【コント】スペースシャトル

管制官
「こちら、ヒューストン。
　チャレンジャー号のクルーの皆さん、おはようございます。」

宇宙飛行士
「こちら、スペースシャトル・チャレンジャー号。
　地球のみなさん、おはようございます。」

管制官
「チャレンジャー号打ち上げから３日。
　宇宙での生活はいかがですか？」

宇宙飛行士
「おかげさまで快適です。」

管制官
「それは何より。
　それでは、朝のミーティングを始めます。」

宇宙飛行士
「よろしくお願いします。」

管制官
「今日は午前中に地上から持ってきたカメを使った生態の実験があります。」

宇宙飛行士
「はい。」

管制官
「午後には宇宙で作物は育つかどうかの実験の中間報告会があります。
　資料の準備をよろしくお願いします。」

宇宙飛行士
「はい。」

管制官
「あと、１４時から避難訓練があります。」

宇宙飛行士
「ん？」

管制官
「それでは今日も一日よろしくお願いします。」

宇宙飛行士
「ん、ん、ん、すみません。」

管制官
「はい。」

宇宙飛行士
「・・・避難訓練？」

管制官
「はい。
　１４時から避難訓練があります。」

宇宙飛行士
「避難訓練・・・。」

管制官
「はい。」

宇宙飛行士
「ちなみに、何を想定した避難訓練ですか？」

管制官
「地震です。」

宇宙飛行士
「ん、ん、ん、ん、ん？」

管制官
「地震はいつどこで起こるかわかりませんから。
　念には念を入れて・・・。」

宇宙飛行士
「必要ですか？」

管制官
「必要でしょう？」

宇宙飛行士
「スペースシャトルですよ？」

管制官
「知ってます。」

宇宙飛行士
「知っててやりますか？」

管制官
「１４時に訓練放送が流れますから、机の下に隠れてください。」

宇宙飛行士
「隠れる必要ありますか？」

管制官
「上から蛍光灯とか落ちてくるかもしれませんから。」

宇宙飛行士
「無重力ですよ？」

管制官
「知ってます。」

宇宙飛行士
「知ってて隠れますか？」

管制官
「あ、地震の想定なので、窓は開けてくださいね。」

宇宙飛行士
「窓、開くんですか。」

管制官
「開きます。
　地震のときは窓を開けないと。
　開かなくなる危険があるので。」

宇宙飛行士
「開く構造の方が危険だと思いますけど。」

管制官
「そのあと、放送に従ってクルー全員外に出てください。」

宇宙飛行士
「外、出ますか。」

管制官
「出ます。
　スペースシャトル倒壊の恐れがある想定なので。」

宇宙飛行士
「出た方が危険だと思いますけど。」

管制官
「万が一倒壊したときを考えてください。
　『避難しておいてよかったねー』ってなりますから。」

宇宙飛行士
「なりますか？
　倒壊には巻き込まれずに済むかもしれませんが、その後、絶望しかないですよ。」

管制官
「そのあと、大気圏中央消防署の堀田防災課長から一言いただきます。」

宇宙飛行士
「大気圏中央消防署ってなんですか？
　管轄広すぎないですか？」

管制官
「『薄く広く』が大気圏中央消防署のモットーです。」

宇宙飛行士
「なんですか、『薄く広く』って。
　『広く浅く』なら聞いたことありますけど。」

管制官
「ちなみに、堀田防災課長の総評は２時間を予定しています。」

宇宙飛行士
「長いです。
　避難訓練の総評だけで２時間って、どんだけ引き出しがある人なんですか。」

管制官
「なんですか、さっきから文句ばっかり。」

宇宙飛行士
「避難訓練をやるなら、もうちょっと現実的に起こりそうな避難訓練をやりたいです。」

管制官
「覆面をした宇宙人から襲撃を受けた時の対応にしますか。」

宇宙飛行士
「襲撃受ける可能性ありますか。
　あと覆面って。
　何、身バレを恐れてるんですか。」

管制官
「飼っていたカメが巨大化ときの対応とか。」

宇宙飛行士
「カメに何があった想定ですか。」

管制官
「宇宙で育てていた作物のツルが伸び出して、
　クルーの首を絞め始めたとか。」

宇宙飛行士
「Ｂ級パニック映画じゃないですか。」

管制官
「堀田防災課長が暴れ出したとか。」

宇宙飛行士
「そんな危険な人なんですか。」

管制官
「どんな避難訓練ならＯＫなんですか？」

宇宙飛行士
「例えば・・・、ブラックホールが出現したとか・・・。」

管制官
「フッ、全然現実的じゃない・・・。」

宇宙飛行士
「『覆面をした宇宙人』って言ってる人に言われたくないんですけど！」

管制官
「では、１４時からの避難訓練、よろしくお願いします。」

宇宙飛行士
「いやいやいや。避難訓練、中止にしません？
　もっと起こりそうなシチュエーションがあればやりますから・・・。」

管制官
「そんなにやりたくないですか？」

宇宙飛行士
「貴重な宇宙での時間なのに、
　２時間もおっさんの話を聞きたくないです。」

管制官
「・・・わかりました。
　関係各位に中止の旨を伝えます。」

宇宙飛行士
「よろしくお願いします。」

物音
「ドタドタドタドタ！！」

宇宙飛行士
「・・・ん？」

宇宙飛行士２
「た、大変です！」

宇宙飛行士
「どうした？！」

宇宙飛行士２
「スペースシャトル内で、制服姿のおじさんが『なぜ中止にしたぁっ？！』って暴れてます！」

宇宙飛行士
「制服姿のおじさん？」

制服姿の男
「（暴れながら入ってくる）２時間喋らせろぉっ！！」

管制官
「堀田防災課長だ！！」

宇宙飛行士
「（逃げながら）窓から外に出して！！
　窓、開くらしいから！！」