(夜。外ではドーン!ドーン!と花火の音がする)



「ただいまー。」


「おかえり。」


「お、今日はハンバーグか。」


「もう食べる?」


「食べようかな。(席につく)」


「今、用意するわね。」


「(机の上に置かれたダンボール箱に気づく)これは何?」


「あぁ、お隣りさんが引っ越してきたらしくて、
 挨拶がてらいただいたんだけど・・・。」


「開けていい?」


「どうぞ。」


(ダンボール箱を開けて、中から茶色の紙でぐるぐる巻きにされた30cmくらいの玉を取り出す)


「はい。晩ごはん。」


「(玉を見ながら)ねぇ。」


「ん?」


「この玉は何・・・?」


「あぁ・・・。

 お隣りさん、花火職人らしくて、

 それ、自作の打ち上げ花火だって。」


「自作の打ち上げ花火・・・?」


「一尺玉だそうよ。」


「・・・いや、打ち上げ花火もらってもなぁ。」


「なんか、このマンションの人全員に配ってるみたい。」


「どうりで今日、お祭りでもないのに花火上がってるなぁと思った。」


「お隣りさんが引っ越してきたお祝いみたいになってるわね。」


「どうするの、これ?」


「とりあえず、ウチにあっても困ると思って、
 さっきこれ持ってお隣りさんのところに返しに行ったの。」


「うん。そうしたら?」


「『あぁ、そうか。そうですよね。』って言って、これくれた。

 (部屋の奥から、花火を打ち上げるための筒を持ってくる)」


「うん。違う違う。
 打ち上げる手段がなくて、文句言いにいったわけじゃないから。」


「あなた、これ、返してきて。」


「俺が!?」


「困るもの。
 さっきもハンバーグ作ってる最中、何度か点火しそうになったし。」


「台所に置いておくからだよ。」


「他に置く場所なかったのよ。」


「ゴミの日に出せば?」


「打ち上げ花火って何ゴミよ?」
 


「・・・。」


「・・・。」


「・・・燃えるゴミ?」


「燃やしちゃダメよ。打ち上がっちゃうから。」


「ガラスとかと同じように扱う?」


「というと?」


「袋の中に一尺玉を入れて、袋にペンで『打ち上げ花火』って書くとか。」


「お隣りさんに失礼じゃない。
 引っ越し祝いで配ったものが後日、ゴミ捨て場に捨ててあったら。」


「わかりゃしないって。」


「わかるわよ。
 しっかり『打ち上げ花火』って書いてあるんだから。」

花火の音
「(外から)ドーーーーン!」


「(外を見て)たーまやーーー!」


「ねぇ、これ返してきて。」


「俺が行くの?」


「ついでにこの筒も。」


「大丈夫かな。今後、ギクシャクしない?
 (打ち上げ花火と筒を持って、部屋を出ていく)」


「大丈夫。行ってらっしゃい。」


(5分後)



「(大きなダンボール箱を持って、戻ってくる)ただいま。」


「何?その箱。」


「中、見てがっかりしないでね。」


「(箱の中を見て)・・・何これ。」


「ごめん。」


「(箱の中から一回り大きい玉を取り出して)

 なにこれ!三尺玉じゃない!」


「だから、謝ってるじゃないか。」


「(もう1つ取り出し)しかも、2つも。」


「いらないって言ったんだけど。」


「え、何?どういうこと?」


「いや、何か、作り過ぎちゃったらしいんだよ。」


「え、何?カレーのような感覚で三尺玉配ってるの?」

花火の音
「(外から)ドーーーーン!」


「(外を見て)たーまやーーー!」


「どうする、これ?」


「ちょっとペン貸して。」


「(ペンを渡す)どうするの?」


(花火の入ったダンボールに『拾ってください』と書く)


「・・・?」


「(段ボールを持って)ちょっと、そこの公園に行ってくる。」


「ダメダメダメダメ!」


「ダメかな。」


「拾ってくれる人がいるとでも?!
 何、捨て犬みたいな感覚で打ち上げ花火捨てるのよ!」


「仕方ないだろ?

