がんをきっかけに幸せになる*生き辛さから自由になる*ライフアートレッスン

がんをきっかけに幸せになる*生き辛さから自由になる*ライフアートレッスン

マインドフルネスとアートを使って自分への思いやりを育むセラピーをしています。
がん体験者さんや、生き辛さを抱えたアダルトチルドレンの方のサポートをさせていただいています。

 

 

こんにちは
がんを経験された方へ、
心のセラピーをお届けしている
長岡由子です。

がんを体験された方は、
おそらく一度は、
ネットの中をさまよわれたことが
あるのではないでしょうか。

私もあります。

思い返すと、
乳がんになってから、
何度か、かなりの不安に
飲み込まれたことがありました。

 

 

 

 

 

 検査の結果を待つ夜

 

腰がちょっと痛くなったとき。
骨に転移したんじゃないかと怯えて、
骨シンチの検査をしてもらいました。

卵巣が腫れている、と言われたとき。
今度は卵巣がんかと疑いました。

結果が出るまでの間、
もしもの時に備えようと思って、
調べました。

『やめときゃいいのに・・』

そう自分でも思いながら。

まだ結果も出ていないのに、
再発したあとのことを、
どんどん具体的に考えてしまって。

朝起きて、びっくりした!
顔の形が違うんだもの。

一晩で、顎がゆがんでいました。

きっと眠りながら、
歯を食いしばっていたんでしょう。
 

 

 目をつぶるのも、調べすぎるのも

 

 

怖い怖いで、目をつぶって過ごすのは、
私はあまり良いとは思えません。

でも、こんなふうに心配しすぎるのも、
やっぱり良くない。

顎がゆがんだ朝、そう思いました。

 

 

 私は、何が怖かったのか


あのとき、私はなぜ調べたのか。

最悪のケースに備えたかったからです。

最悪のことが起きたときに慌てて、
最適な選択ができなくて、
あとで後悔する。

それが、怖かった。

 

 母のとき、
「早すぎない?」と思ったこと

 

 

そのことを実感したのは、
母を見送ったときでした。

母は80歳のとき、
分子標的薬の副作用がしんどくて、
薬をやめることにしました。

すると母の主治医の女医さんが、
病院のソーシャルワーカーさんを通して、
がん患者さんのケアの経験がある訪問医さんや、
緩和ケアの病院につないでくれました。

最初は、思いました。

え? 緩和?
こんなの、早すぎない?

でも、結果として、すごく助かった。

2年たって、
あのときの準備は良かった、と思いました。

*

看取ってみて思ったのは、
なんとかなるようにできている、
ということです。

医療の側も、
たくさんの患者さんを見てきています。
だから、きちんと仕組みがある。

最悪のケースを知って覚悟するより、
そういう仕組みがあると知るほうが、
私には断然、安心でした。

 

 

 

 

 怖さの中身は、人によって違う

 

ただ、これは私の場合の話です。

私の怖さの中身は、
「慌てて、後悔すること」でした。
だから、仕組みを知ることで楽になった。

でも、同じ「怖い」でも、
中身は人によって違います。

*

がんになって、怖くてたまらない。
そうおっしゃっていた
クライアントさんがいました。

マインドフルネスで、
何が怖いのかを見つめてもらったら、

出てきたのは、
大切な家族とお別れするのが怖い、
という気持ちでした。

その方は、そこで、
自分が家族を
どれほど大切に思っているかに
気づかれました。

それからの毎日、
家族とのつながりを
大切に味わいながら生きること。

それが、怖さからの解放に
つながっていったのだと思います。
 

 

 

 何が怖いのか、尋ねてみる

 

だから私は、
再発が怖いという方に、
何かを伝えるより、
尋ねるかもしれません。

何が怖いですか、と。

*

怖いのは、
慌てて後悔することかもしれない。

大切な人と、
お別れすることかもしれない。

ほかの何かかもしれません。

怖さの下には、
その人が大切にしているものがある。


*

もし今、あなたが
検査の結果を待っているのなら。

少しだけ、自分に尋ねてみてください。

私は、何が怖いんだろう。

答えは、すぐに出なくてもかまいません。
 

 

 不安の正体


突然ですが、この絵本知ってます?

