女性客
「ここのお店のおかげで願い事が叶いました。
 ありがとうございます。」

店主
「いえ、私たちにできることをしたまでです。」

女性客
「ありがとうございました。」

店主
「また、何かあれば、『願い事実現屋』にご依頼を!」

女性客
(帰っていく)

店主
「また一つ、願い事が叶いましたね。」

川島
(入ってくる)

店主
「いらっしゃいませ。」

川島
「あの・・・、先ほど電話した者ですが。
 ここが・・・?」

店主
「はい。どんな願い事でも叶える『願い事実現屋』でございます。
 何か叶えたい願い事がおありで?」

川島
「はい。彼がサッカーの試合で怪我をしてしまいまして・・・。
 早く完治して、また復帰してほしくて。」

店主
「なるほど。それは叶えてあげたいですね。」

川島
「叶うんですか?」

店主
「はい。願い事実現屋ですから。
 で、先ほどお伝えしたものはお持ちになりましたでしょうか?」

川島
「あ、はい。
 (カバンの中を探す)あれ・・・。奥にいっちゃったかな・・・?」

山口
「(入ってくる)あの・・・、よろしいですか?」

店主
「いらっしゃいませ。
 (川島に)すみません、お客様。
 先にこちらのお客様を対応させていただいてよろしいでしょうか?
 店内でお探しになって結構ですので。」

川島
「あ、はい。すみません。」

店主
「今日はどうされました?」

山口
「ウチで飼ってたネコが迷子になってしまいまして。」

店主
「なるほど。それは大変だ。
 それでは例の物を・・・。」

山口
「あ、はい。(カバンからミサンガを出して、渡す)」

店主
「ありがとうございます。
 (店の奥に向かって)おーい、ボブ!」


(店の奥から筋骨隆々の体の男が現れる)


店主
「ボブ、お願い。(ミサンガを渡す)」

ボブ
(うなずく)

川島
(手を止め、様子を見ている)

ボブ
「ふんぬぬぬぬぬ・・・!(ミサンガを引っ張る)」

川島
(様子を見ている)

ボブ
「ぬぬぬぬぬ・・・!(ミサンガを引っ張る)」

川島
(様子を見ている)

ボブ
「ぬぬぬぬぬ・・・てぇい!(ミサンガを引きちぎる)」

店主
「ご苦労さま、ボブ。
 25000円になります。」

山口
「はい。これで。(お金を払う)」

店主
「はい。丁度いただきます。
 これで願い事、叶いますよ。」

山口
「ありがとうございます!」

店主
「ネコちゃん、見つかるといいですね。」

山口
「ありがとうございました!(帰っていく)」

店主
「・・・見つかりました、ミサンガ?」

川島
「・・・。」

店主
「・・・お客さま?」

川島
「・・・。」

店主
「・・・お客さま?」

川島
「え~・・・?」

店主
「どうされました?」

川島
「ボッてない?」

店主
「ボッてないです。」

川島
「・・・うん。いや、あの、確かにミサンガが切れたら願い事が叶うって話はありますけど・・・」

店主
「はい。さっきもミサンガ、切れたので。」

川島
「いや、切れたっていうか・・・。

 ・・・ボブ?」

ボブ
(うなずく)

川島
「いや、ボブ・・・。ボブよ・・・。」

店主
「どうされました?」

川島
「ボブよ。そうじゃないんだ、ボブよ。」

店主
「ボブ、下がっていいよ。」

ボブ
(うなずき、店の奥に入っていく。)

川島
「ボブよ・・・。」

片瀬
「(入ってくる)あの、すみません。」

店主
「いらっしゃいませ。あぁ、片瀬さま。
 いつもお世話になっております。」

川島
「常連さんもいるんだ。」

店主
「今日はどのような願い事を?」

片瀬
「スーパーの特売のお肉がまだ残ってますようにって。」

川島
「それ、ここに来ずに直(ちょく)でスーパーに行った方がいいですよ。」

片瀬
「はい、ミサンガ。」

店主
「ありがとうございます。
 (店の奥に向かって)おーい、ボブ!」

片瀬
「あー。」

店主
「どうされました、片瀬さま?」

片瀬
「いつもボブだから、今日は別の人がいいな。」

川島
「違う人もいるの?」

店主
「かしこまりました。
 (店の奥に向かって)おーい。」

ボブ
(黒縁メガネをかけて出てくる)

川島
「ボブじゃん。」

片瀬
「彼は・・・?」

店主
「ホセです。」

川島
「いや、ボブじゃん。
 黒ぶちをかけたボブじゃん。」

店主
「お客さま。
 ホセのことを『長ぐつをはいたネコ』みたいに言わないでください。」

川島
「言ってないです。
 『長ぐつをはいたネコ』『黒ぶちをかけたボブ』。
 言葉の構成が同じだけですよね。」

店主
「ホセ、お願い。(ミサンガを渡す)」

黒ぶちをかけたボブ
「ふんぬぬぬぬぬ・・・!(ミサンガを引っ張る)」

片瀬
「キャー!ホセー!」

川島
(様子を見ている)

黒ぶちをかけたボブ
「ふんぬぬぬぬぬ・・・!(ミサンガを引っ張る)」

片瀬
「ホセー!こっち向いてー!」

黒ぶちをかけたボブ
「ふんぬぬぬぬぬ・・・!(ミサンガをひっぱりながら、片瀬の方を見る)」

片瀬
「ホセー!ホセがこっち向いたー!」

川島
(様子を見ている)

