(バー)


沙織
「はぁ・・・(カクテルを飲む)。」

バーテン
(沙織の目の前にカクテルを置く)

沙織
「ん?

 (バーテンに)あの・・・これは・・・?」

バーテン
「あちらのお客さまからです。」

沙織
(示された方を見る)

男性
(笑顔で手を振っている)

沙織
「(頭を下げ、そのカクテルを飲む)あ、おいしい。
 なんかいいですね。」

バーテン
「はい?」

沙織
「こういうやりとり。
 バーの中でカクテルをやり取りするような。」

バーテン
「バーならではですよね。」

沙織
「そうですね。」

バーテン
(沙織の目の前にカクテルを置く)

沙織
「え?」

バーテン
「あちらのお客さまからです。」

沙織
(さっきの男性を見る)

男性
(笑顔で手を振っている)

沙織
「(やや困惑した顔で頭を下げ、そのカクテルを飲む)・・・うん。
 『こういうやりとりいいですね』とは言ったけど・・・。

 なんであの人、あたしに2杯も・・・。」

バーテン
(沙織の目の前にカクテルを置く)

沙織
「いや、あの・・・。」

バーテン
「あちらのお客さまからです。」

沙織
(さっきの男を見る)

男性
(笑顔で手を振っている)

沙織
(会釈もせず、そのカクテルを飲む)

バーテン
(沙織の目の前にカクテルを置く)

沙織
「ちょっと待って!!」

バーテン
「あちらのお客さまからです。」

沙織
「知ってる!
 何?何なの?
 何で立て続けに4杯飲ませるの?!」

バーテン
「でも、全部飲んでますよね。」

沙織
「もったいないから(置かれたカクテルを飲む)。」

バーテン
「お、4杯目もいった。
 お酒強いんですか?」

沙織
「飲み仲間からは『アルコールに対する耐性が尋常じゃない』って言われてる。」

バーテン
「それは何より(沙織の目の前にカクテルを置く)。」

沙織
「いや、待って!え?!」

バーテン
「あちらのお客さまからです。」

沙織
「わかるわかる!
 どうせアイツの仕業でしょうよ!!」

バーテン
「(男性を見て)こっちに手を振ってますよ。」

沙織
「見ない見ない。
 見たら負けだと思ってる。」

バーテン
「(男性を見て)すごい。
 片手を腰に当てて、手を振ってる。
 体操のお兄さんみたい。」

沙織
「何この『あちらのお客さまからです』ハラスメント。」

バーテン
「ハラスメントですか?」

沙織
「ハラスメントよ!
 『あちらのお客さまからです』ハラスメント!
 『あちハラ』!」

 

バーテン
「略さなくても・・・」

 

沙織
「この店に来ると必ず受けないといけない洗礼なの?
 通過儀式?」

バーテン
(沙織の目の前にカクテルを置く)

沙織
「いや、まだ前の飲んでないし。」

バーテン
「あちハラです。」

沙織
「もうわかるわよ!
 この店であちハラしてくるの、アイツしかいないのよ!
 ちょっとアイツにあちハラするのやめてって伝えてよ!」

バーテン
「いや、私にその権限はないので。」

沙織
「何でその権限ないのよ!
 ちょっと直接言ってくる!!(席を立って男性の元に向かう)」

男性
(沙織に背を向けて逃げる)

沙織
「(追いかける)何で?!何で逃げるのっ?!」

沙織男性
(そのまま店の外へ)

バーテン
「あんまりバタバタしないでくださいね。」

沙織
「(戻ってくる)なんて足の速さなの!!」

バーテン
「恥ずかしいんですよ。」

沙織
「恥ずかしかったら、5杯も6杯もカクテルおごったりしない!!」

バーテン
「確かに。
 (沙織の目の前にカクテルを置く)あちらの方からです」

男性
(片手を腰に当てて、手を振っている)

