液体
あのひ、
夜、
という空洞が
ぱっくりと口を開け
音の死んだ部屋と
ものの影になった埃に、
わたしたちなんにも、
なーんにもできなかったね
温度のちがうかなしみの上で、
言葉は重力を持てなくて
ふたりはただただごめんを繰り返した
繰り返すことしかできなくて
ふるえる小さな機械は、
触覚も 体温も 圧力も伝えられない
すこし開いた窓から三日月が見えた
白くて四角くて厚みがあって、
これってお豆腐みたいだね。
冷たくて頼りなくて不確かで、
冷奴みたい。
しょうがと葱とかつお節をたっぷりかけたら
きっともうわからないね。
言葉を探してぐるぐるとすることに、
わたしたちはいよいよ疲れて
あなたはおやすみなさい、と言った。
遠く離れた、霧雨のような寝床から。
閉じたまぶたの向こう、
おやすみなさい、だけは的確な温度を、
頭の上で、受信した。