ニューヨークのピアニストのアル・ロバーツは恋人の歌手スー・ハーヴェイを訪ねて、ロスアンゼルスまでヒッチハイクをしていた。
チャールズ・ハスケルという青年の車に乗せてもらったが、アルが運転している時にチャールズは死亡した。
アルはチャールズの死体を草むらに隠してロスアンゼルスに向かった。途中でヴェラという女性を乗せた。
しかしヴェラはチャールズのことを知っておりアルを脅した。さらには金持ちのチャールズの父親が病気とのニュースを読んで、遺産を奪い取る計画を強要した。
製作:1945年,脚本:マーティン・ゴールドスミス,監督:エドガー・G・ウルマー
■ はじめに
◆ 登場人物(キャスト)
アル・ロバーツ(トム・ニール) ピアニスト
スー・ハーヴェイ(クラウディア・ドレイク) アルの恋人、歌手
チャールズ・ハスケル・Jr(エドマンド・マクドナルド)
ヴェラ(アン・サヴェージ)
(ネヴァダの)ダイナーの経営者(ティム・ライアン)
ホリー(エスター・ハワード) (カリフォルニアの)ダイナーのウェイトレス
ジョー(パット・グリーソン) トラック運転手
中古車ディーラー(ドン・ブロディ)
◆ 補足
ダイナー:幹線道路にある軽食レストラン
本作はいわばアン・サヴェージの代表作と言える映画。彼女はちょっと見ると悪役ばかりしているように見えるが、むしろコメディ映画に多く出演している。けっこう面白いので、見ていただきたい。
■ あらすじ
◆ アルとスーは恋人、しかしスーはロスに行く
アルとスーはニューヨークのクラブで働いていた。アルはピアニスト、スーは歌手。
貧乏ではあったが、二人の仲はなんの問題もなかった。しかしスーは「もっといい仕事がしたい。ロスアンゼルスに行く」と言った。
アルは反対したが、スーはロスアンゼルスに出発した。しばらく結婚はお預けである。
アルの気持ちは次第に陰鬱になってくる。スーと電話で話したが、スーはまだ良い仕事が見つからずにウェイトレスをしているとのこと。
アルもロスアンゼルスにいくことを決意する。しかし金がないので、ヒッチハイクで行く。
◆ ロスアンゼルスに行く車に乗せてもらった
しかしヒッチハイクはなかなか大変。
犯罪の恐れがあるのでなかなか乗せてくれない。逆にアルが危険に会う可能性もあった。少しの間乗せてもらっても、なかなか距離が稼げない。
ネヴァダでオーブンカーに乗った男性に乗せてもらった。ロスアンジェルスに行くらしいので、ちょうど都合がよい。
しばらく何も話さないで走っていった。しかし少しずつ話をし始めた。
名前はチャールズ・ハスケル。16年前に家出して親とは音信不通とのこと。
ハスケルの右手に傷があるのを見た。新しい傷。「前に乗せた女性にやられた。車から放り出した」とのこと。
ダイナーの前で止まった。ハスケルは食事をするが、アルは「金がないので外で待ってる」と言うと、食事を奢ってくれた。
支払いの時は大きな金で払って「釣りはいらない」と言っている。
◆ ハスケルが死亡したっ!
運転を代わってアルが運転している。ハスケルは眠っている。
雨が降ってきたので、オーブンカーの屋根をつけなければならない。車を止めた。
しかしハスケルは動かない。仕方がないので自分でやることにする。降りて左側のドアを開けると、ハスケルが車から落ちた。
ハスケルが死亡しているっ!雨が激しく降っている中で考えた。「自分が疑われてしまう」。
ちょうど道路の脇は斜面になっている。木が茂っていて陰がある。
アルはハスケルの体を引っ張って斜面の下まで運んだ。アルは金も免許証もない。ハスケルのポケットから、金と免許証を貰った。幸いアルとハスケルは背格好や顔がわりと似ている。
さらに自分の服は着古したボロボロなので、ハスケルのものを貰うことにした。そして自分の荷物は捨てた。すなわちアルはハスケルとなった。
◆ 女性を乗せた
そのまま走って行ってカリフォルニア州との州境にきた。ハスケルの免許証を見せた。無事通過。
「仕事をするなら許可証が必要」と言われて「短期滞在」と答えた。
モーテルに泊まった。さすがにハスケルの夢を見てうなされた。朝になって掃除に来た女性が心配した。
少しの間はしようがないが、車を捨ててハスケルの振りを止めにしようと思った。
ガソリンスタンドに来た。大きなバッグを持った女性がいた。目が合ったので「乗せてやろうか?」と誘った。
わりと不愛想だが寄ってきた。礼も言わないで座った。話しかけてもわりと不愛想。