 ウチのマンションは打ち上げ花火ダメなんだから。」


「どこのマンションもダメよ!」


「わからないよ。
 中には親に内緒で子供がこっそり拾うとかあるかも。」


「あるかなぁ・・・。」


「『打ち上げ花火2つかぁ。名前をつけなきゃな。
 よし、お前が”たまや”で、お前が”かぎや”だ!』って名付けられて。」


「いや、打ち上げ花火に名付けても・・・。」


「それから、どこに行くにも一緒。
 道を転がしながら散歩したり、ふとんに入って一緒に寝たり。」


「本当に仔犬みたいな扱いじゃん。」


「しかし、ある日、少年が学校に行っている最中、
 ”たまや”と”かぎや”がお母さんに見つかってしまう。」


「そりゃ、いつかは見つかるわよね。」


「イヤな予感がした少年は授業中にも関わらず、家に向かって走る!」


「クライマックスだ。」


「しかし、激怒したお母さんは、
 ”たまや”と”かぎや”を筒に入れて打ち上げてしまう。」


「よく、打ち上げ用の筒、あったわね。」


「ドーーーーン!ドーーーーン!と打ち上がった花火を見て、少年が叫ぶ!
 『たまやーーーーー!かぎやーーーーー!』」


「・・・。」


「・・・これが花火を見て、『たまやー。かぎやー。』と叫ぶ由来です。」


「ウソつくな!」


「この豆知識を添えて、2つの三尺玉を捨てようと思うんだけど、どうかな。」


「拾ってくれないと思う。
 あと、豆知識じゃない。ただのミニコント。」

花火の音
「(外から)ドーーーーン!」


「(外を見て)たーまやーーー!」


「結局、どうする?三尺玉。」


「持ってても困るから、返しましょ。」


「そうするか。」


「行ってきて。」


「また俺?!」


「こういうのは家主同士話し合った方がいいから。」


「うまく話し合ってくれるかなぁ・・・。
 (三尺玉の入ったダンボール箱を持って、部屋を出ていく)」


「いってらっしゃい。」


(5分後)



「(手ぶらで帰ってくる)ただいま。」


「おかえり。あ、花火、返せたようね。」


「玄関・・・。」


「玄関・・・?」


「入らなくて・・・。」


「・・・ん?まさか・・・!(走って部屋を出ていく)」


「・・・。」


「(部屋に戻ってくる)何?外にある、あのデカイ花火!」


「正四尺玉だって。」


「ドアに入りきらないくらい大きいじゃない!」


「お隣りさんに『これでどうだ!』って言われて渡された。」


「意味がわからない。
 『これでどうだ!』の意味がわからない。」


「大きい打ち上げ花火の方が、彼にとって友好の証らしいんだよ。」


「なんでそんなフレンドリーなの?!
 万が一、今後、何かあったときのために、予防線張ってる?」


「とりあえず、これからお隣りさんの家族と出かけてくる。」


「あなたもものすごく友好的じゃない。

 何しに行くの?」


「仕事がひと段落ついたってことで、打ち上げに誘われた。」


「ふーん。」


「いってきます。(部屋を出ていく)」


「いってらっしゃい。気をつけてね。」


「(部屋の外から)うんー。」


「(テーブルで一息つく)ふぅ・・・。
 この先、何もなきゃいいけど・・・。
 ・・・ん?
 (外に向かって走りながら)ねぇ!『打ち上げ』ってどっちの意味?!」

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

『打ち上げ花火の捨て方』という言葉から広げていったコントです。

打ち上げ花火を目の前に、淡々とあーだこーだ言い合う感じのコントにしました。

 

【上演メモ】

人数:2人

 

所要時間:4分~5分
難易度:★★☆☆☆
備考:三尺玉の小道具が多少めんどくさいですが、難しい演出はあまりないと思います。

定期的に花火の照明とSEが必要になるくらいです。

 

【お知らせ】

以前書いたコント「だるま」が実際に演じられることになりました。

 

じかん 

8月12日(土)19時半~

8月13日(日)14時~

 

ばしょ

池袋ゲキバ

 

今週末ですけど、ぜひお時間のある方は。

 


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(もふもふって名前ですが、僕です。

コントのこともつぶやきますが、コント以外のこともゆるくつぶやいています。)
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