（オリンピック強化合宿所）
榎本
（全力でダッシュしている）
コーチ
「（榎本がゴールしたのを見てストップウォッチを止める）
どうした、さっきより記録が落ちてるじゃないか。」
榎本
「やっぱり、いつもと違うと調子出ないですね。」
コーチ
「環境の違いか。」
榎本
「いや、環境というか、手ぶらだとうまく走れないです。」
コーチ
「・・・ん？手ぶら？」
榎本
「はい。」
コーチ
「・・・普段、何を持って走ってるんだ？」
榎本
「『勝訴』という紙です。」
コーチ
「勝訴？」
榎本
「はい。」
コーチ
「裁判のやつ？」
榎本
「はい。わたし、いつもは『勝訴』って紙を持って裁判所から飛び出してくる仕事をしてます。
言ってませんでしたっけ？」
コーチ
「うん。初耳。」
榎本
「裁判所からマスコミの人たちの前まで走ってくるスピードが速いってことで
強化選手に選ばれたんです。」
コーチ
「そうなんだ。」
榎本
「よくマスコミの人からは『勝訴が飛び出してきた』って言われます。」
コーチ
「何、その感想・・・。
ちなみに普段は何をしてるの？」
榎本
「だから『勝訴』って紙を・・・。」
コーチ
「いや、違う違う。
それは裁判の判決が決まった時でしょ？
それ以外の時は？裁判がない日とか。」
榎本
「ヒマを持て余してます。」
コーチ
「え、紙を持って走る専門？」
榎本
「はい。正確には、『勝訴』って紙を持って走る専門です。」
コーチ
「敗訴の時は？」
榎本
「走りません。」
コーチ
「勝訴専門？！」
榎本
「はい。
敗訴の時は敗訴専門がいるので。」
コーチ
「それで食べていけるの？」
榎本
「はい。
勝訴の時の利益の数パーセントが私に入る仕組みです。」
コーチ
「何でキミのふところに数パーセント入るの？！」
榎本
「原告の人が『勝訴』って紙を持ってきたわたしを見て感動するんです。
『勝訴が飛び出してきた』って言って。」
コーチ
「みんなその感想なんだ・・・。」
榎本
「だから、『勝訴』って紙を持って走れば記録を出せると思うんです。」
コーチ
「いやいやいや。
今、オリンピックに向けて練習してんだよ？
本番も『勝訴』持って走る気？」
榎本
「はい。」
コーチ
「いや、画が浮かばないんだけど！
『勝訴』持ったヤツが誰よりも早く１００ｍ走る画。」
榎本
「でも、持った方がスピード出ると思うんです。」
コーチ
「いや、絶対おかしいよ。
１人だけ勝訴持って走るって。」
榎本
「じゃあ他の人も紙を持って走ればいいんですよ。」
コーチ
「なんで他の人がキミに合わせないといけないんだよ。
キミの方から歩み寄れよ。」
榎本
「言葉は何でもいいんで。
全員思い思いの言葉を書いてもらって。」
コーチ
「競技がブレるよ。
選手が全員『初日の出』とか『水道週間』とか書いた紙持って走るってことでしょ？」
榎本
「試しに持って走っていいですか？」
コーチ
「そんなのでスピード出るわけないだろ。」
榎本
「一回だけ。
一回だけ見てください。」
コーチ
「・・・まぁ、いいけど。
とりあえず、紙と筆を用意しないと・・・。」
榎本
「あ、大丈夫です。
マイ勝訴あります（カバンから勝訴の紙を取り出す）。」
コーチ
「なんだよ、マイ勝訴って。」
榎本
「最新の人間医学、スポーツ科学を取り入れた最高の勝訴です。」
コーチ
「『最新の人間医学、スポーツ科学を取り入れた最高の勝訴です』？」
榎本
「とりあえず、見ててください（スタートラインに向かう）。」
コーチ
「・・・絶対言われるよ？
『オリンピックなめるな』って。」
号砲
「パーン！」
コーチ
「走ってきたな。
・・・ちょっと待て、速い！速いぞ！
なんだ、このスピードは！」
榎本
（マイ勝訴を持ってコーチの前を通り過ぎる）
コーチ
「（ストップウォッチを止める）
・・・すごい！１.８秒縮んだ！」
榎本
「（やってくる）どうでした？」
コーチ
「勝訴が飛び出してきた！」
「勝訴」を持って走る文化で何かできそうだとアイディアを出して作ったコント。
いろいろパワーワードを織り交ぜることができました。
人数：２人
榎本
コーチ
所要時間：４分～５分
上演難易度：★☆☆☆☆
備考：衣装に困ることもなく、難しいやりとりもないので、上演難易度は難しくないと思います。
【コント】ストーカー
【コント】学級会
【お題コント】サザエさん＃２
【コント】一生のお願い
【コント】こうさくしようよ
今後のコント作りの励みになるので、ぜひ、感想をお聞かせください。
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