公園。
隅っこでサラリーマンが新聞を読んでいる。



陣内
「(公園にやってくる)いやぁ、久しぶりだなぁ。何年ぶりだっけ?」

西村
「(陣内の後ろからやってくる)中学卒業以来だから・・・10年ぶりか。」

陣内
「お前、変わってないなぁ。」

西村
「お前もだよ。」

陣内
「あ、知ってる?この前、中学の同窓会があったんだよ。」

西村
「知ってる。俺は仕事で行けなかったけど。
 みんな元気だった?」

陣内
「元気だったよ。
 河野も、三浦も、橋本も。」

西村
「懐かしいなぁ、その名前。

 あ、そういえば、アイツは来てた?」

陣内
「アイツって?」

西村
「山内。」

陣内
「山内?」

西村
「ほら、いたじゃん。
 人を驚かせるのが大好きな・・・」

陣内
「あ、いたなぁ!
 ドッキリ大好き『ドッキリ山内』!!」

西村
「山内は来なかったんだ。」

陣内

「来なかったなぁ。
 アイツ、同窓会なんかには必ず顔出しそうなのに・・・。」

西村
「俺のケータイに最近、毎日のように『同窓会、まだ?』ってメール来てるから、
 てっきり、アイツ、参加してるのかと思った。」

陣内

「なんだよ、来ればよかったのに。」

西村
「変なヤツだな。」

陣内

「山内、懐かしいなぁ。アイツ今、何やってるんだろう。」

西村
「さぁ。アイツのウワサ、全然聞かないからなぁ。
 最後に会ったのは・・・タイムカプセルの日か?」

陣内
「タイムカプセルの日?」

西村
「ほら、中学卒業から一週間くらいしてから、みんなでタイムカプセル埋めたじゃん!」

陣内
「あったかも。
 あ、その時、確か山内いたな。」

西村
「そうそう。山内がタイムカプセル用意したんだけど、
 なんかすごく大きなタイムカプセルで、『これじゃ、学校には埋められないな』ってことで、
 近くの公園に埋めたんだよ。」

陣内
「そうだ。アイツとんでもなく大きなタイムカプセル用意してたよな。
 ヒト一人入れそうなサイズだったっけ。
 お前、タイムカプセル、何入れた?」

西村
「消しゴムとかだったと思う。お前は?」

陣内
「おもちゃとかかな。山内は何入れてたか覚えてる?」

西村
「確かね、大量の缶詰。
 『お前、この量あったら、10年くらい生活できるんじゃねぇ?』って茶化した記憶がある。」

陣内
「あの大きさのタイムカプセルなら、10年分の缶詰でも入るよな。」

西村
「そういえば、山内、タイムカプセルの日にストレッチしながら、変な呼吸法を編み出してた。」

陣内
「なんだよ、変な呼吸法って?」

西村
「俺も気になって山内に聞いたんだよ。そしたら『できるだけ酸素を消費しない呼吸法』って言ってた。」

陣内
「なんだ、それ。」

西村
「あと、山内、タイムカプセルを埋める前に、公園の隅っこで『何か』から出てくる練習してた。」

陣内
「何だよ、『何か』って。」

西村
「何か、しゃがんだかと思うと、急に両手を広げて立ち上がって『テッテレー!』って言うんだよ。」

陣内
「ますます意味がわかんないな。」

西村

「で、『何してるんだ?』って聞いたんだよ。
 そしたら、『タイムカプセルを開けるときにわかるよ。』って言ってた。」

陣内
「はぁ?何だ、それ。」

西村
「で、いよいよタイムカプセルに物を入れる直前、アイツ、ものすごく真剣な顔でタイムカプセルを見てんだよ。
 なんか『これから、すごく壮絶な挑戦をするぞ』って目で。」


