■ Private Hell 36
刑事のキャルとジャックは現金強奪犯の車を追いかけた。犯人の車は崖の下に落ちて犯人は死亡。
キャルは残されていた現金の一部を着服した。ジャックは注意したが、けっきょくそのままになった。ジャックにも責任が発生した。
上司は足りない現金の捜査を命じた。


製作年:1954、監督:ドン・シーゲル、脚本:コリアー・ヤング、アイダ・ルピノ


■ はじめに

登場人物(キャスト)
 リリー・マーロウ(アイダ・ルピノ) 歌手
 キャル・ブルーナー(スティーヴ・コクラン) 刑事
 ジャック・ファーナム(ハワード・ダフ) 刑事
 フランシー・ファーナム(ドロシー・マローン) ジャックの妻
 ミハエル警部(ディーン・ジャガー)

本作は日本語版はない(と思う)が(意味不明の)邦題がある。36はキャルが住んでいるトレーラーパークの車両の番号。
 


■ あらすじ

◆ 強盗事件

ロスアンジェルス。あるドラッグストアに二人組の強盗が入った。キャル・ブルーナー刑事は一人を射殺し、もう一人を捕らえた。

捕らえた犯人の所持品に50ドル紙幣があり、それは別の事件で奪われた莫大な金の紙幣であることが判明した。

さらに犯人を追及すると、あるクラブの歌手リリー・マーロウが客からティップとして貰ったものであった。

◆ 競馬場

リリーに聴取をすると、競馬狂いの客とのこと。たったそれだけの情報しかないが、リリーが顔を覚えているので、三人で競馬場で見張ることにする。

競馬場には膨大な数の客がくる。そんなに簡単に捕まえられるとも思えない。しかし三人は地道に競馬場に通った。

だがキャルにとっては「リリーと恋人になれた」という嬉しい収穫があった。

◆ 犯人発見っ!

駐車場で見張っている時に犯人をリリーが発見、大声とともに指さした。

犯人が乗った車はフルスピードで逃走。キャルとジャックが追跡した。

車は町を抜けて山道に入っていった。行き止まりの標識があった。犯人の車は、その標識を突破して崖下に落下した。

二人は駆け寄ったが、犯人は即死状態。

◆ キャルが札束をポケットに

そして車から落ちた金属の箱が空いており、中には札束があった。風に飛ばされそうになっていたので回収した。

そしてキャルが札束をいくつかポケットに入れたっ!それを見たジャックは大声で抗議した。

それをキャルは無視。ジャックは続けて抗議した。しかし警察の部隊が到着。そのままになった。

ここまでで44分/80分で半分が過ぎている。本作のポイントはここから。

◆ 二人の関係がギクシャク

けっきょく、札束隠匿の件は二人の間ではウヤムヤになってしまった。

そして上司のミハエル警部は、金がまだ全額発見されていないので、二人に残りを探すように指示した。

キャルとリリーがアツアツになり、ジャックの家でバーティを開いたりする。

しかし当然ながらキャルとジャックの間には、この問題が横たわっている。次第に関係がギクシャクしてくる。

ジャックは、不正をすぐに報告しなかったことから、自分にも責任がある。

ジャックが悩んでいるので妻との関係もおかしくなってくる。

キャルはリリーに「仕事を辞めて(メキシコの)アカプルコに行こう」と言うが、リリーは理由が分からない。

◆ 怪しい人物

キャルに電話がかかってくる。誰かは名乗らない。リリーはキャルの態度に不審なところを感じる。

ついにリリーはアカプルコに行くと約束する。

最後の場面はトレーラーパーク。キャルとジャックはパークに来る。キャルが使っている38番の車両。

キャルがカギを渡しジャックが中に入る。キャルは拳銃を抜いて待つ。

ジャックが出てくる。ジャックの後ろからキャルが拳銃を発射。ジャックは倒れて車の下に滑り込む。

誰かがキャルを撃つ。キャルは倒れる。誰かが出てくる。下半身しか映されない。

誰かがしゃがみ込んでジャックを助ける。ミハエル警部。ジャックの肩を叩いて、ジャックを許すことを示す。

もう一人が現れる。電話をかけた人物。警部は「自分の部下」と言う。
 


■ 補足

アイダ・ルピノは、現在の一般の人の記憶に残っている人物ではないが、一種の天才である。

かなり多くの映画(テレヴィを除いて78作)に出演し、当時としては珍しい女性監督でもある。映画の脚本も書き、歌も歌う。本作でも歌っているが「(1948)深夜の歌声/Road House」では歌手をしている。

アイダは三回結婚しており、20歳の時にルイス・ヘイワード。後はコーリア・ヤング、ハワード・ダフ。ダフとは長く30年以上暮らしている。

ヤングは俳優ではなく脚本家。ヤングとは会社を設立して離婚後も一緒に多くの仕事をしている。わりと暗い感じの映画ばかりだけどね。本作でも一緒に脚本を書いている。そして当時の夫であったダフと共演している。

ちなみに「(1953)二重結婚者/The Bigamist」では、脚本がヤング、監督はアイダ。アイダは出演もしており、当時のヤングの妻のジョーン・フォンテインも出演。アイダはジョーンの夫の浮気相手という、かなり怪しい関係である。
 


■ 出演作

アイダ・ルピノ
(1941)ハイ・シェラ/High Sierra
(1941)生きてる死骸(生きてゐる死骸)/Ladies in Retirement
(1948)秘境/Lust for Gold
(1952)危険な場所で/On Dangerous Ground
(1976)巨大生物の島/The Food of the Gods
(1948)深夜の歌声/Road House
(1953)二重結婚者/The Bigamist
(1942)夜霧の港/Moontide
(1954)地獄の掟/Private Hell 36

◆ スティーヴ・コクラン
(1948)ヒット・パレード/A SONG IS BORN
(1961)荒野のガンマン/The Deadly Companions
(1951)草原のウィンチェスター/Raton Pass
(1954)地獄の掟/Private Hell 36

◆ ハワード・ダフ
(1956)口紅殺人事件/WHILE THE CITY SLEEPS
(1955)復讐にかけた女/FLAME OF THE ISLANDS
(1954)地獄の掟/PRIVATE HELL 36
(1949)カラミティ・ジェーンとサム・バス/CALAMITY JANE AND SAM BASS
(1949)赤い渓谷/RED CANYON
(1948)裸の町/THE NAKED CITY
(1947)真昼の暴動/BRUTE FORCE

◆ ドロシー・マローン
(1946)三つ数えろ/The Big Sleep
(1949)セントルイス/South of St. Louis
(1949)死の谷/Colorado Territory
(1954)地獄の掟/Private Hell 36
(1956)風と共に散る/Written on the Wind
(1978)ピンナップ・ガール/裸の天使/Katie: Portrait of a Centerfold

◆ ディーン・ジャガー
(1953)聖衣/The Robe
(1954)地獄の掟/Private Hell 36
(1957)四十挺の拳銃/Forty Guns
(1958)誇り高き反逆者/The Proud Rebel
(1960)エルマー・ガントリー/魅せられた男/Elmer Gantry