『ブラック・ドッグ』
レーヴィ・ピンフォールド 作
/片岡しのぶ 訳

 

ブラック・ドッグ



不安や恐れの本質を
教えてくれる絵本です。
怖がるほど犬が大きくなり、
向き合うと小さくなるというお話です。

これは秀逸だなぁって思います。

もしあなたが絵本好きなら、
手にとって見てください。

そして、この動画!
霧の中のハリネズミ(10:23)
 

 

 


とても美しくて、ユーモラスで
クスッと笑ってしまいます。

怖さを、少し離れたところから
眺めさせてくれます。

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親のために頑張っても

頑張っても苦しいのは、

優しさが足りないからでは

ありませんでした。

 

はじめから、

できないことを

しようとしていたんです。

 

……そう気づくまで、

私はずいぶん長く

遠回りをしました。

 

「まだ足りない。」

 

ずっと、

そう思って生きてきました。

 

母をもっと安心させられたら。

もっと喜ばせられたら。

もっと優しくできたら。

 

そうすれば、

きっと母は満たされる。

 

本気でそう信じていました。

 

でも

今ならわかります。

 

足りなかったんじゃない。

 

私は、

子どもにはできない役目を

引き受けようとしていたんです。

 

 

 

 

母を支えることが、私の役目になっていた

 

 

今振り返ると、

当時の私はどこかで

「人より上に立ってはいけない。」

そんな感覚を持っていました。

 

職場でも、

友人との間でも、

 

前に出るより、

誰かを支える。

 

認められるより、

人に譲る。

 

それが自然でした。

 

なぜなら、

私には

「母を支えるのが自分の役目」

という感覚があったからです。

 

子どもの頃、

母は精神的に不安定でした。

 

 

 

私は、

親の喜ぶ顔が見たい。

負担をかけたくない。

そう思っていました。

 

だから、

もっと優しく。

もっと気を遣って。

もっと話を聞いて。

 

母の気持ちを軽くしてあげたい。

そんなふうに頑張っていました。

 

35歳で病気になった頃も、

その生き方は変わっていませんでした。

 

人のために生きる。

自分がしっかりしなければ。

そんな思いで走り続けていました。

 

 

 

どれだけ注いでも、満たされない

 

 

でも……

もう限界だったんです。

 

どれだけ頑張っても、

どこか満たされない。

 

まるで、

穴のあいたバケツに、

水を注ぎ続けているような感覚。

 

もっと注げば、

きっと満たされる。

 

そう思って、

私は注ぎ続けていました。

 

でも、

終わりはありませんでした。

 

 

 

 

当時の私は、

「私の優しさが足りないんだ。」

そう思っていました。

 

もっと頑張ればいい。

もっと理解すればいい。

もっと愛せばいい。

 

でも……

違ったんです。

 

足りなかったんじゃない。

 

はじめから、

無理なことをしようとしていたのです。

 

私は、

他人の感情を満たそうとしていました。

 

でも、

誰かの心を満たすことは、

子どもにはできません。

 

大人になった今でも、

誰にもできません。

 

 

 

自分を消さなくても、人は大切にできる

 

 

他人の感情を満たすことは

誰にもできない。

だから、

あなたができなかったとしても、

当然です。

 

でも、ここで一つ

疑問が湧いてくると思うのです。

 

じゃあ、

私はどうすればよかったんだろう。

 

親を大切にしたい。

その気持ちは本物です。

 

今でも、その気持ちを

否定するつもりはありません。

 

でも、

自分を消してまで、

誰かを満たそうとしなくていい。

 

そのことを知ってから、

私の生き方は少しずつ

変わっていきました。

 

では、

何を手放して、

何を大切にすればいいのでしょうか。

 

私が少しずつ手放してきたことを、

3つ、お話しますね。

 

 

私が最初に手放したこと
「親を満たすことが私の役目」
という思い込み

 

 

一番最初に気づいたのは、

私はずっと、

「母を楽にすることが、自分の役目」

だと思って生きてきたということでした。

 

私だけではありません。

セッションでも

 

*親を守らなくてはいけない。

*親をかばわなくてはいけない。

*親の悔しさを、自分が晴らすんだ。

そんな感覚を抱えてきた方のお話を、

よくお聞きします。

 

こういう強くて純粋な決意を

【幼児決断】といいます。

 

私も、この決断に

長い間、支えられていました。

 

だから

悪いものではありません。

 

でも、

その土台に

 

「親の感情を楽にすることが、

自分の存在価値なんだ」

という思い込みがあると、

いつか苦しくなります。

 

だって、

他人の感情は、

自分ではコントロールできないからです。

 

親を大切に思うことと、

親の感情の責任を背負うことは、

本当は違うことだったんですよね。

 

 

 

次に手放したこと
「自分が我慢すればいい」
という考え

 

私は今でも、

人を喜ばせることは好きです。

 

誰かが笑ってくれると、

やっぱり嬉しい。

 

でも、

昔の私は、

人を喜ばせるためには、

自分が我慢しなくちゃいけない

と思っていました。

 

だから、

譲る。

遠慮する。

前に出ない。

自分より相手を優先する。

 

そんなことが、

当たり前になっていました。

 

でも、

ある時ふと思ったんです。

 

私が苦しそうな顔をしながら

差し出した優しさを、

相手は本当に受け取りたいんだろうか?

