今日は「国宝・鳥獣戯画 京都高山寺展」第6期を観に行って来ました。
7月から2ヶ月あまりに渡って6期に分けて公開された鳥獣戯画も今回がラストになります。
(北海道の)夏休みも過ぎたという事もあり、鳥獣戯画の実物展示以外の場所は比較的空いていました。
今回公開された部分は「丙巻」と「丁巻」の後半部分。
丙巻後半は、前半と同じく祭事や田楽などが描かれていますが、登場キャラクターが人間から再び動物に変わっています。
①鹿に乗った猿が競馬(競鹿?)をしている。
葉っぱの冠を付けた猿が従者のカエルに蹄の様子を調べさせている。
高下駄に杖の猿のおじいさんが競馬の見物に来ている。
疾走感あふれる競馬の様子を木の葉や栗の実の枝を持った蛙たちが見送っている。
杖を持った猿がしたり顔で競馬の解説?をしている。
ものすごい勢いで走ってくる鹿の気配に気付き、慌てて道を譲る二匹の盲目の猿。
木の葉の琵琶を背負った猿の琵琶法師。
高下駄に杖の猿は慌てて逃げ惑っている。
その様子を見て犬と兎と蛙が笑っている。
②牛が引く荷車を山車に見立てて行進する一行。
イノシシにまたがる兎は拍子、犬に乗る蛙は鼓を持っている。
木の枝に籠の荷物を付け担ぐ通行人の猿。
一行の蛙が弓を持ち警護の武士役をしている。
動物たちは賑やかな踊りで盛り上がっている。
牛が引く荷車の上には猿、蛙、狐が乗っている。
蛙が声を張り上げて今様を詠っている。
牛車の前では蛙が拍子を打ちながら囃し立てている。
葉っぱの鳥烏帽子姿の猿がお酒を入れる銚子と折敷に据えた盃を持っている。
さらにその前方には桶を被った猿がいる。
扇を持った狐と手振りを交えて踊る猿。
山車の行く先には樹の下に葉っぱの鳥烏帽子姿の猿たちが山車を見物している。
猿の大納言や、その家来の葉っぱの鳥烏帽子姿の蛙や猫。
③猿と蛙が蹴鞠を楽しんでいる。
蛙の蹴った鞠が高く上がっている。
葉っぱの靴が途中で脱げてしまったのか、片方だけしか靴を履いていない者もいる。
この場面は途中で切れている。
④猿と蛙の法力勝負。
猿が勢い良く法力をかけている。
その前では蓮の葉に顔を隠した猿の小僧が逆立ちをしている。
この勝負、猿側が優勢なようで蛙たちは不安な表情をしている。
そこで蛙たちは蛙の大僧正に助太刀を依頼。
大僧正は稚児とおぼしき二匹の小さな蛙を連れて現れた。
⑤不意に大きな蛇が現れ、蛙や他の動物たちは一目散に逃げ出し、丙巻は完結。
丁巻後半も前半と同じく田楽や伝統芸能、法会などが描かれています。
①田楽の場面。「びんざさら」や笛、太鼓、膝裏に鼓を挟んで楽器を奏でている。
②人物のサイズが急に小さく描かれている。
「木遣り(神社を立てる為の丸太運び)」の場面。
四人の男たちが丸太を梃の原理で前に進めている。
丸太の上には棟梁らしき男が扇子を持って作業に従事する者たちを鼓舞している。
しかし、あまりに強く縄を引きすぎたのか縄はぷっつり切れてしまい、勢い余って縄を引いていた五人の男たちは転倒。
その様子を見た先頭で縄を引いていた男たちは大笑いしている。
③「番論議(法会の時などに行われる問答)」の場面。
壇上では二人の僧が問答を繰り広げている。
聴衆である公卿や僧侶たちも熱心に耳を傾けているようなのだが、たった一人、よそ見をして先ほどの木遣りの場面を見ている者がいる。
④「印地打ち(川などを挟んで石を投げ合う行事)」が行われている。
かなり白熱した激しい勝負となっているようで、履いていた下駄を盾に身を守ろうとする者や、刀を抜こうしている者もいる。
⑤公卿が牛車から降りる場面。
車の左右に控える車副(車の誘導役)や、身辺警護の武士も描かれている。
公卿はどうやら先ほどの引地打ちの様子が気になっているようだ。
⑥牛車を引いていた牛が突然暴れ出し逃走。
牛飼いは慌てて逃走した牛を止めようとする。
通行人の女性が頭に載せていた宴に使う為の道具を落っことしてしまった。
器や食べ物、こぼれたお酒などが地面に散乱している。
⑦丁巻、そして鳥獣戯画のラストの場面。
散楽師が囃子に合わせて踊っている。
鼓を肩に載せて打つ僧侶と、爪先立って踊る鳥烏帽子姿の男がいる。
これにて鳥獣戯画の甲乙丙丁全四巻の実物全編、鑑賞する事が出来ました。
鳥獣戯画の公開部分が1週間ほどで変わってしまうので毎週観に行くのは大変な事でしたが、それだけの価値がある素晴らしい作品でしたし、解説本で予習して来たり観て来た後に改めて読む事で新たな視点で鳥獣戯画を観る事が出来る…そんな感じでした(笑)
鳥獣戯画はまだまだ謎の多い絵巻物です。
研究が進めばもっと明らかになって来る事もあるでしょうし、まだ発見されていない絵巻物の場面だってあるかも知れません。
それがあるから歴史や考古物の世界は面白いんですけどね(笑)