(カフェにて)


男1
「(封筒を渡す)はい。借りてたお金。」

男2
「(封筒の中を見て)・・・全額ある。
 どうしたの、突然。」

男1
「いや、まぁちょっとね。」

男2
「梶谷からも聞いたよ。
 お前、あいつから借りてたお金も返したんだって?」

男1
「うん。
 やっぱり、ずっと借りっぱなしってのもよくないし。」

男2
「え、え、え。
 なになに、怖いんだけど。
 何企んでんの?」

男1
「何も企んでないよ。」

男2
「なんか噂だと
 他の人から借りてた借金も一気に返してたっていうじゃん。」

男1
「まぁ、そうだね。」

男2
「なんでそんな身辺整理みたいなことを・・・。
 ・・・え。」

男1
「ん?」

男2
「・・・お前、変なこと考えてないよね。」

男1
「そ、そんなことないよ!」

男2
「いや、ホントやめろよ?」

男1
「だ、大丈夫だって。」

男2
「ホントに・・・。」

男2(男1と同時に)
「命を粗末にするんじゃない!」
男1(男2と同時に)
「竜宮城に行くだけだから!」

男2
「え、何?何?何?」

男1
「命?命?命を何て?」

男2
「いや、お前の方が数倍おかしいこと言ってるから。
 竜宮城が何て?」

男1
「竜宮城に行くだけだから。」

男2
「竜宮城って、あの?」

男1
「そう。」

男2
「行くの?」

男1
「うん。」

男2
「いつ?」

男1
「近いうちに。」

男2
「・・・どういうこと?」

男1
「いや、この前海辺を散歩してたら、
 子供たちが亀をいじめてたんだよ。」

男2
「この令和に?」

男1
「だから、『チャンス!』と思って止めに入って・・・。」

男2
「『チャンス!』って思ったんだ。」

男1
「で、子供たちにお金渡して亀を助けてあげて。」

男2
「うんうん。」

男1
「で、しばらく待ってたんだけど。」

男2
「しばらく待ったんだ。」

男1
「その気配がないから『こりゃ別日だな』と思って、
 『また後日』って言って帰ったんだよ。」

男2
「『また後日』って言ったんだ、亀に。」

男1
「もうそこからはソワソワしっぱなしよ。」

男2
「いつ来るかわからないから?」

男1
「そう。
 だから、とりあえずいつ迎えが来てもいいように借金を返して回って。」

男2
「返そうと思えば返せたんだ。」

男1
「会社も辞めて。」

男2
「大きく出たな。」

男1
「家も引き払って。」

男2
「ひき返せないところまで行っちゃったな。」

男1
「あとは待つだけよ。」

男2
「うん。
 あの、盛り上がってるとこ悪いんだけどさ。」

男1
「何?」

男2
「・・・来ないよ?」

男1
「来ない?」

男2
「迎え。」

男1
「マジで?」

男2
「マジで。」

男1
「マジで言ってる?」

男2
「言ってる。」

男1
「じゃあ、あの亀をいじめてた子供たちは何なの?」

男2
「ただの悪ガキ。」

男1
「いや、ないないない!
 俺、竜宮城に行けると思って、ものすごい奮発したんだよ?」

男2
「そんなにお金出したんだ。」

男1
「うん。」

男2
「いくら?」

男1
「500円。」

男2
「あ・・・、あー。」

男1
「あ、でもアレだよ?
 二人で500円だよ?」

男2
「さらに、あー。」

男1
「これで来なかったら、500円返せって感じだよ。」

男2
「・・・想像より二桁くらい違ってびっくりした。」

男1
「正直、もう今日くらいには来てくれないと困るんだけど。」

男2
「困るよね。
 家ないんだもんね。」

男1
「もう魚食べる口になってるし。」

男2
「『その程度なら我慢しろ』と言いたい。」

男1
「とりあえず一度行ったら
 しばらく帰ってこないと思うから。」

男2
「まぁ、数百年帰ってこないだろうね。」

男1
「その間、この街をよろしく。」

男2
「お前、この街のなんなんだよ。」

男1
「玉手箱持って帰ってくるから、楽しみに待ってて。」

男2
「うん。待てない。
 一応子々孫々伝えておくけど、
 孫くらいが限度じゃないかな、伝わるの。」

男1
「玉手箱持って帰ってきたら、
 速攻メルカリで売る!」

男2
「お前、子供に払った500円でどれだけ元取ろうとしてんだよ。」

男1
「・・・とりあえず、あの海岸で待とうかな。」

男2
「あ、そう。
 夜とか寒いけど大丈夫?」

男1
「うん。腰ミノあるから。」

男2
「あるから何?って感じだけど。
 じゃ、お疲れ。」

男1
「うん、また後日ー。」



(後日)



刑事
「・・・それが、最後の会話だったんですね。」

男2
「えぇ。
 だから、行方不明者のポスター見てびっくりして・・・。」

 

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

この記事を書いたのが2024年3月30日の午前1時。

ギリギリです。

 

数年前の弟との会話から作ったコント。

いつまで経ってもバカ話で笑いあえる弟、最高です。

 

声劇台本として使う場合は、

最後の刑事のシーンの工夫(サイレンのSEを入れるなど)が必要ですね。

 

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】ランプの魔人#4
【お題コント】Siri
【コント】金八先生 エピソード1
【お題コント】歴史上の人物・女性版
【お題コント】食レポ

 

 

 

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今後のコント作りの励みになるので、ぜひ、感想をお聞かせください。

 

【実演したい方へ】

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アレンジや改変も自由です。

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