ろくじょうのおとしあな -148ページ目

たまゆら

こんなにつめたい夜のまんなか

あなたはなにをうたうのかしら



とおいところであなたはなにを

なにをおもってうたうのかしら



先ほどふったばかりの雨が

地面にくろぐろふたをするので

月も見えない空にむかって

おおきな穴があいてしまった



すきとおる線をひとすじに

わたしの頭は血などは流さず

ただただ泡がふわふわと

音を立てては消えるだけ



脱いだコートにしわくちゃと

寄ってしまった皺のこと

そのいっしゅんのしんじつを

そのいっしゅんのしんじつを



私の見つめる地点のようす

ことばはなにも告げないけれど

すべてはすぐに反転するし

ことばはなにも告げないけれど



凍えるグラスはそのなかに

無数のくうきょを持っているので

あわててそそぐ液体に

グラスはちいさく悲鳴をあげた



なんのことはない、このへやが

しずまりかえったふかい水の底

わたしはすぐに反転するし

ことばはなにも告げないけれど




こんなつめたい夜のまんなか

あなたはなにをうたうのかしら



とおいところであなたはなにを

なにをおもってうたうのかしら

むだい

言葉がゼロになる地点まで

言葉を純化して純化して純化させ続ける。




その地点で私は、何を言うのか何を見るのか何を聞くのか何を。





終わらない、永遠の命題。

忘却

失われた記憶はどこにいくのか。






へんな夢を見た

高校生で、そのとき付き合ってたひとと、そのときだいすきだったひとと、二重結婚してる夢だった

すきだったひとは顔だけがはっきりとしてあとはなんだかぼんやりとしている

でもなんだかいっぱい喋って嬉しくて、彼は隣のクラスだから、また後で会いに来てもいい?って聞いて自分のクラスに戻ると元カレもいて、うーん。このひともたいせつなのだけど。とか思う

結婚生活は全部学校の教室で営まれている

元カレにいたっては顔すらはっきりと出てこない。喋ってすらいない。存在のみ。





ぜんぶ忘れていたことだった

すきだったひとの色々。教室の色々。先生の色々。温度の湿度の色々。

忘れていたすべて。すべては、

そうね、私の中にあるのね。