 

優しさは自分を消すことではありません。

 

自分も満たされながら、

人を大切にすることも、

できるんですよね。

 

 

 

最後に取り戻したこと
自分の心の声

 

これは、

手放したことではありませんが・・

 

一番難しかったのは、

自分の気持ちに気づくことでした。

 

ずっと誰かを優先してきた私は、

自分が何を感じているのか、

わからなくなっていたのです。

 

しんどい。

もう無理。

本当は休みたい。

 

そんな声があっても、

聞かないようにしていました。

 

そうしないと、

水を運び続けられなかったから。

 

でも、

今振り返ると、

一番助けを必要としていたのは、

母ではなく、

その声を押し込めていた

私自身だったんですよね。

 

だから今は、

まず自分の身体に聞いてみます。

 

私はどう感じている?

 

本当は何がしたい?

 

そうやって、

少しずつ自分を裏切らない

練習をしています。

 

 

 

 

 

優しさを、自分にも向けてあげよう

 

親を喜ばせたい。

その優しさは、

これからも大切にしていい。

 

でも、

あなたが自分を消してまで、

誰かを満たそうとしなくていいのです。

 

あなたの心も、

同じように大切だからです。

 

自分を大切にすることで、

自分も喜びながら、

人も喜んでくれる。

 

そんな循環を、

これから少しずつ

育てていきたいですね。

 

 

 

 

自分の身体に、

聞いてみてください。

 

私は今、

どう感じている?

 

本当は、

何がしたい?

 

その小さな問いかけが、

あなたを裏切らない

練習の、

はじめの一歩になります。

 

 

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親孝行したい。

親を大切にしたい。

そう思っているのに、
なぜか苦しい。

会えば、どっと疲れる。

断れない。

自分のことより、
親のことを、優先してしまう。

――どうしてなんだろう。

     *

もしかしたら、

「お母さんがかわいそう」

の、その先に、
もうひとつのものが
あるのかもしれません。

「私が、なんとかしなきゃ」

「何かしてあげなきゃ」

という、気持ちです。

     *

今日は、
この「何かしてあげなきゃ」が

どうやって生まれて、
どうして大人になった今も
続いてしまうのか。

そこを、少し深いところから
見ていきたいと思います。

 

 

 

 まず、こんな感覚はありませんか

 

◎親のことを、かわいそうだと思っている

◎親孝行したいのに、なぜか苦しい

◎いつも我慢して、自分を後回しにしてしまう

◎自分の中の怒りや恨み、秘めた攻撃性に、気づいている

ひとつでも、うなずいてしまったなら。

その理由が、今日で少し、
見えてくるかもしれません。


 

 「かわいそう」に、
もうひとつ加わるもの

 

子どもの頃、
親をかわいそうだと感じていた。

そこに、
もうひとつの感覚が加わることがあります。

「もしかして、自分のせいかもしれない」

親が不機嫌なのも、
親が不幸そうなのも、
自分が悪い子だからかもしれない。

とくに、

・親が、まわりの人を責める
・親が、感情的に爆発する
・あなた自身が、責められた

そんな体験があると、
子どもは親の辛さを、
「自分のせい」と思い込みやすくなります。

本当は、
子どもに、大人の辛さの責任なんて、
ないのにね。

 

 

 そして、ひとつの結論ができる

 

 

「かわいそう」+「自分のせい」


このふたつが重なると、
子どもの中に、
ひとつの結論ができあがります。

 

 

 親のために、
 何かしてあげなきゃいけない。


もう、必死で。
それが自分の生きる意味だ、
というくらいに。

     *

この「何かしてあげなきゃ」が
当たり前になると、

あなたの行動の基準は、
いつも"親"になります。

そして、ここからが、
今日いちばん伝えたいところです。

 

 

 その基準は、
大人になっても消えない

 

