むかしむかし、あるところに、
おじいさんとおばあさんが住んでいました。


おじいさんは山へ芝刈りに、
おばあさんは川へ洗濯に行きました。


おばあさんが川で洗濯をしていると、
川上から大きな桃が
「どんぶらこどんぶらこ」と流れてきました。


おばあさんはそれを持ちかえり、
おじいさんと一緒に食べることにしました。


おばあさんが大きな桃を持ちかえると、
おじいさんは大変驚きました。


おばあさんは台所から包丁を持ち出し、
桃を2つに切りました。


すると、桃の中から元気な男の子が出てきました。


おじいさん
「すごいよ、ばあさん!男の子が出てきたよ。
 一体、どうやったんだい?」


おばあさんは一切答えず、
今度は台所からリンゴを持ってきました。


おばあさんはおじいさんにリンゴを渡しました。


おじいさん
「別に普通のリンゴのようじゃが・・・」


おじいさんはリンゴをおばあさんに返しました。


おばあさんがリンゴを切ると、
中から元気な女の子が出てきました。


おじいさん
「すごいじゃないか、ばあさん!今度は女の子だよ。
 その包丁に何か仕掛けでもあるのかい?」


おばあさんは一切答えず、今度は胸ポケットから
一組のトランプを取り出しました。


おばあさんはトランプを全て表向きにし、おじいさんに見せました。


おじいさん
「うむ。すべてバラバラのようじゃな。」


おばあさんはおじいさんにトランプ一式を渡しました。


おじいさん
「シャッフルしろというのかい?」


おじいさんはトランプをシャッフルし、おばあさんに渡しました。


おばあさんはトランプを裏向きにし、
おじいさんに1枚引くように指示しました。


おじいさんはトランプを1枚引き、絵柄を確認したところ、
ダイヤの8でした。


おばあさんはおじいさんにサインペンを渡しました。


おじいさん
「今引いたトランプにサインを書けと言うのかい?」


おじいさんはダイヤの8に慣れた手つきでサインしました。


おばあさんはおじいさんからダイヤの8を裏向きのまま受け取り、
元のトランプを合わせてシャッフルしました。


おじいさん
「ばあさん、それじゃワシの引いたカードがわからないんじゃないのかい?」


おばあさんは一切答えず、台所からレモンを持ってきました。


そして、おばあさんはおじいさんにレモンと包丁を渡しました。


おじいさん
「切れというのかい?」


おじいさんがレモンを切ると、中から1枚のトランプが現れました。


カードの絵柄を確認すると、なんとダイヤの8でした。
しかも、おじいさんのサインが書かれていたのです。


おじいさん
「ばあさん!すごいよ、当たりだよ!
 どうしてわかったんだい?」


おばあさんは一切答えず、戸棚からシルクハットを持ちだしました。


おじいさん
「ばあさん。
 ばあさんがすごいのはわかったのじゃが、このマジックに何の意味があるんだい?」


しかし、おばあさんは答えず、右手から次々とトランプを出現させ、
シルクハットに入れていきます。


おじいさん
「ばあさん。
 さっきから一言もしゃべらず、ワシにマジックを見せているが、
 何か言いたいことでもあるのかい?」


おばあさんの右手、左手から次々とトランプが出てきます。


おじいさん
「ばあさん。洗濯に行った川で何かあったのかい?」


おばあさんがシルクハットを両手で持って構えると、
シルクハットから大量のトランプが飛び出しました。


おじいさん
「すごいよ、ばあさん!
 で、話を戻すんじゃが、何故ワシにマジックを披露しているんだい?」


おばあさんは一切答えず、次のマジックの準備に入ります。


おじいさん
「ばあさん。
 さっきから目が笑ってないのじゃが、怒っているのかい?」


おばあさんは水の入った大きな水槽を用意しました。


おじいさん
「ばあさんの心境が全くわからないのじゃが、謝れば許してもらえるのかな。」


続いておばあさんは一人の若い外国人男性を連れてきました。


おじいさん
「誰じゃ?!ばあさん、その男は誰じゃ?!」


男性はおばあさんに手錠をかけます。


おじいさん
「おい、お前!ワシのばあさんに何をするんじゃ!」


おばあさんは手錠をかけられたまま、水槽の中に入りました。


おじいさん
「ばあさん、もう趣味の範疇を超えているが大丈夫かい?」


おばあさんの入った水槽に男性がシートをかぶせます。


おじいさん
「ばあさん。頼むから成功してくれよ。
 成功してくれないと、もう意味がわからないから・・・」


水槽の上に男性が立ちました。
男性がシートに隠れます。
次の瞬間、男性の姿がおばあさんに変わりました。


おじいさん
「ばあさん!すごいよ!
 で、さっきの男はだれじゃ?
 どこで知り合ったんじゃ?」


おばあさんは一切答えず、水槽にかぶさっていたシートを取ります。
すると、水槽の中には手錠をはめられた先ほどの男性の姿があったのです。


おじいさん
「おい!お前は誰なんじゃ!
 ばあさんと随分親しそうじゃないか!」


手錠が外され、水槽から出てきた男性は大きく手を上げて成功をアピールしました。


おじいさん
「わかったから!キミとばあさんがすごいことはわかったから、
 そろそろ順を追って今回のマジックの意図を説明してくれないかい?」


男性は無言のまま、おじいさんたちの家を後にしました。


おじいさん
「もう説明一切ないんだね。」


おばあさんは続いて、おじいさんに窓の外を見るように指示しました。


おじいさん
「うむ。鬼が島が見えるな。
 あそこの鬼たちに村人たちは苦労させられているんじゃ。」


おばあさんは窓を大きなマントで隠しました。


おじいさん
「何をする気じゃ?ばあさん。」


おばあさん
「ワン・・・ツー・・・スリー!!」


おばあさんがマントを取ると、鬼が島が消えていました。


おじいさん
「消えたーーーーっっ!!
 鬼が島が消えたーーーーっっ!!
 村人たちの悩みをばあさんが意外な方法で解決したーーーっっ!!」


おばあさんは手を振って、周りからの歓声に応えます。


おじいさん
「すごいよ、ばあさん。
 で、桃から生まれたこの子の立場はどうなるんじゃ?」


おばあさんは一切答えず、川に洗濯の続きに行きました。


おじいさん
「ばあさん。洗濯から帰ったら、詳しい事情を聞かせてくれな。」

 

 

 

 

 

数年後、おじいさんとおばあさんはマジシャンとして華やかにデビューしました。


芸名は「おじいさん&おばあさん」。


主におばあさんがマジックを披露し、おじいさんがトークで観客を沸かせます。


ナポレオンズで言うところの、
おばあさんがメガネをかけた方、おじいさんが小さい方です。


マジシャン生活は成功し、おじいさんとおばあさんは幸せに暮らしましたとさ。

 


めでたし、めでたし。





 

 


 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】
他の人のブログで桃太郎の記事を読んでいたときに、
桃を切ったあとでおじいさんが過剰にすごいすごいって反応したら?
と考え、そこから広げたコントです。

 

 

 

 


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