(男が2人、屋外に置かれている自動販売機の前に立っている)


川村
「(コーヒーを飲んで)あぁ~、暖まる・・・。」

立木
「ホント、今日は寒いな。」

川村
「後で、カフェに入って暖まろう。」

立木
「そうだな。」


「(遠くから)下にぃ!下に!」

川村
「(声をした方を見て)ん?」

立木
「どうした?」

川村
「いや、何か遠くから声がした気がして。」

立木
「気のせいだろ。」

川村
「気のせいか。」



「(遠くから)下にぃ!下に!」

川村
「んん?」

立木
「どうした?」


川村
「やっぱり声が聞こえないか?」

立木
「え?」


「(遠くから)下にぃ!下に!」

川村
「ほら。

 『下にぃ!下に!』って言ってる。」

立木
「(遠くを見て)あ!大名行列だ!」

川村
「大名行列?」

立木
「ひれ伏して!(ひれ伏す)」

川村
「え?ひれ伏す?」

立木
「早く!」

川村
「あ、あぁ。(ひれ伏す)」

大名行列
「下にぃ!下に!」

立木
「うわぁ。このタイミングで大名行列だよぉ。」

川村
「え、ごめん。

 大名行列って何?」

立木
「知らない?大名行列。

 殿様が部下たちを連れて移動する・・・。」

川村
「いや、大名行列は知ってるけど、今、21世紀だよ?

 2018年だよ?

 え?まだ、大名行列って文化あるの?」

立木
「ある。」

川村
「あるんだ。」

大名行列
「下にぃ!下に!」

立木
「今、目の前を大名行列が通過してるから、

 完全に通り過ぎるまで、絶対、顔を上げちゃダメだぞ。」

川村
「顔を上げるとどうなるの?」

立木
「斬られる。」

川村
「マジかよぉ。」

大名行列
「下にぃ!下に!」

川村
「うわぁ。なんだろう。緊張する・・・。」

立木
「顔さえ上げなければ、大丈夫だから。」

川村
「あぁ。」

大名行列
「下にぃ!下に?!