親元を離れても、
その基準は、消えないんです。

相手が変わるだけ。

・結婚しても、家のことが中心で、
 自分を後回しにしてしまう

・仕事でも自分を後にして、
 気づけば疲れきっている

「この人のために」が、
いつも先に立って、
自分は、うしろ。

さらにこれが長年続くと、
飲み込んだ気持ちが、
怒りや恨みや、
秘めた攻撃性になっていくこともあります。

自分でも、持て余すような感情として。



 

 

 これは、性格の問題じゃない

 

ここで、大事なことを言いますね。

これは、
あなたの性格の問題じゃないんです。


その苦しさには、
安心して"反抗期"を
経験できなかったことが、
関係しているのかもしれません。

意外に思うかもしれません。
でも、ここがこの話の、
大事なところなんです。

     *

反抗期って、
なぜ必要か、考えたことはありますか。

あれは、
精神的に自立するための時間です。

子どもが、
「親の価値観」から脱皮して、
「自分の価値観」をつくっていく。

これが大切なのか。
自分は、何を望んでいるのか。

それを知って、
手に入れる方法を学んでいく。

"自分軸"ができる、
というのは、そういうことなんです。

     *

でも、

お父さんがかわいそう。
お母さんがかわいそう。
+
自分のせいかもしれない。
↓
親のために、何かしてあげなきゃ。

 

このプロセスを歩いてきた人は、
反抗期を、
充分に経験しづらかったかもしれません。

自分の価値観を育てる時間を、
親を守ることに、
使ってきたのだとしたら。

大人になった今も、
「自分がどうしたいか」より
「相手のために」が、
先に立ってしまう。

それは、
あなたが弱いからでも、
冷たいからでもありません。

ただ、その順番を、
まだ生きていないだけなのかもしれません。



 

 

 ここから、ほどけていく

 

じゃあ、どうしたらいいのか。
3つだけ、置いておきますね。

① あなたは、自由に生きていい

まず、
「かわいそう」とがんばり続けている
小さなあなたを、
解放してあげること。

自由に生きていい。
あなたの人生を、生きていい。


② 「自分のせい」を、見直す

深いところで、
自分を責め続けている人は多いです。

その感覚に、そっと触れながら、
「それって、本当のこと?」
「あなたが悪いんじゃ、ないよね?」
と問い直していく。

③ あなたの感情も、ニーズも、大切

親のために、と生きてきた人は、
自分を後回しにするのが癖になっています。

でも、本当は。
あなたの感情も、
あなたのニーズも、
とても大切なものなんです。

     *

ひとつだけ、
覚えておいてほしいことがあります。

これを、
頭で理解するだけでは、
なかなか変わりません。

「自分を大切にしていいんだ」

そう、
頭ではわかっている人が、
本当にたくさんいます。

変わっていくのは、
それを"体で"感じられたとき。


あぁ、私も、
大切にされていいんだ。

そんなふうに、
体のほうがゆるむ瞬間がきたとき。

何かが、
静かにほどけはじめます。

     *

その"ほどき方"を、
親との関係を頭ではなく
身体からほどいていく、
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もっと詳しく読みたい方へ。
この話のもとになった記事は、こちらです。

▼親孝行したいのに苦しい…あなたの心も大切にするために

今日の言葉が、
あなたの中の何かに、
そっと触れていたら、うれしいです。

 

 



「お母さんがかわいそうだから」

そう思って、
自分のことを後回しにしてきた。

もし心当たりがあるなら、
今日の話は、
あなたのお役に立つかもしれません。

 

 

 

「かわいそうなお母さん」のそばで

 

親には、いろんなタイプがあります。

その中に、
ちょっと見えにくいタイプがあります。

強い配偶者のもとで抵抗できず、
子どもに愚痴をこぼす。

「かわいそうなお母さん」。

そのそばで、
子どもがずっと、
その親をケアし続けている。

     *

そういう親には、
いくつか共通することがあります。

子どもに、罪悪感や同情心を
起こさせてしまう。

波風が立つことを、恐れる。

そして――自分や子どもを守るために
立ち上がることが、できない。

『不幸にする親』を書いた
ダン・ニューハースは、
そんな親のことをこう呼びました。

「責任を果たせない親」。



 

 

それ、役割が逆なんです

 

ここで、ひとつだけ
気づいてほしいことがあります。

それ、役割が逆なんです。

本当は、親が子どもを守る側。

なのに、いつのまにか
子どもが親を守る側に
なっている。

     *

三つ、問いかけさせてください。

 

