たまゆら
こんなにつめたい夜のまんなか
あなたはなにをうたうのかしら
とおいところであなたはなにを
なにをおもってうたうのかしら
先ほどふったばかりの雨が
地面にくろぐろふたをするので
月も見えない空にむかって
おおきな穴があいてしまった
すきとおる線をひとすじに
わたしの頭は血などは流さず
ただただ泡がふわふわと
音を立てては消えるだけ
脱いだコートにしわくちゃと
寄ってしまった皺のこと
そのいっしゅんのしんじつを
そのいっしゅんのしんじつを
私の見つめる地点のようす
ことばはなにも告げないけれど
すべてはすぐに反転するし
ことばはなにも告げないけれど
凍えるグラスはそのなかに
無数のくうきょを持っているので
あわててそそぐ液体に
グラスはちいさく悲鳴をあげた
なんのことはない、このへやが
しずまりかえったふかい水の底
わたしはすぐに反転するし
ことばはなにも告げないけれど
こんなつめたい夜のまんなか
あなたはなにをうたうのかしら
とおいところであなたはなにを
なにをおもってうたうのかしら
忘却
失われた記憶はどこにいくのか。
へんな夢を見た
高校生で、そのとき付き合ってたひとと、そのときだいすきだったひとと、二重結婚してる夢だった
すきだったひとは顔だけがはっきりとしてあとはなんだかぼんやりとしている
でもなんだかいっぱい喋って嬉しくて、彼は隣のクラスだから、また後で会いに来てもいい?って聞いて自分のクラスに戻ると元カレもいて、うーん。このひともたいせつなのだけど。とか思う
結婚生活は全部学校の教室で営まれている
元カレにいたっては顔すらはっきりと出てこない。喋ってすらいない。存在のみ。
ぜんぶ忘れていたことだった
すきだったひとの色々。教室の色々。先生の色々。温度の湿度の色々。
忘れていたすべて。すべては、
そうね、私の中にあるのね。