川村
「聞いてきたぞ。

 『下に?!』って聞いてきたぞ。」

立木
「構うな。ひれ伏し続けろ。

 答えようと顔を上げたら、斬られるから。」

川村
「油断ならねぇな。」

大名行列
「左にぃ!右に!」

川村
「言葉を変えてきたぞ。」

立木
「惑わされるな。

 これはヤツらの作戦だ。

 この手で顔を上げて斬られたヤツを俺は何人も知ってる。」

川村
「何人も知ってるんだ。」

大名行列
「下にぃ!下に!」

川村
「それにしても長いな。

 どのくらいの大名行列なんだろう。」

立木
「もしかしたら、これは相当レアな大名行列かもしれないな。」

川村
「そうなんだ。

 っていうか、大名行列って時点で既にレアな気がするけど。」

立木
「全長が長ければ長いほど、高く売れるんだ。」

川村
「え?売れる?高く売れる?」

立木
「そう。500mクラスになると、時価10万くらいする。」

川村
「あ、うん。えーと、まず相場がわからない。

 大名行列を売るって意味もわからないし、

 そもそも大名行列が目の前を横切っている状況自体、受け入れられてない。」

大名行列
「下にぃ!下に!」

川村
「あ、いい香りがする!」

立木
「いい香りがするな。」

川村
「甘い香り。パンケーキかな。」

立木
「甘い香りがするけど、絶対に顔を上げるなよ。」

川村
「そうだな。」

立木
「これはヤツらの罠だから。」

川村
「罠?ヤツらの罠?」

立木
「大名行列は周囲にパンケーキの匂いを充満させて、

 匂いに誘われて寄ってきた獲物を斬るんだ。」

川村
「昆虫みたいなことするな、大名行列。

 もはや、何で人を斬るのかわからなくなってきた。」

大名行列
「下にぃ!下に!」

立木
「ヤツらの擬態能力にも気をつけないといけないぞ。」

川村
「擬態?」

立木
「大名行列の中には他のパレードなどに紛れて

 獲物を狙うタイプの大名行列もいるんだ。」

川村
「ますます昆虫だな、大名行列。」

立木
「そのパレードにつられて寄ってきた獲物を『無礼者!』と言って斬る。」

川村
「無礼者なのだろうか。

 果たして、斬られた人間は無礼者なのだろうか。」

大名行列
「下にぃ!下に!」

大名行列2
「(逆方向から)下にぃ!下に!」

立木
「ん?別の大名行列が来たか?」

川村
「大名行列って、そこら中にいるの?」

大名行列
「し・・・下に!」

大名行列2
「下に下に!」

立木
「お互い、威嚇してるな。」

川村
「『下にぃ!下に!』って、威嚇なんだ。」

大名行列
「下に下に下に!」

大名行列2
「下に下に下に下に!」

大名行列
「下に!下に下に!」

大名行列2
「下に下に下に!」

川村
「語彙力の無さ!

 しばらく、このやりとりを聞いてないとダメなの?

 ひれ伏しながら。」

立木
「あ、でも解決しそうだぞ。」

大名行列
「左に!」

大名行列2
「じゃあこちらは右に!」

立木
「うん。解決だ。」

川村
「解決なの?

 向かい合ってる大名行列が、

 片方は左に、もう片方が右に寄ったら・・・。」

大名行列
「下に下に下に下に!」

大名行列2
「下に下に下に下に!」

川村
「うん。譲りあえてないよね。」

大名行列
「左に!」

大名行列2
「じゃあこちらも左に!」

川村
「うん。学習した。

 それですれ違えるね。」

大名行列
「下にぃ!下に!」

大名行列2
「下にぃ!下に!」

川村
「うん。すれ違えた。

 よかったね。」

立木
「一時はどうなるかと思ったな。」

川村
「・・・あ。」

立木
「どうした?」

川村
「さっきコーヒー飲んだからかな。

 トイレいきたくなってきた。」

立木
「絶対顔を上げるなよ。」

川村
「あぁ。・・・この大名行列、あとどれくらい続くんだろう。」

立木
「わからない。

 最悪、その自販機の後ろにトイレあるから、この体勢のまま、スライドして・・・」

川村
「俺の身体、そんなに器用にできてないよ!」

立木
「・・・わかった。俺がおとりになる。」

川村
「いや、大丈夫。ガマンできるから。」

立木
「俺が立ち上がってヤツらを引きつけてる間に、お前はトイレに行け。」

川村
「いや、ホント大丈夫。

 急を要する程じゃないから。」

立木
「友人のために命を棒に振るのも・・・、フッ、悪くないな。」

川村
「浸ってるところ、ゴメン。

 まだ、全然大丈夫だから。」

立木
「最期に愛する妻と2人の娘に伝えてくれ。」

川村
「・・・?」

立木
「・・・『愛していた』と。」

川村
「・・・お前、独身じゃん。」

立木
「それじゃあな!」

川村
「立木ぃ!」

立木
「(立ち上がって)おい、大名行列っ!斬るなら俺を斬れっ!!」

川村
「立木ーーぃぃっっ!」

立木
「あ、もう通り過ぎてる。」

川村
「(顔を上げて)俺たち、何にひれ伏してたんだよ!」

 

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

「大名行列が通り過ぎるのを待つ」という設定から、「大名行列側が立ち上がらせようと罠を仕掛ける」「昆虫のような特徴を持つ」「いつの間にか通り過ぎている」という断片的なシーンができていき、最終的にそれを繋ぎ合わせた感じです。

 

【上演メモ】

人数:2人

川村

立木

大名行列

大名行列2

 

所要時間:4分~5分
所要時間:★★★☆☆
備考:最後はいつの間にか大名行列が通り過ぎているというオチなので、大名行列は音声だけにして、実際に演者が舞台上で演じない方がいいと思います。

舞台上の2人もほとんどひれ伏しながら喋るので、セリフを聞き取りやすくする工夫が必要です。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】親指姫と一寸法師
【コント】ヤツは四天王の中でも最弱
【コント】ウサギとカメ
【コント】崖
【コント】赤ずきんちゃんが聞く#3

 

 

 

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