公園の隅にいたサラリーマンがやってくる。


サラリーマン
「君たち、ちょっといいかな。」

陣内
「はい。」

西村
「何ですか?」

サラリーマン
「盗み聞きをするつもりはなかったんだが、つい君たちの会話が耳に入ってきてしまってね。」

陣内
「はぁ。」

西村
「で、用件は?」

サラリーマン
「いや、その、タイムカプセルなんだが、できるだけ早く掘り出した方がいいんじゃないかな。」

陣内
「は?」

西村
「何言ってるんです?」

サラリーマン
「あ・・・、いや、すまんすまん。余計なお世話だったね。
 ・・・というか、そんなわけないか。
 ははは。何でもない、何でもない。(再び公園の隅で新聞を読み始める。)」

陣内
「何だ、あの人。」

西村
「っていうか、この前、同窓会あったんだろ?
 そのとき、タイムカプセル掘り起こさなかったのか?」

陣内
「いや、全員すっかり忘れてた。」

西村
「10年後の同窓会のときに掘り起こそうって言ってたじゃん!」

陣内
「そうだっけ?」

西村
「山内が真剣な顔でみんなに念を押してたじゃん。
 『10年後だぞ!10年後の同窓会で絶対に堀りおこせよ!!』って。」

サラリーマン
「(やってくる)君たち、ちょっといいかな。」

陣内

「なんですか?」

サラリーマン
「やっぱり、そのタイムカプセル、放っておいてはいけない気がするな。」

西村
「何でです?」

サラリーマン
「いやだから、そのタイムカプセルの中に・・・」

陣内
「?」

西村
「?」

サラリーマン
「・・・いや、そんなわけないか。
 すまんすまん。何でもない。(再び公園の隅で新聞を読みだす。)」

陣内

「なんだ、あの人。さっきから。」

着信音
「ピロリロリ~ン。」

西村
「(携帯を取り出す)お、ウワサをすれば。」

陣内
「山内からメール?」

西村
「山内からメール。
 読むぞ。
 『同窓会まだ?』だって。」

陣内
「もう終わってるっての!」

西村

「のんきなヤツだなぁ。」

陣内
「『のんき』って返してやろうぜ。」

西村

「いいね。」

陣内
「せーの。」

陣内西村
「『のんき。』(送信)」

サラリーマン
「『のんき』じゃねぇよ!」

陣内
「びっくりした!」

西村
「突然、出てこないでください!」

サラリーマン
「やっぱり、早く掘り起こした方がいいと思うんだ、タイムカプセル。」

陣内

「だから何でです?」

サラリーマン
「わからないのか?山内くんは・・・」

着信音
「ピロリロリ~ン」

陣内
「山内からメール?」

西村
「山内からメール。」

サラリーマン

「何て?何て書いてあるんだい?!(陣内にくっつく)」

陣内
「くっつかないでください。」

西村
「読むぞ。
 『苦しい・・・』だって。」

陣内
「不気味なヤツだなぁ。」

西村

「『のんき。』って返してやろうぜ。」

陣内

「いいね。」

西村
「せーの。」

陣内西村
「『のんき。』(送信)」

サラリーマン
「だから、『のんき』じゃねぇよ!」

陣内
「あなた、何なんですか!」

サラリーマン
「気づけよ!君たちは緊急事態を告げるメールに『のんき。』と返しているんだぞ!2通も!!」

西村
「ちょっと別の場所で話そう。
 ここじゃ落ち着かない。」

サラリーマン
「ちょっと!そのタイムカプセルっていうのはどこに埋めたんだい!?」

陣内
「忘れましたよ。(公園を去る)」

西村
「この辺りの公園ですよ。(公園を去る)」

サラリーマン
「公園と言ってもこの辺りにはたくさんあるじゃないか!(ついていく)」







誰もいなくなった公園。
土の下から

「ドンドンドンドン!!」





 


【コント・セルフ・ライナーノーツ】

弟との会話で出てきた話題が元になって作ったコントです。

実際、僕のクラスも小学校卒業時にタイムカプセルを埋めたらしいのですが、

掘り起こされることなく、現在に至っています。

タイムカプセルは掘り起こされない運命にあるみたいですね。

 

 


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