家庭教師
「・・・で、1837年に起きたのが『大塩平八郎の乱』。
 これ、年数と出来事の名前は試験によく出るから、覚えておくように。」

生徒
「大塩平八郎の乱・・・。」

家庭教師
「そう。」

生徒
「先生、質問いいですか?」

家庭教師
「はい。どうぞ。」

生徒
「大塩平八郎はどれくらい強かったんですか?」

家庭教師
「・・・ん?」

生徒
「いや、大塩平八郎ってどれくらい強かったんですか?」

家庭教師
「大塩平八郎の強さ?」

生徒
「はい。」

家庭教師
「あの、えーと、
 大塩平八郎の強さは試験に出ないから大丈夫。」

生徒
「先生を100とすると、
 大塩平八郎の強さはどのくらいですか?」

家庭教師
「いや、わかんない。
 わかんないから。」

生徒
「あ、じゃあ両者とも素手という条件だとどうですか?」

家庭教師
「違う違う。
 武器の有無によって強さが変わるから明確な数字を出せないわけじゃないの。」

生徒
「例えば、大塩平八郎一人に対して、
 先生が二人がかりで互角にやりあえるのなら、
 大塩平八郎の強さは200ってことですよね?」

家庭教師
「ごめん。
 『ですよね?』って確認されても、
 『そうだね。そうなるね。』とは言えないよ。
 まず、私が二人がかりで大塩平八郎に襲い掛かるって状況がよくわからないし。」

生徒
「じゃあ、那須川天心を100としたらどうなりますか?」

家庭教師
「いや、基準を変えたところで、
 『それだったら15くらいかな』とか言えないから。」

生徒
「テストに出るんですよね?」

家庭教師
「年号と出来事の名前は出る。
 強さは出ない。」

生徒
「強さ、出ないんですか?」

家庭教師
「出ない!
 見たことある?
 歴史のテストで『一般の弥生時代の成人男性を100としたときの卑弥呼の強さを求めよ』とか。」

生徒
「でも、聖徳太子は同時に7人を相手に互角にやり合ったんですよね?」

家庭教師
「同時に話を聞いただけ。
 なんで互角にやり合ったことになってるの?」

生徒
「大塩平八郎がどのくらい強かったのか、ものすごく気になります!」

家庭教師
「どうしたの?
 今まで一年近く家庭教師してきて、
 『何か質問ある?』って聞いても何ひとつ質問して来なかったのに、
 なんで『大塩平八郎の乱』だけこんなに食いつくの?」

生徒
「今まで『応仁の乱』とか『島原の乱』とか乱はいくつもあったじゃないですか。」

家庭教師
「・・・うん。」

生徒
「どれも元号や地名の乱ばかりでしたけど、
 ここに来て初めて人名の、
 それもフルネームの乱が出たんですよ?」

家庭教師
「・・・まぁそうだね。」

生徒
「一人でどれだけの人数をなぎはらったのかな・・・
 って考えるだけでテンション上がりません?」

家庭教師
「あ、ごめん。
 そういうの想像してたんだ。」

生徒
「違うんですか・・・?」

家庭教師
「『大塩平八郎の乱』は大塩平八郎ひとりでやったわけじゃないから。」

生徒
「・・・単独乱ではない、と。」

家庭教師
「『単独犯』みたいに言わないで。」

生徒
「じゃあ何で出来事の名前は『大塩平八郎の乱』何ですか?」

家庭教師
「それはわからないよ。
 先生が出来事の名前を付けてるわけじゃないから。」

生徒
「あ、先生が名前をつけてるわけではない、と。」

家庭教師
「先生が全部名前つけてると思ってたの?!
 で、ここに家庭教師として君に披露してるって、相当ヤバい奴じゃん!」

生徒
「そうなると、なおのこと『大塩平八郎の乱』がどうしてこの名前になったのか気になります。」

家庭教師
「こんなに『大塩平八郎の乱』に食いつかれたの初めてだ・・・。」

生徒
「大塩平八郎単独乱ではないとすると・・・。」

家庭教師
「とりあえず、『単独乱』って言葉は忘れようか。
 誰にも伝わらないから。」

生徒
「あ!そうか!
 逆だったんだ!!」

家庭教師
「・・・逆?」

生徒
「1837年に起きた『大塩平八郎の乱』と呼ばれる出来事、
 実は他の人物が真の実行犯だったんだ。」

家庭教師
「・・・とりあえず最後まで聞こうか。」

生徒
「で、その後、乱に参加した人が呼び出されて
 『誰がやったんだ』と聞かれた時に、
 全員が口裏を合わせて『大塩平八郎がやりました』って言った。
 うん。辻褄が合う!」

家庭教師
「ごめん。
 それで腑に落ちるの?
 先生の方が逆にモヤモヤでいっぱいなんだけど。」

生徒
「そのあと、乱の申請を出すときも
 『大塩平八郎の乱』で届け出を出したから、
 大塩平八郎単独乱のようになってしまったんだ!」

家庭教師
「乱ってそういうシステムなの?
 届け出が受理されたら、歴史に名前が残るシステム?」

生徒
「『大塩平八郎の乱』、納得いきました!」

家庭教師
「そう。よかったね・・・。
 正直、年号と出来事だけ覚えておけば大丈夫だけどね。
 先生、正直、大塩平八郎の顔ですら、ピンと来ないし・・・。」

生徒
「大塩平八郎の顔ですらピンと来ない・・・?」

家庭教師
「うん。」

生徒
「・・・そうなると、別の説が考えられます!」

家庭教師
「・・・別の説?」

生徒
「『大塩平八郎、実在しない説』!!」

家庭教師
「また始まった・・・。」

生徒
「てっきり、大塩平八郎は実在する前提で話を進めてましたが、
 大塩平八郎が架空の人物だったとしたら!
 乱に参加した人間が、口裏を合わせて架空の人物『大塩平八郎』をでっち上げたとしたら!
 これはとんでもない乱ですね!!」

家庭教師
「・・・一番乱れてるの、キミだと思うよ。」

 

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

なんかやけに耳に残る言葉「大塩平八郎の乱」。

 

音の響きだけは覚えているのですが、どんな内容だったかとか全然覚えてないです・・・。

でも、コントとしては使える素材です。

 

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】恋人たちの別れ
【コント】3本の矢
【コント】西遊記#3
【お題コント】同姓同名
【コント】大名行列

 

 

 

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