PIXINSIGHTによるお手軽SHO(ナローバンド)画像処理(初心者用) | 今夜も快晴!★koheiの天体写真★

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折角PIXINSIGHT(以降PI)を入手しても、英語等とっつきにくさのせいで使ってない人も多いようです。私もずいぶんブログ上で皆さんに教えていただきました。


始めたばかりの私には分不相応ですが、今回ブロ友の方へPIXINSIGHTのSHOの画像処理を説明、撮影データをいただいて実演することになり、少しフローを整理してみました。


せっかくまとめたので(備忘も兼ねて)撮影者さんの了解を得てブログに掲載してみます。(...ということで、ベテランの方は回れ右!)

 

※SHO(ナローバンド)合成とは:

SII(硫黄II)Hα(水素アルファ)OIII(酸素III)のフィルターを使って、それぞれの波長で撮影した画像をRGBカラーに合成することで、美しい天体画像を作成します。これにより、通常の可視光写真とは異なる、科学的にも美的にも興味深い天体写真が得られます。この手法は、ハッブル宇宙望遠鏡の画像処理などでも用いられており、プロフェッショナルからアマチュアまで広く利用されています。

 

0.素材(左上からS、H、下がO)

  

・バラ星雲

  撮影者:田舎のSiriusさん

  データ:2024年11月25日 pm:9:27~

    FRA300Pro ZWO533MMP 

     1.25"SHO -20℃ gain100 

     300s 各24コマ

     赤道儀 Star Adventurer GTi  

     ASIAIRPro使用

     総露光時間 6時間!

  最新の機器を駆使し、非常に精力的に撮影しておられます。

  撮りおろしのバラ星雲は十分な露光のためか素晴らしい完璧な画像です。

  SもOもリッチで出来栄えは期待が膨らみます。

 

1.基本の基本

・何事も基本の教科書が必要、誰が何といおうと丹羽さんの「Pixinsightの使い方(星沼ブックス)はバイブル。丹羽さんのHPも充実していて、何度助けられたかわからないです。


・もう一つは、豊富な知識や経験を惜しみなくYouTubeにて披露されている蒼月城さんの膨大なPIの解説動画の数々。無償で提供いただけるのは感謝しかないです。ナローバンド(SHO)合成の基本についてはこちらを参照。特にカラーマッピング(カラーシフト)についての概念が大事。


・プラグインBXTNXTは必需品です。有償ですがPIを導入したら必ず入れましょう。星消しはStarnet2はSXTと遜色ないのでどちらでもいいです。


・PIのハードウエアの必要スペックはよくわかりませんが、BXT・NXT・Starnetは、NvidiaのGPUの有無で全然速度が違います。

 

2.SHOの基本ポイント

・SHOはR=SII、G=Hα、B=OIIIを割り当てるが、ナローバンド合成は、蒼月城さん曰く「個々人の好みに応じてどんな色合いにしても構わない」とのことです。


・実際のSHOの作例はSIIは赤、OIIIは青を割り当てますが、緑の天体は存在しないため緑は使わないという暗黙のルールがあり、Hα(G)が強い場合はカラーを弄って他の色へ変える(色相変更)のが一般的です。(PIには緑を亡きモノにするSCNRというコマンドもあります)またSIIやOIIIの光が弱い場合、相対的に強調することもあります。今回の作例は良質すぎて色相変更(カラーマッピング・カラーシフト)は必要ありませんでした。


・以上からSHO向の対象はHαだけでなくSIIやOIIIが豊富で三色が映える星雲が望ましく、Hαだけが強すぎる星雲は単調な色になりがちで面白くない(SHO以外の撮影方法を検討)ということになります。バラ星雲やハート星雲、胎児星雲などはSHO向の代表例です。HαとOIIIの二つが豊富ならあえてSを撮影せず、赤と青のHOOにするという手があります。(ライオン星雲など)


・SHOだけに限りませんが、星分離→統合の処理はやるやらないで大きな差が出る場合が多いです。私は星の画像品質劣化を防ぎたいので散光星雲はほぼやっています。

 

(左上からフロー順に並べたもの)

 

3.SHOの処理フロー

・ネット上でも、皆さん夫々のフローの順番が驚くほど違うので、下記のフローはあくまでもオレ流です。世界一簡単なSHO処理ですが、これで十分かと思います!


・他はほぼデフォルト設定(←デフォルトで何とかなるのがPIのいいところ)でよいかと思いますが、最後の星雲の6.Curves Transformation(トーンカーブ調整)の部分だけは個性を発揮できる部分なので、この処理スキルが全体の出来を左右すると思います。

 

0.WBPP・FBPP(スタック)

  今回は撮影者が処理
0.ABE・DBE(カブリ・ムラ処理)

  今回は全くフラットな画像だったので処理せず
1.Channel Combination (RGB合成) 

2.BXT(復元・星の補正)

  今回は必要ないレベルであったが一応処理   

3.Starnet2(恒星・星雲分離)SXTでも可

  以降AとBに分岐

 

【A:星雲】
4.HT(ストレッチ) 
5.SCNR(緑色除去)


6.Curves Transformation(トーンカーブ調整)(左:After、右:Before)

  コントラスト・明度・彩度・色相を色々弄る

  (今回は使っていないがカラーシフトにはHueを弄る)

  NarrowbandNormalization(無料のプラグイン)も使用可

  この部分はPSやFlatAideProなど他のソフトを使う方も多い
7.NXT(ノイズ除去)

  今回はノイズ少なく不要なレベルだが一応処理


【B:恒星】

4.HT(ストレッチ) 

5.Curves Transformation(トーンカーブ調整)

  星をカラフルしたいときは彩度を上げる


【A+B:統合】              
8.Image Blend(スクリーン合成)PixelMathでも可

  Image Blendは無料の画像合成スクリプト(設定はScreen)

  星雲と星のバランス(星の大きさ)や明度などの調整も可能です。

 

→完成!  (元画像が素晴らし過ぎるため画像処理が楽すぎた!)

 

【バラ星雲(NGC2237)いっかくじゅう座】

 (撮影者:田舎のSiriusさん

この写真の所有権は田舎のSiriusさんにありますので、無断転用・転載は禁止します。

いつまでも見ていられる、ほれぼれする画像ですね。渾身の6時間露光ご苦労様でした!