「マリン。誕生日おめでとう。」


「ありがとうございます、お母さま。」


「ついにあなたも20歳。
 マーメイドから新たな呼び名に変わるときです。」


「新たな呼び名?
 どういうことですか?」


「あれ、知りませんでしたか?」


「何をです?」


「マーメイドの魚の部分。
 ここは出世魚なんです。」


「出世魚?
 ここから下、出世魚?」


「はい。出世魚。
 だから、成長すると名前が変わるのです。」


「初めて知りました。」


「みなさん、私たちのことをマーメイドといいますが、
 19歳までの人魚をマーメイドといい、20歳からは呼び名が変わります。」



「呼び名が・・・。
 20歳からの人魚はなんと呼ばれるのですか?」


「『マーーメイド』です。」


「マーーメイド。」


「はい。マーーメイド。」


「何ですか、その『アメトーク』から『アメトーーク』になったみたいな違いは。」


「変わるのは呼び名だけではありません。」


「他にも変わるのですか?」


「基本給が上がります。」


「・・・出世したからですか?」


「はい。生活が楽になります。」


「それはうれしいですけど・・・。」


「名刺に書いてある肩書きも『マーメイド』から『マーーメイド』に変わります。」


「誤植と思われませんか?」


「ちなみに、40歳になると、更に呼び名が変わります。」


「更に出世するんですね?
 『マーーメイド』から何になるのですか?」


「『カーメイド』です。」


「カーメイド。」


「はい。カーメイド。」


「なんでしょう。
 亀戸のゆるキャラみたいですね。」


「ちなみに、私はカーメイドです。」


「お母さまはカーメイドだったんですね!」


「マーーメイドから、更に基本給が上がります。」


「出世ですね。」


「名刺もカーメイドになります。
 こんな感じに(名刺を渡す)。」


「(名刺を見る)本当だ。カーメイドだ。」


「あと、区からたてごとが支給されます。」


「あ、人魚が持っているたてごとは区からの支給品なんですね。」


「はい。だから、たてごとを持っている人魚はマーメイドではありません。
 カーメイドです。」


「知りませんでした。」


「そして、60歳になると、更に呼び名が変わります。」


「更に出世するんですね。『カーメイド』から、何になるのですか?」


「『かたせ梨乃』です。」


「一気に変わりましたね。
 かたせ梨乃ですか。」


「はい。かたせ梨乃です。
 イントネーションは『マーメイド』と一緒です。」


「訛ってる人みたいですね。」


「カーメイドから、更に基本給が上がります。」


「あぁ、なりたい。
 早く、かたせ梨乃になりたい。」


「あと、名刺の肩書きもかたせ梨乃になります。」


「・・・これ、どうなんでしょう。
 人魚に名刺を渡されて、左上に『かたせ梨乃』って書いてあったら、
 『このかたせ梨乃って何ですか?』って聞かれると思うのですが。
 そしたら、『実はマーメイドは、ここから下が出世魚で・・・』
 という説明からしないといけないと思いますが。」


「80歳で更に呼び名が変わります。」


「『かたせ梨乃』から、更に変わるのですか。
 何になるのですか?」


「『ノーテンキ』です。」


「すごいですね。
 もう『マーメイド』の面影ないですものね。
 『かたせ梨乃』辺りから怪しかったですけど。」


「基本給が上がります。」


「もう、マーメイドと比べると、相当上がりますね。」


「名刺に『ノーテンキ』と書かれます。」


「あの、先ほども言いましたが、
 名刺の左上に『ノーテンキ』と書かれていたら、
 『このノーテンキって何ですか?』ってなると思うんです。
 その度に、『実はマーメイドは、ここから下が出世魚で・・・』
 とイチから説明しないといけないと思うのですが。」


「ちなみに、お婆さまはノーテンキです。」


「それは肩書きがですか?性格がですか?」


「なお、ノーテンキが人魚の中で一番の美味とされています。」


「そうなんですか?もう80過ぎですよ?」


「石川県の冬のノーテンキが特に美味です。」


「なんか、大量に水揚げされてる姿が浮かびましたけど。」


「で、100歳になって、最後の呼び名変更です。」


「『ノーテンキ』から何になるのですか?」


「『ムー大陸』です。」


「ムー大陸?」


「で、直後に泡になって消えます。」


「え、一瞬、ムー大陸になったの何なんですか?」


「はかない一生ですよね。」


「うん。はかないですけど、一瞬、ムー大陸挟んだの何なんですか?」


「泡になって消えるって、なんか幻想的ですよね。」


「ごめんなさい。
 サブリミナル的にムー大陸出てきたんで、それが気になっちゃって。」


「ちなみにこれは、
 うちのひいひいお婆さまがムー大陸になった瞬間の写真です。(写真を渡す)」


「あ、本当だ。ムー大陸だ。」


「撮影したのはひいお婆さまだったんですけど、大興奮だったらしいですよ。」


「ムー大陸が写真に撮れたからですか?」


「この直後に、ひいお婆さまは石川県の漁師によって仕掛けられた網で捕られたそうです。」


「あぁ、このときひいお婆さまはノーテンキだったんですね。」


「改めまして、マリン。
 20歳の誕生日おめでとう。」


「忘れてました。誕生日でした。」


「そして、今日からあなたは『マーーメイド』です。」


「それも忘れてました。基本給が上がるんでしたね。」


「『カーメイド』の母が江東区から支給されたたてごとでお祝いの歌を歌います。」


「江東区から支給されたんですね。
 亀戸がある区ですね。」


(ゆっくりたてごとを奏で始める)


(目を閉じて聴く)


(たてごとを奏でる)


(目を閉じて聴く)


「フハハハハ!
 お前を『ろうマーメイド』にしてやろうか!」


「ビックリした!
 突然どうしたんですか、お母さま。」


(たてごとを奏でながら、聖飢魔IIを熱唱する)


「お母さま。
 それ、たてごとで奏でるタイプの歌じゃないです。
 誕生日に歌う歌でもないし、人魚が歌う歌でもないです。
 あと、『ろうマーメイド』って何ですか?
 『ろう人魚』ってことですか?」


(聖飢魔IIを熱唱し続ける)

 

 

 

 

【コント・セルフ・ライナーノーツ】

人魚と出世魚という2つの言葉を組み合わせたコント。

まず、マーーメイドが浮かび、歳をとるにつれてどんどん伸びていくという設定も考えたのですが、

もう一度考え直し、この形になりました。

 

 

【上演メモ】

人数:2人

 

所要時間:5分~6分
難易度:★★★☆☆
備考:一番のネックは衣装や小道具(たてごと)です。

最悪、セリフでカバーもありですが、可能なら用意した方がいいと思います。

 

 

【過去コントを5本チョイスしました。こちらもどうぞ。】

【コント】それゆけ!アンパンさん!
【コント】視力検査
【コント】公園と山内とタイムカプセル
【コント】天使と悪魔の2択の話#3
【コント】底なし穴殺人事件

 

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