ではない。
それだけ大切な仕事を担っているのに、花担当の農協職員の農協内での立場は弱い。
金融・共済に比べると花ではまったく稼げないから。
野菜に比べても、規模が小さい花が稼ぐ金額は圧倒的に小さい。
めんどくさい仕事に前向きに取りくむ花担当者を評価し、守るのは、理事や役員等を務める花農家の役割。
熱く有能な農協担当者は、まちがいなく産地に大きな利益をもたらす。
花の魅力は、ひとりの力でも産地を動かすことができることです。
対策③は、産地に根を張る熱き心を持つ人に期待、です。
熱い人、もう一歩前へ。
宇田明の『もう少しだけ言います』(No.404. 2023.11.19)
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