■ Cattle Empire
ジョン・コードは誤解からリンチを受けたが、彼の牧童としての腕を評価する牧場主ラルフから助けられた。
ラルフともう一人のガースから牛の大群を遠隔地に運んでいく仕事を引き受けた。
旅の中でラルフの牧童たちとは次第に誤解が解けてきた。一方、ラルフ側とガース側が対立する事態となった。
製作年:1958、監督:Charles Marquis Warren、脚本:Daniel B. Ullman、Endre Bohem、Eric Norden、Charles Marquis Warren
■ はじめに
◆ 登場人物(キャスト)
ジョン・コード(ジョエル・マクリー) 牧童、主人公
ラルフ・ハミルトン(ドン・ハガティ) 牧場主、盲目
ジャニス・ハミルトン(フィリス・コーテス) ラルフの妻
ダグラス・ハミルトン(ビング・ラッセル) ラルフの弟
サンディ・ジェフリー(グロリア・タルボット) ジョンの幼馴染
トム・ジェファーソン・ジェフリー(Paul Brinegar)
ジョージ・ワシントン・ジェフリー(Hal K. Dawson)
ガース(リチャード・シャノン) 牧場主
邦題は「峡谷の対決」となっているのだが、内容を表しておらず、またいかにもありきたりである。
グロリア・タルボットはキャスト紹介の二番目であるが、取り立てて活躍はしない。残念。しかし彼女は特徴がある女優である。
本作は当時の映画にしては画面幅が広く、人物間の距離を離して撮影しており違和感がない。例えば最後の画像を参照。
◆ ポイント
本作はさっと見ると、どこがポイントなのか分からない。
西部劇にもいろいろある。例えば、善と悪の対決があり、それが臨界点に近づいて、最後には銃撃戦があり善が勝つ。最後の戦いがポイントである。本作は確かに銃撃戦があるが、ポイントはそこではない。
牛の大群を連れていく(Cattle Drive)過程で、ジョンは同行しているラルフ牧場の牧童たちに仕返しをしようと思っていた。一方牧童たちはジョンを信用していない。
しかしその過程で牧童たちはジョンのことを誤解していたことに気がついて、ジョンは、それを受け入れて、仕返しをする気持ちがなくなる。
両者のこの変化が本作のポイントになっている。このことはセリフでは語られずに、いろいろな出来事で自然と表現されるので、分かりにくくなっている。しかしここを理解しないと、本作を理解したことにはならない。
本作の最後の銃撃戦はストーリー的には不要である。でも銃撃戦がないと西部劇らしくないので。
■ あらすじ
◆ リンチされた
ジョン・コードは誤解を受けて捕らえられて、町の住民の前でリンチをされた。
縛られたまま、馬で地面を引きずり回された。住民たちはそれを見て喝采した。
そこに大牧場主のラルフ・ハミルトンの一行が馬車で通りかかった。弟のダグラス、妻のジャニスが一緒である。
ラルフは盲目であり、ダグラス、ジャニスから状況の説明を受けた。
ラルフは、このような事態の原因はジョンにあるとの理解であるが、取りあえずリンチを止めさせた。
住民たちは不満であるが、ラルフは当地の大牧場主なので、リンチは中止された。
◆ ジョンはラルフの依頼を断る
ラルフがジョンを助けた理由は、当地で最も有能な牧童だからであった。
まもなく牛の大群をサムターまで連れていく大事業が開始される。それにはジョンの力量が必要である。注、行き先は「Fort Sumter」となっているが「砦」ではないのだろう。地名が単に「Fort Sumter」なのだと思われる。
このように牛の群れを連れていくことを「Cattle Drive」と言う。
ラルフはジョンにCattle Driveの指揮を依頼した。しかしジョンは断った。
◆ Cattle Driveの敢行
もう一方の大牧場主ガースがジョンに近づいてCattle Driveを依頼した。ジョンは、これを引き受けて、さらにラルフにもCattle Driveを引き受ける返事をした。
すなわちジョンの指揮の元にラルフ牧場の牧童たち、ガース牧場の牧童たちが、両方の牧場の牛の大群を引き連れていく。ラルフと妻と弟も同行している。
途中でサンディ・ジェフリーの一家と出会った。サンディは駆け寄ってジョンに抱き着く。ジョンはサンディが幼い時から知っている。彼らも一緒に旅をする。一方ラルフと年が離れているジャニスもジョンに惹かれているようである。
大部隊は荒野を通り川や谷を越えて進んでいく。いろいろな困難が降りかかるが、ジョンの適切な判断・指揮で困難を乗り越える。
◆ ラルフグルーブとジョンの和解
さて、ジョンがラルフの依頼を引き受けたのは、一つには自分をリンチしたことへの復讐である。ラルフ牧場の牧童たちもリンチに加担していた。ジョンは復讐の機会を狙っていた。
だがラルフ牧場の牧童たちは、ジョンが誤解を受けてリンチされたことを次第に理解する。
ジョンも彼らの理解を受け入れていき復讐心が薄れていく。
ついに両者は和解する。注、この和解は明示的に我々に示されるわけではない。あくまでも暗示的。
◆ 両グループの対立
しかしもう一つの問題が発生する。ラルフグループとガースグループの間でトラブルが続けて発生し、両者は対立する。
些細な問題が大きくなっていく。
ついにガースグループがラルフグループを襲撃する事態となる。ジョンを含めたラルフグループが迎え撃つ。
銃撃戦はラルフグループの勝利に終わり、再度両グループは目的地に向かって進んでいく。注、この銃撃戦はわりと簡単に終了する。先に述べたように本作は銃撃戦がポイントではない。
◆ ジョンは立ち去る
ついに目的地に到着した。ラルフとガースとの約束を果たしたので、ジョンは立ち去ることになる。
ジョンはサンディと再会を約束して、一人で去っていく。
■ 出演作
◆ ジョエル・マクリー
(1939)大平原/Union Pacific
(1941)サリヴァンの旅/Sullivan's Travels
(1944)西部の王者/Buffalo Bill
(1957)荒野の追跡/TROOPER HOOK
(1958)峡谷の対決/Cattle Empire
◆ グロリア・タルボット
(1957)ジキル博士の娘/The Daughter of Dr. Jekyll
(1959)腰抜け列車強盗/Alias Jesse James
(1960)ヒル女の恐怖/The Leech Woman
(1958)峡谷の対決/Cattle Empire