倉田
「まったく・・・。
 七海のヤツ、こんな夜中に俺を呼び出してどういうつもりだ?
 しかも、底なし穴に集合なんて・・・。
 (底なし穴を覗き込む)うわぁ・・・、底が見えない・・・。
 不吉な場所だぜ、ここは・・・。」


七海
「(やってくる)すみません。お待たせしてしまって・・・。」


倉田
「おせぇんだよ!
 それよりも金は用意できたのか?
 金が用意できないのなら、お前が不倫している現場の写真、
 職場にバラまいてもいいんだぜ。」


七海
「いや、あの、それだけは勘弁してください!!
 お金なら一週間以内に用意するんで・・・!!」


倉田
「ダメだな。悪いが明日には海外に高飛びするんだ。
 すぐに金がいるんだよ。
 (七海に背を向け、タバコに火をつける。)」


七海
(ゆっくりと倉田に近づく。)


倉田
「悪いが、支払い期限の延長のために俺を呼び出したのなら、
 帰らせてもらうぜ。(振り返る)」


七海
「えいっ!!(倉田を底なし穴に突き落とす。)」


倉田
「(底なし穴に落ちる)うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


七海
「すみません・・・倉田さん・・・!!
 でも、こうするしかなかったんです・・・。」


倉田
「(穴から声がする)うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


七海
「僕にそんな大金、用意できません。
 家族の幸せを守るためなんです・・・。」


倉田
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


七海
「妻や子供たちとの生活を失いたくない・・・。
 これが最良の選択だったんだ・・・。」


倉田
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


七海
「本当にごめんなさい・・・。」


倉田
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


七海
「あの・・・」


倉田
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


七海
「えーと・・・」


倉田
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


七海
「・・・長くない?悲鳴。
 いや、確かに底なし穴って名前の穴だけど、
 それはあくまで通称であって、本当に底なしってことないよね?」


倉田
「うわ!うわ!!うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


七海
「随分、長い悲鳴だよ?
 底に着くまでこのテンションでいける?倉田さん?」



(穴から声が聞こえなくなる)



七海
「ようやく底までいったかな?
 さすがに底がないってことはないか。」


倉田
「・・・うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


七海
「まだ落ちてるんだね?!
 一瞬、声が届かないエリアに入って、また抜けたってこと?
 それとも、小休止入ったのかな?」


倉田
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーぁぁぁああははははははは!!」


七海
「笑っちゃった?!
 底なし穴に落ちているという現実が可笑しくなってきちゃったの?!」


倉田
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーぁぁんんん!!」


七海
「泣いてるの?!
 大爆笑の後は大号泣?!
 突き落としておいてアレだけど、メンタル大丈夫?!」


ケータイ
「ピロロロロロロロ・・・ピロロロロロロロ・・・」


七海
「あ、ケータイ鳴ってる。
 (出る)もしもし?」


倉田
「(電話口から)うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


七海
「聞こえてるよ!!
 電話口で自分の悲鳴を聞かせるってどういう心理状況なの?!」


田口
「(やってくる)その声は七海さん?!」


七海
「うわ!!田口さん・・・!!」


田口
「こんな夜遅くにこんなところで何してるんですか?」


七海
「いや・・・あの・・・」


田口
「ちょっと待って!
 何か聞こえないですか・・・?」


七海
「え・・・いや・・・」


田口
(耳をすませる)


