(夜。外ではドーン!ドーン!と花火の音がする)
夫
「ただいまー。」
妻
「おかえり。」
夫
「お、今日はハンバーグか。」
妻
「もう食べる?」
夫
「食べようかな。(席につく)」
妻
「今、用意するわね。」
夫
「(机の上に置かれたダンボール箱に気づく)これは何?」
妻
「あぁ、お隣りさんが引っ越してきたらしくて、
挨拶がてらいただいたんだけど・・・。」
夫
「開けていい?」
妻
「どうぞ。」
夫
(ダンボール箱を開けて、中から茶色の紙でぐるぐる巻きにされた30cmくらいの玉を取り出す)
妻
「はい。晩ごはん。」
夫
「(玉を見ながら)ねぇ。」
妻
「ん?」
夫
「この玉は何・・・?」
妻
「あぁ・・・。
お隣りさん、花火職人らしくて、
それ、自作の打ち上げ花火だって。」
夫
「自作の打ち上げ花火・・・?」
妻
「一尺玉だそうよ。」
夫
「・・・いや、打ち上げ花火もらってもなぁ。」
妻
「なんか、このマンションの人全員に配ってるみたい。」
夫
「どうりで今日、お祭りでもないのに花火上がってるなぁと思った。」
妻
「お隣りさんが引っ越してきたお祝いみたいになってるわね。」
夫
「どうするの、これ?」
妻
「とりあえず、ウチにあっても困ると思って、
さっきこれ持ってお隣りさんのところに返しに行ったの。」
夫
「うん。そうしたら?」
妻
「『あぁ、そうか。そうですよね。』って言って、これくれた。
(部屋の奥から、花火を打ち上げるための筒を持ってくる)」
夫
「うん。違う違う。
打ち上げる手段がなくて、文句言いにいったわけじゃないから。」
妻
「あなた、これ、返してきて。」
夫
「俺が!?」
妻
「困るもの。
さっきもハンバーグ作ってる最中、何度か点火しそうになったし。」
夫
「台所に置いておくからだよ。」
妻
「他に置く場所なかったのよ。」
夫
「ゴミの日に出せば?」
妻
「打ち上げ花火って何ゴミよ?」
夫
「・・・。」
妻
「・・・。」
夫
「・・・燃えるゴミ?」
妻
「燃やしちゃダメよ。打ち上がっちゃうから。」
夫
「ガラスとかと同じように扱う?」
妻
「というと?」
夫
「袋の中に一尺玉を入れて、袋にペンで『打ち上げ花火』って書くとか。」
妻
「お隣りさんに失礼じゃない。
引っ越し祝いで配ったものが後日、ゴミ捨て場に捨ててあったら。」
夫
「わかりゃしないって。」
妻
「わかるわよ。
しっかり『打ち上げ花火』って書いてあるんだから。」
花火の音
「(外から)ドーーーーン!」
夫・妻
「(外を見て)たーまやーーー!」
妻
「ねぇ、これ返してきて。」
夫
「俺が行くの?」
妻
「ついでにこの筒も。」
夫
「大丈夫かな。今後、ギクシャクしない?
(打ち上げ花火と筒を持って、部屋を出ていく)」
妻
「大丈夫。行ってらっしゃい。」
(5分後)
夫
「(大きなダンボール箱を持って、戻ってくる)ただいま。」
妻
「何?その箱。」
夫
「中、見てがっかりしないでね。」
妻
「(箱の中を見て)・・・何これ。」
夫
「ごめん。」
妻
「(箱の中から一回り大きい玉を取り出して)
なにこれ!三尺玉じゃない!」
夫
「だから、謝ってるじゃないか。」
妻
「(もう1つ取り出し)しかも、2つも。」
夫
「いらないって言ったんだけど。」
妻
「え、何?どういうこと?」
夫
「いや、何か、作り過ぎちゃったらしいんだよ。」
妻
「え、何?カレーのような感覚で三尺玉配ってるの?」
花火の音
「(外から)ドーーーーン!」
夫・妻
「(外を見て)たーまやーーー!」
妻
「どうする、これ?」
夫
「ちょっとペン貸して。」
妻
「(ペンを渡す)どうするの?」
夫
(花火の入ったダンボールに『拾ってください』と書く)
妻
「・・・?」
夫
「(段ボールを持って)ちょっと、そこの公園に行ってくる。」
妻
「ダメダメダメダメ!」
夫
「ダメかな。」
妻
「拾ってくれる人がいるとでも?!
何、捨て犬みたいな感覚で打ち上げ花火捨てるのよ!」
夫
「仕方ないだろ?
