■ Ladies in Retirement
メイドのエレンは、自分の二人の姉妹を荒野の中の屋敷に連れてきた。
しかし姉妹は異常な行動を繰り返し、エレンは主人のフィスク夫人との間で板挟みとなった。
エレンはフィスク夫人の後ろからロープを持って近づいた。
製作:1941年、原作:レジナルド・デナム、エドワード・パーシー、脚本:ギャレット・フォート、レジナルド・デナム、監督:チャールズ・ビダー
■ はじめに
登場人物(キャスト)
レオノラ・フィスク(イソベル・エルソム)
エレン・クリード(アイダ・ルピノ) メイド
エミリー・クリード(エルザ・ランチェスター) エレンの姉妹
ルイーザ・クリード(エディス・バレット) エレンの姉妹
ルーシー(イヴリン・キース) メイド
アルバート・フェザー(ルイス・ヘイワード)
ベイツ(クライド・クック) 御者
シスター・テレサ(エマ・ダン)
シスター・アガサ(クィーニー・レナード)
邦題は「生きてゐる死骸」となっているものもある。
■ あらすじ
◆ 荒野の中の屋敷
イギリスの田舎。周囲にはまったく家屋がない荒野に一軒の屋敷。わりと不気味な風景。
元は女優だというレオノラ・フィスク夫人が住んでいる。一緒にいるのはエレン・クリード、ルーシーという二人のメイド。
近くに女子修道院がある。近くとは言っても目で見えるようなところではない。
◆ エレンは姉妹を呼び寄せる
エレンにはロンドンに残してきた姉妹がある。エミリーとルイーザ。
二人が住んでいるアパートから手紙が来た。「二人が周囲に迷惑をかけるので引き取ってほしい」という内容である。
エレンはフィスク夫人に(「二人が少々おかしい」という事実は隠して)事情を話して「こちらに連れてきてもよいか?」と許可を得た。
許可をもらったエレンはロンドンに向かった。
◆ アルバート・フェザー
エレンが出発してすぐに、狙っていたかのようにアルバート・フェザーという男が現れた。わりと調子がよさそうな感じである。
フィスク夫人はアルバートが怪しい人物であると分かったけれども、むしろそこを気に入った。
フィスク夫人は、暖炉のそばの壁にある扉を開けた。中は空間であったが、その中から金庫を取り出して、アルバートに金を与えた。
アルバートは笑顔で立ち去った。
◆ エレンの姉妹
エレンが姉妹を連れて戻ってきた。
最初からエミリーとルイーザは一見しておかしいと分かる行動をする。
不気味に笑ったり、おかしな動作をしたり。我々も「これはすごいことになる」とすぐに分かった。
フィスク夫人も挨拶をしたとたんにおかしいと分かる。エレンはとりあえず二人を二階に上げた。
◆ 姉妹との攻防
二人のおかしな行動は初日にとどまったわけではない。
外から動物の死体や木切れを集めてきて屋敷の中に散らかす、奇妙な声を上げるなどなど。
二人に注意しても意味を理解しないので、フィスク夫人はエレンにクレームを向ける。
しかし面倒なことに二人は、この屋敷をとても気に入っていた。
エレンは二人とフィスク夫人の仲を取り持とうとするが、二人は、その努力さえも簡単にぶち壊してしまう。
二人は「他人に迷惑をかけている」ということをまったく認識していないようである。
◆ フィスク夫人を×××
二人とフィスク夫人の攻防は延々と続いたが、フィスク夫人は大事にしていたテーブルクロスを台無しにされたことを怒った。
フィスク夫人はエレンに最後通牒をした。
やっと静かになったある夜。フィスク夫人がピアノに向かって好きな曲を弾いている。
エレンはそっと後ろからフィスク夫人に近づいた。手にはロープを持っている。
◆ アルバートが再出現
エレンは「フィスク夫人が旅行に出た」ということにした。
さて先般のアルバートが現れた。どうも警察に追われているようである。
フィスク夫人には「エレンの親戚」と言っていたようだが、エレンはアルバートは知らなかった。
アルバートは屋敷に住み着いた。当然フィスク夫人の不在に気が付いた。またルーシーに取り入った。
◆ レンガでふさがれた穴
さてアルバートは、先般フィスク夫人が金を取り出すときに開けた暖炉のそばの扉を開けた。
なんとレンガの壁が現れた。前回の時は、そこには暗い空間があったのを目撃している。
アルバートは「これはどうしたことか?」と頭を捻った。
そしてエレンが見ていない時にレンガの壁を崩し始めた。
◆ アルバートが殺害を認識する
この間もエミリーとルイーザの異常行動は続いている。レンガの壁は依然として崩せなかった。
さてアルバートはエレンがフィスク夫人の筆跡をまねて、小切手を使っていることを突き止めた。
アルバートはルーシーも使って屋敷をを調べた。特にフィスク夫人のカツラが残されていたことに疑問を持った。
フィスク夫人が殺害されたと考えた。
◆ フィスク夫人の幽霊?
夜、エレンはピアノが演奏されている音で目が覚めた。フィスク夫人が好きな曲である。
エレンは階段をそろりそろりと降りて行った。確かにピアノの前に女性がいて弾いている。後姿はフィスク夫人のようでもある。
その女性が立ち上がってエレンを見た。
◆ ラスト
ルーシーが「アルバートが警察に追われている」ことを知ると、アルバートは姿を消した。
エレンは姉妹の肩に手を置いて話しかけた。二人にキスをした。別れのキスである。
二人はまったく事態を理解していないようである。いつもの通りにふるまっている。
エレンは二人を残して荒野の中を歩いて行った。
■ 補足
本作はアイダ・ルピノらしい不気味な映画である。邦題は内容とはちょいと違うが、異常に我々を引き付ける。
冒頭に近いところで、エレンがフィスク夫人に後ろからネックレスをつける場面がある。ここでは何もないが、この場面も不気味。
アイダは20歳くらいで結婚しており、本作当時はルイスと夫婦。
■ 出演作
◆ アイダ・ルピノ
(1941)ハイ・シェラ/High Sierra
(1941)生きてる死骸(生きてゐる死骸)/Ladies in Retirement
(1948)秘境/Lust for Gold
(1952)危険な場所で/On Dangerous Ground
(1976)巨大生物の島/The Food of the Gods
(1948)深夜の歌声/Road House
(1953)二重結婚者/The Bigamist
(1942)夜霧の港/Moontide
◆ エルザ・ランチェスター
「浮かれ姫君 Naughty Marietta (1935)」
「らせん階段 The Spiral Staircase (1945)」
「海の無法者/Buccaneer's Girl(1950)」
「剃刀の刃/The Razor's Edge(1946)」
◆ エディス・バレット
「ジェーン・エア/Jane Eyre(1944)」
◆ イヴリン・キース
「風と共に去りぬ Gone with the Wind (1939年)」
「大平原 Union Pacific (1939年)」
◆ ルイス・ヘイワード
「海賊船長/Captain Pirate(1952)」
「地中海の虎/The Pirates of Capr(1949)」
「海賊ブラッドの逆襲/Fortunes of Captain Blood(1950)」
「新モンテ・クリスト/THE RETURN OF MONTE CRISTO(1946)」
「恋に踊る/Dance, Girl, Dance(1949)」
「ハウス・バイ・ザ・リバー/House by the River(1950)」
◆ クライド・クック
「遥かなる我が子/To Each His Own(1946)」