液体
あのひ、
夜、
という空洞が
ぱっくりと口を開け
音の死んだ部屋と
ものの影になった埃に、
わたしたちなんにも、
なーんにもできなかったね
温度のちがうかなしみの上で、
言葉は重力を持てなくて
ふたりはただただごめんを繰り返した
繰り返すことしかできなくて
ふるえる小さな機械は、
触覚も 体温も 圧力も伝えられない
すこし開いた窓から三日月が見えた
白くて四角くて厚みがあって、
これってお豆腐みたいだね。
冷たくて頼りなくて不確かで、
冷奴みたい。
しょうがと葱とかつお節をたっぷりかけたら
きっともうわからないね。
言葉を探してぐるぐるとすることに、
わたしたちはいよいよ疲れて
あなたはおやすみなさい、と言った。
遠く離れた、霧雨のような寝床から。
閉じたまぶたの向こう、
おやすみなさい、だけは的確な温度を、
頭の上で、受信した。
酢酸カーミンが夜
そうだ、
イメージを言葉にすれば良いのだ
なんて平凡な才能
それでまた、きゃっきゃと笑う。おんなのこだもの。
火傷のあと。アーモンドの甘さ。きれいに皮だけ残された皿。執着心と睡眠。働くということ。執着心と生きることと妥協することと言い当てること、場所、という概念。
そんな一日だった。
ぼんやり。
プロセスを忘れてしまったけれど、私はデスクワークをする自分、というビジョンを持つことに成功した。司書になるより楽しそうで、アーティストを自称するより感覚がリアルでありそうだった。
宇宙
目を閉じていて
わたしは浮いてるの
浮いて る、っていうのもなにかちがう
地面に横たわって力を抜いているときの
地面がそのままなくなってしまったような感じね。
身体の力が空気みたいに抜けていって
わたしはやっぱり目を閉じて
そうすると次第に頭が何かに引っ張られるのね
顎の下に糸をつけられたように
うしろからゆっくり、
でもどんどんどんどん引っ張られて
わたしの頭、百八十度になって
でもまだ引っ張られるから
そこで頭は首から取れてしまうの
痛みとか、なくて
本当に自然に
頭は何かに引っ張られて
円を描いて、
きっとまた戻ってくるのだろうな
わたしはたぶん、目を閉じていて
見えない星などを、見ている。
そんなイメージ。