「脂肪という名の服を着て」
安野モヨコ
こわい
こわい
劣等感や嫉妬や被害妄想や波動やシンプルな欲求感情揺らぎやすいものすべてすべて
そういうものに、呑まれてしまう、押し寄せて渦巻いて流されてゆく
醜い
醜い
うしなう
うしなってしまう
今日はいっぱい漫画を読んだ
日射しはあかるいのになんだかとても冷たい
本棚にある無数の穴。巨大な穴。
続いてゆくもの。たおやかな絶望。
お店から出て、それはもう知らない街だった
黒い液体が降っている
足元がゆらゆらしている
身体に反射する声が浮遊する
これはまた、良くない兆候である
ループしている。ループ。イメージする。
反芻。反復。呼吸。
くろいものが爪から、ああまただ、またきた
あり得ないことの空想。ドアはひっそりと開く。
暗がりと無機質。音。ただの音。
窓の向こうの川。暗闇という、川。
声を。反射しない声を。
ぼんやりと眺めた空に、星がひとつ、ながく流れて落ちるのが見えた
忘れられた記憶はどこへゆくのかしら。
身を包むコートも首を守るストールも意味をなくした川の中で私は体温の高い手のひらの持ち主をおもった。
沈んでしまった意味を言葉を掬い上げる声の持ち主をおもった。
それはとてもきれいなことで、そしてとても単純なことで、そしてとても現実的なことに思われた。
そのうそみたいな理想は、その力強さ故に、私を溺れさせることはないだろうと、そうしてはじめて、私はようやくしずかになりシンクの上の牛乳、ベーコン、フライパンなどについて思考を巡らす。どうかあなたに、安らかな夜の訪れることを。
追記
渡辺ペコは、やっぱりなんかすごい。かもしれない。
すごく注目されているから今年めちゃくちゃ流行りそうだけれど。
「へんしんものがたり」を読んで、そのうしろに川上ひろみとの対談が載っていて、なるほど。と思った。
「くろいひと」という話に、この間何かで聞いた、言葉への鎮魂をおもった。
言葉は文字で、文字は形で、形は、ただのインクなのだ。
私の書くものも、すべて、あとには、ただただ黒いしみになるだけ。
あっちょんぶりけ
髪がふにゃふにゃだ
東京が強風でまっくろになっているとき、ミラノでは世界遺産でサーフィン、おうちのなかで快適なサーフィン、テレビでは議論にすらなっていない議論が繰り広げられ、メディアは本質を見失っている、ふんふんなるほど。わたくしは大根おろしを大根半分ほどすり終えたところで、ぐつぐつの鍋の中でそれはとても甘く、それだけで私の世界は完結。あたた かな毛布と心地良い腕とおいしいお米があればそれでいい。