倉田
「(底なし穴から)うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


田口
「この声は・・・?!倉田さんの声だ!!
 七海さん、あなたまさか倉田さんを底なし穴に?!」


七海
「ち・・・違う・・・!!」


田口
「大変だ・・・!早く警察・・・!!」


七海
「えいっ!!(田口を底なし穴に突き落とす)」


田口
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


七海
「ごめんなさい!田口さん!!
 でも、見られたからにはこうするしか・・・!!」


田口
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


倉田
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


七海
「声が二人分になっちゃったな・・・。
 にしても倉田さんの声量すごっ!!」


倉田
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


田口
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー・・・
 あ、倉田さん!!」


倉田
「あ、田口さん!!」


七海
「追いついたの!?
 はるか前に突き落とされた倉田さんに田口さんが追いついたの!?
 田口さんの初速が早かったのかな?!」


田口
「どうしました、こんなところで?!」


倉田
「突き落とされたんです!!」


田口
「私もです!!」


七海
「なに?この会話。
 ここにいると、また別の人が来るかもしれないから、ここは逃げよう。(走り去る)」




翌朝



七海
「(底なし穴にやってくる)さすがに気になって見に来てしまった・・・。
 二人はどうなってるかな・・・?」



(底なし穴から声はしない)



七海
「さすがに底まで落ちたかな・・・?」


ベルの音
「ジリリリリリリリリリ!!」


七海
「ん?!
 なんの音?!」


ベルの音
「ジリリリリリリリリリ!!」


七海
「底なし穴から聞こえるけど・・・」


ベルの音
「ジリリ・・・!!」


七海
「音が止まった・・・」


倉田田口
「(底なし穴から)うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


七海
「寝てたの?!
 寝てたら目覚ましが鳴って、止めて、また叫びだしたの?!
 落ちながら寝るってどういうこと?!
 寝落ちってこと?!」


倉田
「おはようございます!!」


田口
「あ、おはようございます!!」


倉田
「夢を見ましたよ!!」


田口
「どんなですか?!」


倉田
「えなりかずきが江頭2:50のテンションで渡る世間は鬼ばかりに出てる夢を見ました!!」


七海
「どんな夢みてんだよ!!」


田口
「私も同じ夢を見ました!!」


七海
「何、その奇跡!
 二人そろって同じ夢って!!」


倉田
「今日もよろしくお願いします!!」


田口
「あ、お願いします!!」


倉田田口
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


七海
「・・・もう放っておいても大丈夫かな。
 一刻も早く、ここから立ち去ろう。(走り去る)」


田口
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


倉田
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


田口
「あ!底が見えた!!」


倉田
「底に何か見えるぞ?!」


田口
「あれは・・・トランポリン?!」


倉田
「このままだとトランポリンにぶつかる!!」


田口
「あぶなーーーーーい!!」


トランポリン
「ビヨーーーーーーーン!!」


倉田
「うわぁーーーっ!!今度は穴をものすごいスピードで上り始めた!!」


倉田田口
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」




その日の夜



優子
「これが底なし穴?」


光一
「そう。この町の名物。」


優子
「本当に底がないの?」


光一
「わからない。でも、のぞいてみても底が見えないんだ。」


優子
「(のぞく)んー・・・。真っ暗で何も見えない・・・。
 あれ?何か聞こえない?」


光一
「何か?」


優子
「うん。穴の中から・・・」


光一
「ホントに?(耳をすませる)」


倉田田口
「(穴の中から)うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


光一
「ホントだ!『うわぁ!』って言ってる!!」


優子
「でしょ!?何これ、怖い!!」


倉田田口
「うわぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっっっっ!!」


光一
「声がだんだん大きくなってきたぞ!!」


優子
「何?何?何か出てくるの?!」


倉田田口
「うわぁっ!!(穴の中から勢いよく飛び出し、地面に立つ)」


光一
「びっくりした!!」


優子
「なんか、マイケルジャクソンのライブでこういう登場見たことある・・・!」


倉田田口
「・・・な、七海ぃーーーーーーーーっっっ!!(走り去る)」


優子
「・・・どういうこと?」


光一
「・・・わからない。」



この出来事は光一、優子により町全体に広まり、
『底なし穴のナナミー事件』として、町の歴史に刻まれることになるのでした。









【コント・セルフ・ライナーノーツ】

ドラクエXに「底なし穴」っていう穴があって、

そこを通りかかったときになんとなくひらめきました。


個人的には、目覚ましの部分がお気に入り。








にほんブログ村 お笑いブログ 自作面白ネタへ
にほんブログ村


お笑い&ジョーク ブログランキングへ