一つ目|お母さんは、いつも
具合が悪そうじゃなかったですか。

 

しんどい、不安、鬱っぽい。
「味方でいてほしい」。

そんな言葉や空気を、
いつも受け取っていませんでしたか。

     *

 

二つ目|お母さんを
守らなきゃと、思っていませんか。

 

そばにいて、ケアして、
癒そうとして。

それが当たり前に
なっていませんか。

小さな子どもが、
親を守り続ける。

やっぱり、逆なんです。

     *

 

三つ目|子どものころ、
あなたを守ってくれた人はいましたか


大人と子どもでは、力が違います。
大人が子どもを守るのが、自然です。

厳しい言葉を向けられたとき、
子どもは簡単に
「私が悪い」と思ってしまいます。

優しくて、親思いだから。

そして――
親に守ってもらわなければ
生きていけない子どもにとって、

「お母さんが悪い」と思うより、
「私が悪い」と思うほうが、
その関係を保てることが
あるからです。

本当はそのとき、

 あなたが悪いんじゃない。
 大人に責任があるんだよ。

そう言ってもらう
必要があったんです。

 

 

 

 

それは、あなたのせいじゃない

 

ずっと、人にゆずってきた。

怒りを、うまく出せなかった。

気持ちが、ほどけたことが
なかった。

それは、あなたのせいじゃない。

小さいころに引き受けた役割を、
今もひとりで、
続けているだけなんです。

     *

親を優先して、自分は後回し。

でも、あなた自身の人生は、
どこへ向かうんでしょう。

あなたを一番大切にできるのは、
実は、あなた自身なんです。


まずは、そっと
想いを馳せてみてください。

 本当は、何にNOを
 言う必要があったのか。



 

 

私自身も、同じことをしていました

 

実は私自身も、
母との関係で
同じことをしていました。

そのイビツさに
気づかせてくれたのは、
旦那さんの、厳しい指摘でした。

「なんてヒドイこと言うの」と
思ったこともあります。

でも、その指摘が
母との関係を変えていく、
大きなきっかけになったんです。

頭で「変わろう」と
決めたわけではありません。

自分を後回しにしなくても
だいじょうぶだと、
少しずつ、身体でわかっていった。

そんな感じでした。

     *

「私ばっかり」と感じるとき。

もしかしたらそれは、
あなたの中に残っている
小さな「もう無理」という声かもしれません。

ずっと誰かを優先してきた人ほど、
自分の限界に気づくのは、
とても遅くなります。

だからまずは、

 私、ずっと頑張ってきたんだな。

そこからで、いいと思うんです。
 

 

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がんと診断されたあと、
まわりの人から距離をおかれている、
と感じたことはありませんか。

みんな、優しいんです。
気遣ってくれている。
そして、何も聞かれない。
病気の話題を避けてくれる。

そうされると、
こちらも言いにくくなります。
心配をかけたくないから。
相手を困らせたくないから。

気がつくと、
いちばん大きなことについて、
誰とも話していない。

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫?」が言えなくなる

 

前回、
映画『急に具合が悪くなる』について
書きました。

今日はその原作の中で、
心に響いたもうひとつの話を
書きたいと思います。

 

 

 

原作は、
宮野真生子さんという哲学者と、
磯野真穂さんという医療人類学者が
交わした二十通の往復書簡です。

宮野さんは乳がんの転移を抱えていて、
書簡が終わった直後に亡くなりました。

その書簡のなかで、
磯野さんがこんなことを書いています。

病気の人にかける“定型文”が、
使えなくなってしまった、
と。

早く良くなるといいね。
お大事に。
無理しないで休みな。
大丈夫?

どれも、悪意のかけらもない
優しい言葉です。

でも、
来年まで生きているだろうか?
と問わざるを得ない相手に、
「早く良くなりますように」とは言えない。

モルヒネで痛みを抑えている人に、
「大丈夫?」と聞く意味も分からない。

言葉に詰まる。

そう磯野さんは書いています。

 

 

なぜ、言葉に詰まるのか

 


磯野さんは、自分の内側を
正直に書いています。

相手を傷つけずにすむのか、
という恐れ。

そして、もっとわがままなことに、
傷つけたという事実で
自分が傷を負うことへの恐れ。

もしかすると、
後者の方を
より恐れているのかもしれない、と。

自分が大事な
低俗な人間なので、
と磯野さんは書いています。
 

 

相互虚偽——
二人とも、相手を思っている

 

