ブラジルの育成年代の動画を探してみたら、↓の比較的長めの動画2本を発見しました。
私は「これこそ南米流」だと勝手に思いました。
ヨーロッパが戦術に細かいのだとしたら、南米は技術に細かいのだと思います。
↑2本の動画では、徹底的に細かくドリブルの種類やパスの出し方を練習しています。
私は、すでに日本の育成年代は世界トップに届きつつあると思っているので、なんでも外国の真似をする必要はないと思います。
今日本代表とブラジル代表が試合をしたら、どちらが勝ってもおかしくないと思っています。
それでも、私が長年コーチをしていて思うのは、ヨーロッパ的な育成よりは、↑のブラジル的な育成の方が、日本の子どもたちはハマるのではないかということです。
というよりも、むしろ↑動画のブラジル的なやり方でやったら、ブラジル人とは違った感じで、ブラジル人並みに日本人はうまくなると思います。
日本人にはブラジル人的なリズム感はありませんが、ブラジル人にはないアジリティがあると思います。
さらに日本人は、私は世界一「職人気質」だと思います。
ブラジル的な、1つ1つの技を徹底して練習するやり方は、むしろ日本人にぴったりだと思うのです。
「自由奔放な創造的なプレー」がブラジルの代名詞でした。
ですがブラジルのこういった練習動画を見ると、自由奔放で創造的なプレーという概念について、考え直す必要があると思います。
私たちには、ブラジル人のプレーは創造的に見えるかもしれませんが、ブラジル人にとってはそうではない可能性があります。
創造的という意味は、私は無から何かを作り出すのではなくて、数ある技術の組み合わせの妙だと思うのです。
「ここでこれをやるか」という「組み合わせの斬新さ」が創造的なのであって、その元になる技術は徹底的に細かくたくさん持っていなければいけないと思います。
そしてブラジル人は、徹底的にこだわって、技術を練習しているのだと思います。
考えてみますと、私の練習スタイルはブラジルスタイルに近いと思います。
日本の育成指導者は「今のちゃんと判断した?」とか「いい立ち位置に立てた?」とか「集中!」的な声掛けが多いと思います。練習も、毎回同じルーティーンをひたすら磨く感じだと思います。
ですが私は練習で、ボールコーディネーション(↑動画でいえば、フェイント練習やトリッキーなパスなど)が多いので、声掛けは「お!これできた!ナイス」とか「家で練習しろよー!」とかになります。
そして選手が上達してきたらその都度、選手のレベルよりちょっと高い足技を新しく入れます。うまくなった代では、おそらく足技の種類だけでも30種類以上はやっていると思います。
選手は自分でボールと向き合っていろいろ試行錯誤します。
うまくできる子がいれば「ストップ!○○君お手本!みんな○○君を観察して、どうやったらできるようになるか考えよう」という感じのことを、頻繁にやります。
お手本になった子はうれしいし、お手本の子が足技を見せると「おおー!すげー!」と歓声が沸きます。
足技だけではなくて、トラップもいろいろな種類を練習します。
さらに、鳥かご(3対1)でも、設定を細かく変えてやります。
キックについても、ポイントを細かく設定して練習します。
その代わりといいますか、試合では、低学年のうちはもちろん指導しますが、ある程度できるようになった代では、ほとんど声掛けはしません。
むしろ、私は試合に引率していって、一言も指示を出さずに試合を眺めて帰ってくることを理想としているのです(笑)。
試合を最低限できるようにするために、4年生以降くらいに守備戦術だけは整備するくらいです。
攻撃に関しては、風間八宏さんが言うように「相手を見てサッカーをする」ことができれば、戦術はいらないと思っています。
勝手に有機的に、選手たちがつながっていくのです。
そして、ドリブルやパス、トラップやシュート、個人戦術を細かく練習していけば、その組み合わせで楽しく試合をできるようになります。
時間はかかりますが、6年生後半くらいにやっと、すべてがつながってくる気がしています。
20世紀最高の文化人類学者、レヴィストロースは「分類があるということは、たとえそれが間違っていても、分類がないよりもましである」と言っています。
サッカーで言えば、細かく技術を分類してそれぞれを徹底して練習することだと私は思っています。