沙織
「しれっと戻ってるし!
 見てよ!カウンターの上のカクテルグラスの数!
 のんべぇの量よ!
 バーにのんべぇ来ないでしょ!!」

バーテン
「空いてるグラス回収します。」

沙織
「回収して!
 空のグラスの量だけで異彩を放つから!」

バーテン
「はい。空いてるグラスは回収しました。
 そして・・・(沙織の目の前にカクテルを置く)、あちらのお客さまからです。」

沙織
「いやいやいや!!
 あの人にこれ以上止めるように伝えてよ!!」

バーテン
「私にその権限はないんで・・・」

沙織
「いや、あるわよ!
 店員なんだから!!」

バーテン
「いやいやいや・・・。」

沙織
「なんでそこまで自分に自信がないのよ!
 ってか、あの男になんとかやり返したいわね。」

バーテン
「こちらからも向こうにカクテルを送りますか?」

沙織
「そうね。同じ数だけ送りましょう。
 カクテル8杯。向こうの男に!」

バーテン
「かしこまりました(男の元に向かう)。」

沙織
「私の味わったあちハラと同じ目に遭わせないと・・・。」

バーテン
(戻ってくる)

沙織
「どうだった?!」

バーテン
「あちらのお客さまからです(カウンターに一升瓶を置く)」

沙織
「いや、もう!何なの?!」

バーテン
「お返しだそうです。」

沙織
「もうアイツに言ってやってよ!!」

バーテン
「私には無理です・・・。」

沙織
「できる!大丈夫!自信持て!」

バーテン
「こうしてる間にも、カクテル増えていきますよ(沙織の目の前にカクテルを置く)」

沙織
「いやいやいや、無理無理無理!
 帰る帰る帰る!!」

バーテン
「おや、お帰りですか?」

沙織
「これ以上、あちハラ受けたくない!!」

バーテン
「あ、でも外雨降ってますよ?」

沙織
「え?傘持ってきてない。」

バーテン
(沙織の目の前に傘を置く)

沙織
「え?」

バーテン
「あちらのお客さまからです。」

男性
(片手を腰に当てて、手を振っている)

沙織
「もうカクテルだけに収まらなくなったわね!
 (時計を見て)あ、終電大丈夫かな。」

バーテン
(沙織の目の前にタクシーチケットを置く)

沙織
「え?」

バーテン
「あちらのお客さまからです。」

男性
(片手を腰に当てて、手を振っている)

沙織
「いやいや、怖い怖い怖い!
 もう帰る!お会計!!」

バーテン
「もうお代は頂いています。」

沙織
「は?」

バーテン
「あちらのお客さまからです。」

男性
(片手を腰に当てて、手を振っている)

沙織
「もうヤダ!怖すぎる!!
 直接言う!!(男の元に向かう)」

男性
(手を振るのをやめて逃げ出す)

沙織
「(追いかける)だから何で逃げるのよ!!
 目的何なの?!」

沙織男性
(店を出て行く)

バーテン

「あんまりバタバタしないでくださいね。」

沙織
「(びしょ濡れで戻ってくる)外大雨よ!!
 酷い目に遭ったわ!!」

バーテン
「(カウンターに残されたカクテルを出し)お飲みになりますか?」

沙織
(残されたカクテルを全部飲む)

バーテン
「おぉ~・・・。
 アルコールに対する耐性が尋常じゃない!」

沙織
「だから、言ったでしょ?」

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

コントでよくある設定の「あちらのお客さまからです」のシチュエーション。

しつこく続けるスタイルのコントを作ってみました。

演出次第で笑える作品にも恐怖の作品にもできると思います。

 

【上演メモ】

人数:3人

沙織

バーテン

男性

 

所要時間:4分~5分
上演難易度:★☆☆☆☆
備考:男性はセリフがなく動きで魅せる役になります。

僕のイメージは通常は男性の姿は見えず、沙織が振り向いたタイミングでピンスポを当てるイメージです。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】桃太郎、流れる
【コント】午前0時のシンデレラ#4
【コント】記者会見
【コント】初期配置
【コント】関ヶ原の戦い

 

 

【お題募集中】

お題コントのお題を随時募集しています。

採用の際には、ささやかながら、当ブログから採用者様のブログへのリンクを張らせていただきます。

・内容によっては、ご期待に沿えないこともございます。

・お題をいただいてから、公開までに数か月かかることがあります。

・公開までにアメブロを退会された場合、公開を見送る場合があります。

 

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