そして、これは
片側だけで
起きていることではありません。

言葉をかける側は、
拒絶されることを恐れて口をつぐむ。

病気を持つ側は、
相手の負担になるのではないかと
気遣って口をつぐむ。

結果、言葉は固まってしまいます。

大きな問題がそこにあるのに、
互いにないふりをする。

社会学者のグレイザーとストラウスは、
病院で死がどう扱われるかを調査して、
この状態に名前をつけました。

相互虚偽。

嘘をついているつもりは、
どちらにもありません。

むしろ二人とも、
相手のことを思っています。

それでも、相手を思って黙ったぶんだけ、
二人とも孤独になっていく。

*

これ、
優しさが足りないから
起きるのではないんですよね。

優しいから起きる。

だから、誰も悪くない。
誰も責められない。

責められないぶん、
どうしていいか分からないまま、
その状態が続いていきます。

 

 

 

それでも、言葉を投げる

 

磯野さんは、往復書簡の中で
その暗黙のルールを
踏み越えることにしました。

宮野さんの病気のことを
避けて話すのは、とても難しい。

宮野さんときちんと言葉を交わした
先の風景を見てみたい。

そう書いています。

そして、
死について話していいか
と切り込みます。

*

このとき磯野さんは、
自信を持っていたわけではないと思います。

宮野さんが東京にきたとき
カバン持ちのオファーを3回もして
こっそりと宮野さんのかばんを持って
重さを確認したりしている。

どう関わっていいかわからない。

そんな自分の気遣いを
“滑稽な形の模索”とすら言っています。

死について
話していいかと切り込んだものの
投げたボールがストライクゾーンに
入っているかは分からない。

打ち返すどころか、
ぶつけてしまう懸念を感じる、と。

それでも投げる。

そして、こう締めくくります。

宮野にしか紡げない言葉を記し、
それが世界にどう届いたかを見届けるまで、

絶対に死ぬんじゃねーぞ。

*

乱暴な言葉です。

丁寧でもないし、
配慮に満ちてもいない。

でも、この言葉には
磯野さんの言葉にならない想い
が詰まっています。

そして、この言葉は届きました。

宮野さんは、これを受け取って、
「うん、わかった」と約束します。

 

 


これからもっと病状は悪くなるかも
しれないけれど、と書きながら。

そしてそれを、
単純に「死なない」ことの約束ではない
と言います。

そんな言葉を投げかけてくれた
磯野さんとの間の、信頼なのだ、と。

*

“正しい”言葉ではなかった。

“上手な”言葉でもなかった。

むしろ、ためらいながら、
これでいいのか分からないまま
投げられた言葉でした。

それが、届いた。
 

 

言葉になる前のところに触れる

 

セラピストとして、思うことがあります。

セラピーというのは、
うまく話す場所ではありません。

「本当は怖い」と言えなくてもいい。
何を話したいのか、
自分でも分からなくてもいい。

言葉になる前のところに、
一緒に触れていく。

そういう場所です。

だから、
上手に話せる人だけが
救われるわけではないんです。

*

うまく言わなきゃ。
傷つけないように。

そう思うほど、言葉は出てこなくなります。

そしてその配慮が、
かえって、病を抱えている人を
一人にしてしまうことがある。

*

磯野さんは

自分が傷つくかもしれない、
相手を傷つけるかもしれない。

そのどちらも引き受けて
踏み込みました。

宮野さんが支えられたのは、
たぶんそこだったと思います。

 

 

黙ることも、優しさでした

 

言わなかったのも、聞かなかったのも、
相手を思ってのことでした。

だから、それを責める必要はないと思います。

ただ、その優しさに、
もう少しだけ率直さが加わったら。

うまく言えなくていい。
ためらったままでいい。

「本当は聞きたかった」
「本当は話したかった」

それを、そのまま口に出してみる。

たぶんそれだけで、
少し楽になれるんじゃないかと思うんです。

*

そう読んで、
胸のあたりが少し
動いた方もいるかもしれません。

逆に、いや、私は話したくない、
と感じた方もいるかもしれません。

どちらも、大切な感覚です。

話すか話さないかを決める前に、
自分の中に何があるのか。

まずそこに気づいていることの方が、
たぶん先です。

*

原作には、一枚の写真が載っています。

夜の、雨に濡れた道。

そこに、こう添えられていました。

 

 


たとえ夜でも、たとえ雨でも、ラインは引ける。

当たり前のことなんです。

でも、その当たり前が、いちばん難しい。
 

 

 

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