黒ぶちをかけたボブ
「ふんぬぬぬぬぬ・・・てぇい!(ミサンガを引きちぎる)」

店主
「ご苦労様、ホセ。
 35000円です。」

川島
「オプション料金ついてる!」

片瀬
「(お金を払う)ホセがこっち向いた・・・。」

店主
「特売のお肉、買えるといいですね。」

片瀬
「ホセがこっち向いた・・・。(店を出ていく)」

川島
「あのお客さん、大興奮じゃないですか。」

店主
「ホセ、奥に戻っていいよ。」

黒ぶちをかけたボブ
(うなづき、奥に入っていく)

川島
「いや、ボブだから。
 『ホセがこっち向いた』って余韻を壊すようで悪いけど、ボブだから。」

店主
「お客さま。」

川島
「はい。」

店主
「ミサンガ。」

川島
「あぁ、ありました。ミサンガ。
 でも、もういいです。」

店主
「えっ。」

川島
「ミサンガ引きちぎるだけで、25000円って。
 DVDボックス買えるじゃないですか。
 お金がもったいないので帰ります。」

店主
「あ、じゃあ今回は半額でいいです!」

川島
「それでも1万円以上するし!」

店主
「90%オフ!」

川島
「2500円?」

店主
「タダでいいです!」

川島
「どうしちゃったんですか、突然!」

店主
「ボブがミサンガを引きちぎりたくて、うずうずしてるんです。(店の奥を指差す)」

ボブ
(店の奥から、顔を出し、指をくわえている)

川島
「なんなの?ボブのキャラなんなの?
 ・・・わかりましたよ。」

店主
「ボブ。OK出たよ。」

ボブ
(ニコニコしながら、奥から出てくる)

川島
「ボブのその『ミサンガ引きちぎりたい欲』なんなの?」

店主
「ボブ、お願い!(ミサンガを渡す)」

ボブ
「ふんぬぬぬぬぬ・・・!(ミサンガを引っ張る)」

川島
「・・・。」

ボブ
「ぬぬぬぬぬ・・・!(ミサンガを引っ張る)」

川島
「・・・。」

ボブ
「ぬぬぬぬぬ・・・!(ミサンガを引っ張る)」

川島
「・・・。」

ボブ
「ぬぅ・・・。(一旦、力を抜き、体勢を立て直す)」

店主
「がんばれ、ボブ。

 いけるよ。お前ならいける!」

川島
「・・・。」

ボブ
「ふんぬぬぬぬぬ・・・!(ミサンガを引っ張る)」

川島
「・・・。」

ボブ
「ぬぬぬぬぬ・・・!(ミサンガを引っ張る)」

川島
「・・・。」

ボブ
「ぬぅ・・・。(上着を脱ぎ、手足のストレッチをする)」

店主
「怒らせたよ。
 このミサンガ、とうとうボブを怒らせたよ。
 見てあげて。」

川島
「うん。ずっと見てますよ。」

店主
「いけ、ボブ!」

ボブ
「ふんぬぬぬぬぬ・・・!(ミサンガを引っ張る)」

店主
「がんばれ、ボブ!
 お前の力はこんなものじゃないはずだ!」

ボブ
「ぬぬぬぬぬ・・・!(ミサンガを引っ張る)」

店主
「行け、ボブ!
 やってやれ、ボブ!」

川島
「いや、もう2人でやれば?」

店主
「2人?」

川島
「ボブとホセ。」

店主
「それはダメです。」

川島
「なんでダメなんですか?」

店主
「ホセは・・・帰っちゃったんで。」

川島
「帰った?」

店主
「あの・・・、お腹痛いって・・・。」

川島
「子供か!」

店主
「・・・ボブとホセが2人同時に出てこれないことくらい、
 あんただってわかるでしょ!?」

川島
「認めた!間接的に認めた!」

ボブ
「ぬぬぬぬぬ・・・!(ミサンガを引っ張りつづけている)」

川島
「あ、ずっとがんばってたんだ、ボブ。」

店主
「がんばれ、ボブ!
 いけるぞ、お前なら!」

川島
「あ、ボブもミサンガしてる。」

店主
「ボブにも願い事があるので。」

川島
「願い事?どんな?」

店主
「『真っ当な仕事に就けますように』って。」

川島
「・・・うん。叶うといいね。(ボブを見る)」

ボブ
「ぬぬぬぬぬ・・・!(ミサンガを引っ張りつづけている)」

 

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

ミサンガが切れると願い事が叶うというジンクスから生まれたコント。

このジンクス自体を知らない方もいると思うので、

途中でリンクを張るという強引な手段に出ました。

 

最初にモノローグで説明してしまうと、展開が読まれてしまうから避けたんですけど、うまい手、なかったかなぁ。

 

【上演メモ】

人数:6人

川島

店主

ボブ

山口

片瀬

女性客

 

所要時間:7分~8分
所要時間:★★★☆☆
備考:ミサンガを引きちぎるという小さな作業なので、舞台で演じるときは、川島役の人がセリフで状況をフォローするなどしないと分かりにくいかもしれません。

ミサンガのジンクスの説明もうまくフォローが必要だと思います。

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】いきものサミット
【コント】エクスカリバー
【コント】崖
【コント】おじいさん&おばあさん
【コント】お主もワルよのぉ

 

 

 

【お題募集中】

お題コントのお題を募集しています。

採用の際には、ささやかながら、当ブログから採用者様のブログへのリンクを張らせていただきます。

(内容によっては、ご期待に沿えないこともございます。ご了承ください。)

 

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(もふもふって名前ですが、僕です。

コントのこともつぶやきますが、コント以外のこともゆるくつぶやいています。)
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