正岡子規(1867~1902)

明治の俳人。

向かって左側を向いた肖像写真が有名。

 


正岡子規
「撮り直しをお願いします!」

写真屋
「はい?」

正岡子規
「今撮影した写真!
 撮り直しをお願いします!」

写真屋
「撮り直しですか・・・?」

正岡子規
「そう!
 見て!出来上がった写真!
 横見てるから!」

写真屋
「見てますね。
 でも、それは『撮りまーす』って言った瞬間、
 子規さんが右を向いたからです。」

正岡子規
「違うの。
 それは撮影の瞬間、外でパトカーのサイレンの音が聞こえたから
 『何かなー?』って右向いた瞬間撮られちゃったの。」

写真屋
「なんでパトカーのサイレンに反応するんですか・・・。」

正岡子規
「とにかく!
 撮り直しお願いします!」

写真屋
「しかし、フィルム代もそこそこかかりますし・・・。」

正岡子規
「払う!
 払うから!」

写真屋
「・・・必死ですね。」

正岡子規
「必死だよ!
 わたし、本を出版するの!
 そのときの著者近影として載せる写真なんだから!
 右向いちゃダメなの!」

写真屋
「別に右向いててもいいじゃないですか。」

正岡子規
「ダメ!
 こればっかりはこだわらせて!
 後世に残るものだから!」

写真屋
「(出来上がった写真を見て)でも、これはこれで味があっていいですよ。」

正岡子規
「いやいや。
 これじゃ読者は
 『写真では顔の左側しか見えないけど、右側はどうなってるんだろう』
 って思っちゃうから!」

写真屋
「思いませんよ。
 『きっと右側も左側と同じようなのがあるんだろうな』で終わりです。」

正岡子規
「気にならない?
 被写体の人が右を向いてたら、
 『この人の右側どうなってるんだろう』って。」

写真屋
「思いませんよ。
 そんな発想ないです。」

正岡子規
「私は思うよ。
 今だって君とこうしてる間も、
 『君の後ろ側はどうなってるんだろう』
 って思いながら話してるし。」

写真屋
「(背中を隠しながら)ごめんなさい。
 怖いんですけど・・・。」

正岡子規
「とにかく、著者近影が右側向いた顔じゃダメなの。
 他の作家の方はみんな正面向いてるし。」

写真屋
「あ、こういうのはどうですか?」

正岡子規
「なに?」

写真屋
「写真って反転できるんです。」

正岡子規
「反転?」

写真屋
「そう。
 今撮った写真を正常に焼いたものと、
 左右反転させたものを印刷して、
 著者近影を2枚にするんです。」

正岡子規
「斬新過ぎるでしょ。
 著者近影が著者左側と右側1枚ずつって。」

写真屋
「でも、それなら子規さんが心配されてる『右側問題』も解決ですよ。」

正岡子規
「そうかもしれないけど、
 『なんで左側と右側から撮ったの?』って思われるよ。」

写真屋
「あ、じゃあ正面と裏側からも撮りましょう。
 著者近影4枚。」

正岡子規
「ごめん。
 正面から撮ったんなら、後の3枚いらないから。」

写真屋
「じゃあとりあえず左右反転させた写真を現像しますね。」

正岡子規
「いや、だから撮り直して!」

写真屋
「でも、フィルム代が・・・。」

正岡子規
「だから払います!」

写真屋
「めんどくさい。」

正岡子規
「言ったな、本音を!」

写真屋
「『どうしても』って言うならやりますけど・・・。」

正岡子規
「どうしても!
 これはどうしても!!
 譲れないの!」

写真屋
「・・・わかりました。
 じゃあ準備しますね。」

正岡子規
「よかったぁ・・・。」


(10分後)


正岡子規
「撮り直しお願いします!!」

写真屋
「(出来上がった写真を見ながら)2回連続で右を見ますかね・・・。」

正岡子規
「撮影の直前、救急車のサイレンが近くで止まったの!
 『なんだろう』と右を見た瞬間、撮るんだもん。」

写真屋
「なんで毎回サイレンに反応するんですか。
 珍しくもないでしょう?」

正岡子規
「近くで止まったら様子見るでしょ?」

写真屋
「撮影中は見ちゃダメです。」

正岡子規
「撮り直しお願いします!」

写真屋
「もうダメですよ。
 2回撮って同じような写真が2回撮れたんですもん。
 もうこれが公式の宣材ですよ。」

正岡子規
「次はがんばる!
 がんばれば正面の写真を撮るのも夢じゃないと思う!」

写真屋
「普通の人はがんばらなくても正面の写真撮れるんです。」

正岡子規
「あ。」

写真屋
「どうしました?」

正岡子規
「すごいアイディア思いついた!」

写真屋
「・・・一応聞きましょうか?」

正岡子規
「最初から左に90度回して座ればいいんじゃない?
 (椅子を動かして座り直して)ほら!
 こうすれば右を向いたとき正面の写真が撮れる!
 さすが正岡子規!賢い!」

写真屋
「・・・賢い大人の発言とは思えないんですけど。
 その体勢で撮るってことでいいですか?」

正岡子規
「うん!撮って!」

写真屋
「わかりました。」


(10分後)


正岡子規
「(できあがった写真を見ながら)・・・どうして横向きになっちゃうんだろうね?」

写真屋
「横向きに座ったからですね。」

 

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

別のコントでチラっと正岡子規の肖像を使ったことがありましたが、

今回はメインのアイディアとして使ってみました。

 

普通のことができないまま、どんどん深みにハマっていく。

アイディア出しもスムーズにできました。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】ブラインド
【コント】崖
【コント】関ヶ原の戦い#2
【コント】お隣りさん
【コント】現場検証

 

 

 

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今後のコント作りの励みになるので、ぜひ、感想をお聞かせください。

 

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