「ラノリン」という保湿成分
こんにちは。橋本です。
「ラノリン」という保湿成分を知っていますか?
ラノリンそのものを使っている人は少ないかもしれませんが、ラノリンを配合している医薬品、化粧品は多く、気づかないうちに使っている人も多いかと思います。
たとえば、ラノリンを加工した「還元ラノリン」を配合しているのが、ヒルドイドローションです。
よく使われているにもかかわらず、あまり語られることのないラノリン。
ここで、「ラノリン」の特徴を軽くまとめておきますね。
羊毛の脂から作られる
ラノリンは、刈り取った羊毛をウールに加工するときに出る副産物、ウールグリス(羊毛脂)を精製したものです。
動物由来ではあるものの、動物を傷つけることなく生産することができるので、ナチュラル志向の人には好まれます。
ウールの加工は、はるか昔からおこなわれてきたことなので、副産物であるラノリンも歴史は古いです。
ラノリンのメリット
ラノリンは、ロウ状の脂です。
人間の皮脂に近い成分なので、皮膚になじみやすく、よく浸透してくれます。
また、吸水性も高く、ラノリンの重量に対して2倍の水分を吸収するといわれています。
皮膚になじみやすい。浸透しやすい。吸水性が高い。
この3つの理由が、保湿剤、医薬品、化粧品によく使われる、大きな理由ですね。
そして、油分にも、水分にもなじむことができるラノリンは、天然の界面活性剤ともいえるので、油分と水分を混ぜる「乳化剤」としても使われます。
ラノリンの種類
しかし、ラノリンは、動物独特のにおい、そして褐色であるために、現代の感覚からすると、商品価値が低く見られがち。
正直なところ、顔に塗るには不快です。
そのため、精製、抽出、化学処理などで調製して、使いやすく工夫がされています。
医薬品、化粧品では、次のようなものがよく使われています。
・ 精製ラノリン(吸着精製ラノリン)
・ ラノリンアルコール
・ 加水ラノリン
・ 還元ラノリン
ラノリンによるかぶれ
ラノリンの欠点は、接触皮膚炎(かぶれ)をおこすケースが報告されていること。
本来、ラノリンは、アレルゲンとして感作しやすいものではありません。
しかし、乾燥肌やアトピーなど、皮膚のバリア機能が低下している場合では、ラノリンで接触皮膚炎(かぶれ)をおこすことも考えられます。
とくに注意したいのは、ラノリンの中でも、「ラノリンアルコール」が含まれているもの。 *1
そういう保湿剤を、湿疹部分に使う場合は、「かぶれないか」注意が必要です。
不純物をなるべく除去した「吸着精製ラノリン」は、アレルギー性が低いと報告されています。
必ずしも、「天然由来だから安全、体にいい」とはかぎりません。
参考文献:
1) 石原 勝, ほか. ラノリンパッチテスト研究斑. パッチテストによるラノリンおよびラノリン誘導体の安全性の比較検討. 西日皮 47: 864-873, 1985.