ウチのマンションは打ち上げ花火ダメなんだから。」
妻
「どこのマンションもダメよ!」
夫
「わからないよ。
中には親に内緒で子供がこっそり拾うとかあるかも。」
妻
「あるかなぁ・・・。」
夫
「『打ち上げ花火2つかぁ。名前をつけなきゃな。
よし、お前が”たまや”で、お前が”かぎや”だ!』って名付けられて。」
妻
「いや、打ち上げ花火に名付けても・・・。」
夫
「それから、どこに行くにも一緒。
道を転がしながら散歩したり、ふとんに入って一緒に寝たり。」
妻
「本当に仔犬みたいな扱いじゃん。」
夫
「しかし、ある日、少年が学校に行っている最中、
”たまや”と”かぎや”がお母さんに見つかってしまう。」
妻
「そりゃ、いつかは見つかるわよね。」
夫
「イヤな予感がした少年は授業中にも関わらず、家に向かって走る!」
妻
「クライマックスだ。」
夫
「しかし、激怒したお母さんは、
”たまや”と”かぎや”を筒に入れて打ち上げてしまう。」
妻
「よく、打ち上げ用の筒、あったわね。」
夫
「ドーーーーン!ドーーーーン!と打ち上がった花火を見て、少年が叫ぶ!
『たまやーーーーー!かぎやーーーーー!』」
妻
「・・・。」
夫
「・・・これが花火を見て、『たまやー。かぎやー。』と叫ぶ由来です。」
妻
「ウソつくな!」
夫
「この豆知識を添えて、2つの三尺玉を捨てようと思うんだけど、どうかな。」
妻
「拾ってくれないと思う。
あと、豆知識じゃない。ただのミニコント。」
花火の音
「(外から)ドーーーーン!」
夫・妻
「(外を見て)たーまやーーー!」
夫
「結局、どうする?三尺玉。」
妻
「持ってても困るから、返しましょ。」
夫
「そうするか。」
妻
「行ってきて。」
夫
「また俺?!」
妻
「こういうのは家主同士話し合った方がいいから。」
夫
「うまく話し合ってくれるかなぁ・・・。
(三尺玉の入ったダンボール箱を持って、部屋を出ていく)」
妻
「いってらっしゃい。」
(5分後)
夫
「(手ぶらで帰ってくる)ただいま。」
妻
「おかえり。あ、花火、返せたようね。」
夫
「玄関・・・。」
妻
「玄関・・・?」
夫
「入らなくて・・・。」
妻
「・・・ん?まさか・・・!(走って部屋を出ていく)」
夫
「・・・。」
妻
「(部屋に戻ってくる)何?外にある、あのデカイ花火!」
夫
「正四尺玉だって。」
妻
「ドアに入りきらないくらい大きいじゃない!」
夫
「お隣りさんに『これでどうだ!』って言われて渡された。」
妻
「意味がわからない。
『これでどうだ!』の意味がわからない。」
夫
「大きい打ち上げ花火の方が、彼にとって友好の証らしいんだよ。」
妻
「なんでそんなフレンドリーなの?!
万が一、今後、何かあったときのために、予防線張ってる?」
夫
「とりあえず、これからお隣りさんの家族と出かけてくる。」
妻
「あなたもものすごく友好的じゃない。
何しに行くの?」
夫
「仕事がひと段落ついたってことで、打ち上げに誘われた。」
妻
「ふーん。」
夫
「いってきます。(部屋を出ていく)」
妻
「いってらっしゃい。気をつけてね。」
夫
「(部屋の外から)うんー。」
妻
「(テーブルで一息つく)ふぅ・・・。
この先、何もなきゃいいけど・・・。
・・・ん?
(外に向かって走りながら)ねぇ!『打ち上げ』ってどっちの意味?!」
『打ち上げ花火の捨て方』という言葉から広げていったコントです。
打ち上げ花火を目の前に、淡々とあーだこーだ言い合う感じのコントにしました。
人数:2人
夫
妻
所要時間:4分~5分
難易度:★★☆☆☆
備考:三尺玉の小道具が多少めんどくさいですが、難しい演出はあまりないと思います。
定期的に花火の照明とSEが必要になるくらいです。
以前書いたコント「だるま」が実際に演じられることになりました。
じかん
8月12日(土)19時半~
8月13日(日)14時~
ばしょ
今週末ですけど、ぜひお時間のある方は。
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(もふもふって名前ですが、僕です。
コントのこともつぶやきますが、コント以外のこともゆるくつぶやいています。)
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