「LC共振」の話は意外に梃子摺る。

ωL=1/ωCから出発して共振周波数f0=1/2π√LCが得られ、

LC直列でもLC並列でも同じ共振周波数として得られる。

結論は次のようなもの。

直列共振ではLCインピーダンスが0、並列共振ではLCインピーダンスが無限大

この理屈を多少省かれて出発点として教えられたりするのが最初のωL=1/ωCで、これを一段階ずつ遡ると次のようになる。

ωL-1/ωC=0
jωL-j(1/ωC)=0
jωL+1/jωC=0 ←本当の出発点

このように虚数を意識すればLとCの位相が打ち消し合うのが分かりやすくて、直列共振ではLCインピーダンスが消え、並列共振ではLCインピーダンスが無限大である事がよくわかる。詳しい本では虚数を用いて解説される。

共振現象では共振周波数の公式「f0=1/2π√LC」や導出方法も大事だしLCインピーダンスの変化の理解も大事だけど、それもきちんと虚数を用いて理解しなければならない。出発点の式ωL=1/ωCを天下り的に覚えただけでは危ないのだ。

それが分かれば平成28年理論問9を解く道も見える。

 

この回路が直列共振する時の角周波数と並列共振する時の角周波数を問われている。並列共振は「jωL2+1/jωC=0」を解けばよいだけなので簡単なのだが、問題は直列共振である。天下り的に覚えたf0=1/2π√LCには直列共振を当てはめられない。

 

どう考えたらよいのかというと、「虚数」を意識するのである。

 

直列共振は直列部のインピーダンスが最小(=虚部のインピーダンスが0)になればよい事を理解できていれば、C,L2によるインピーダンスを虚数込みでアドミタンスから求め、これとjωL1を足し合わせたものが0になる方程式を立てる方針が浮かぶ。

 

C,L2の合成は和分の積でも計算できるが煩雑になりそうなので、アドミタンスの和としてjωC-j(1/ωL2)を作り、これを通分して逆数にすれば-j{ωL2/(ω^2CL2-1)}が得られる。これとjωL1との合計が0になればよいので、

 

jωL1=j{ωL2/(ω^2CL2-1)}

 

この立式さえできれば答えに辿り着ける。ここからの計算量も多いが、それ以前に共振現象のしくみを定性的なイメージからインピーダンスやアドミタンスの計算まで含めて本当に理解しているか、難問だけど良問だと感じる。