名前はヴェラ。「ロスまで行く」と言うと「そこまで乗せて行って」と言う。素性を聞いたが、わりとあいまいな返事をする。
そのうちに寝てしまった。
◆ 脅迫された
ヴェラは突然起き上がった。アルを睨みつけて言った。「死体はどこなの?これはハスケルの車でしょ?」「俺がハスケルだ」。
一呼吸おいて「アンタ、まずいことになったね。私はルイジアナからハスケルの車に乗ったんだよ」。ヴェラがハスケル引っかき犯のようである。
事情を話して「ハスケルは死んだ」と言ったが信じなかった。「何をしたの?」「俺は殺してない」「警察はそうは思わない。私が通報したらどうなる?」。アルは答えに窮した。
ヴェラは考え直して「通報しても何も得はしないわね。懸賞金もかかってないみたいだし」と言う。「ありがとう」と言うと「礼を言うのは早いよ」としぶとい。
殺人を否定すると「彼が勝手に落ちて、お金までくれたのね」。ここまで展開してアルは絶体絶命の立場になったことを理解した。
「財布を見せてちょうだい。水曜に西海岸で3000ドルをかけると言っていた」。「これからは常に一緒に行動する」と咬みついて離さない。
「車を捨てる」と言うと「殺人犯なのに頭が悪いのね、放置車両は警察が捜査するのよ、車は売るべきよ」。
◆ 車を売る
アルは、せっかくスーの近くまで来たのに、見込みがなくなった。
ヴェラと「ハスケル夫妻」で部屋を借りた。
「寝室は私が使うからね」とアルは折り畳みベッドに寝ることになった。ヴェラは「朝、消えてたら警察に通報する」と言って寝た。
その後、スーに電話をかけた。スーが出たが何も話せずに電話を切った。
朝になってヴェラは昨日と同じく高圧的だったが、メイクをして「私きれい?」とニッコリした。しかしアルは黙っていた。
ハスケルの車を売ることにした。2000ドル目標。ヴェラは「毛皮のコートが欲しい」。
中古車ディーラーに行った。1600ドルと言う査定。粘って1850ドルになった。
アルが事務所に入ってサインをしようとした時に、ヴェラが慌てて入ってきた。「車は売らない」。ヴェラはアルを強引に連れ出した。
◆ ハスケルの父親の財産を貰う
ヴェラは新聞を見せた。「チャールズ・ハスケルが病気。死亡した場合、財産は息子のチャールズ・ハスケル・jrに」。もう長くはない命らしい。二人が知っているハスケルが息子らしい。1500万ドルの財産。
「金脈を掴んだ。死んだら名乗り出て財産を貰う」。アルはハスケルの免許証を見せても通用したくらいでハスケルと似ている。
二人は「やらない!」「やる!」を何度も繰り返した。
「臆病者、あんたはハスケルと背格好が似てる」。それでも断ると「警察に通報する。必ずやらせる。死亡記事がでたら、それで知ったふりをして登場すればいい」と絶対に引き下がらない。
◆ ヴェラも死亡した
ホテルに帰っても、相変わらず溝は埋まらなかった。次第に険悪な雰囲気になってくる。
ヴェラは「警察に通報する」と電話機を持った。ヴェラの目的から言って本気とは思えなかったが、電話機を奪った。
しばらく睨みあい。アルが窓を閉めようとしたところ、ヴェラは電話機を抱えて寝室に入ってカギをかけた。
アルは外から電話機のコードを引っ張った。しっかりと引っ張った。しかしヴェラは反応しない。手ごたえがなんかおかしい。
しばらくたったので、ドアを蹴飛ばして何とか寝室に入った。ヴェラの首にコードが巻き付いていた。
ヴェラは死亡した。ハスケルの時と違ってヴェラを殺したのは明白である。
◆ アルはアルに戻った
アルはハスケルであることを示す品を持たないでホテルを出た。五年間は身を隠すつもりである。
新聞にはヴェラの死亡記事が掲載され、容疑者はハスケルと報道された。
アルがハスケルとして捕らえられることもありえないわけではないが、とりあえずは危険を避けられた。
アルはホテルを出て放浪した。
■ 出演作
◆ アン・サヴェージ
(1949)悪魔の揺り籠/シルヴァーシティの悪魔/Satan's Cradle
(1946)裏切った女/Renegade Girl
(1945)殺人への謝罪/Apology for Murder
(1946)裏切った女/Renegade Girl
(1945)恐怖の宝物/Scared Stiff/Treasure of Fear
(1945)死体を隠せ/Midnight Manhunt
(1943)死体と三人の女:危険な夜/One Dangerous Night