真アゲハ ~第20話 茜ヶ久保 まゆ7~ | 創作小説「アゲハ」シリーズ公開中!

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「アゲハ族」
それは現在の闇社会に存在する大きな殺し屋組織。しかし彼らが殺すのは「闇に支配された心」。いじめやパワハラ、大切な人を奪われた悲しみ、怒り、人生に絶望して命を絶ってしまう…そんな人々を助けるため、「闇に支配された心」を浄化する。



茜「貴方が…“ハーメルンの笛吹き男”…!」

失踪事件の被害者達をようやく見つけたが、そこで真犯人の“ハーメルンの笛吹き男”に出会ってしまった

?「…貴方、どうして何ともないの?私が作ったお菓子を、カメラで撮ってないのね?」

茜「!…やはりそうでしたか」

茜は絵麻の前に立ち、守りながら話す

茜「栗栖様と日奈子様のおかげで分かったんです。条件はケーキを食べた者ではなく、“貴方が作ったケーキを写真で収めた者”が、『呼出ーコールー』の対象になると。ここにいる皆さんは、思い出のためやSNSなどに上げるために写真を撮っていた。それを利用して、失踪事件を起こしていた。被害者達のスマホにちゃんと写真が載っていたのに、全く気が付かなかった私達の盲点でしたよ。“ハーメルンの笛吹き男”…いえ!」

次の瞬間、茜はその人物の名前をあげた

茜「…甘利 芽衣華さん!」

甘利「…フフフ、よく分かったわね」

絵麻「甘利さん…!?貴方が…!?」

なんと、“ハーメルンの笛吹き男”の正体は甘利芽衣華だ
同時に、甘利がネクロだと言うことも知った

甘利「すごいわねあなた、私が犯人だと分かったなんて。でも残念だったわ、あの探偵事務所にケーキを送ったのに、誰も写真に収めなかったのね」

茜「依頼の時に、貴方が3つのケーキを渡したと斑目様から聞きました。でも本当は、事件に邪魔な私達も排除しようとしてたんですね。日奈子様が撮らずに全部食べてしまったのが、吉と出たのは幸いでした。しかし女性だったとは…笛吹き“男”と言う言葉に、すっかり騙されましたよ!」

絵麻「どうして…?どうしてこんなことをしたんですか…!?自分が作ったお菓子を利用するなんて…あんなにカラフルで綺麗なお菓子を楽しく作っていたハズなのに…」

甘利「楽しく作っていた?…ふざけないでよ!誰が好き好んであんな毒のお菓子を作るのよ!」

甘利の表情から怒りが露になった
目の奥には、黒い憎しみの炎が見える

絵麻「ど、毒…?」

甘利「『HAPPY!Bombom!』のケーキの特徴は知ってるわよね?カラフルでいかにも映えそうなお菓子…。でも実際は、着色料や乳化剤などの添加物がたっぷりと入った毒の塊よ!」

茜「…!」

甘利「私は普段から、身体の事を考えて食材や調味料を選んだ生活をしているの。いつかは無添加のお菓子を作っていこうと言う夢を持っていた。でも…私が就職した『HAPPY!Bombom!』はすべてのお菓子に添加物が入っていたのよ!しかもあんなに色が濃かったり、吐き気がするほどの青や紫で、あんなに摂取したらガンになるのが早まるだけなのに…!私は1度添加物の見直しをしないかって上に相談したわ!でもそれすら聞いてもらえなかったし、それだけで左遷の様に名古屋に飛ばされた!」

怒鳴り散らす甘利に、檻の中の被害者達はビクッとなる
目が合うと、さらに甘利は続けた

甘利「もっと許せないのは、そこにいる被害者達よ!見た目で判断して、映えるとか、写真を撮れば仲間になれるとか、そんな理由であんな毒の塊を食べて!食べるならまだしも、写真を撮ったらそれで終わりで、平気で捨てる奴もいる!私が作りたくもないお菓子を作っているのにそんなことをしてるなんて…!」

絵麻「あ、甘利さん…っ」

甘利「…絵麻さん、貴方が羨ましいわ。自分で店を持ち、無添加で栄養価が高いお菓子を販売しているんですもの。お客のために考えて作ってるなんて、パティシエの鑑よ。尊敬しちゃう。…それを値段が高いだの、太るからだの、地味だからだの、見た目で判断して食べない連中に心底腹が立ったわ。私からしてみれば、毒の塊を食べている方がよっぽど身体に悪いじゃない!」

「ヒィィッ…!」

甘利「もう辞めようと思ったわ。私も店を持って、自分で売れば良いと思った。その矢先に信号無視で事故に遭って、この能力を手に入れたの。最初は私のところに人が集まってきて驚いた。でもそんな時に、私の耳元で悪魔が囁いたの。“この能力で復讐しろ”ってね」

茜「そんな理由で、たくさんの人達をこんなところに閉じ込めるなんて…!」

甘利「それも復讐よ!見た目で判断して、身体の事を考えずに呑気に写真なんて撮ってるからそんな目に遭うのよ!」

絵麻「甘利さん…もう止めて…!この人達を解放してあげて…!」

茜「絵麻さん!」

茜の守備を通り、絵麻は前に出る
甘利に何か訴えたいみたいだ

甘利「どうして?絵麻さんだって、言われて傷ついていないわけ無いでしょう?客のために考えて作ったお菓子を貶されたのよ?私の気持ち、分かるわよね?」

絵麻「…私も確かに、見た目で判断されて、どれほど辛い思いをしたのかは分かる。でもだからって、人を傷つけて良い理由にならないわ。私のケーキを食べなくても、他で栄養が補えるならそれでも構わないし、1人でも多くのファンがいてくれるなら、それだけで十分だもの」

茜「絵麻さん…」

絵麻「甘利さん。貴方の作品を見て分かるわ。貴方はお店を持つにふさわしい。その腕を、作ったお菓子を利用して、これ以上罪を重ねちゃダメよ。そんなことをしたら、折角作ったお菓子に失礼だわ…!」

甘利「…何それ?説教のつもり?私とあんたは違うって言いたいの?」

強く訴える絵麻に、帰ってきたのは憎悪を露にした顔だった
その目から出てきたのは、真っ黒な液体
アビリティの過剰使用と重度のストレスによる、オーバーネクロの初期症状だ

甘利「言ったハズよ?私は嫌な思いでお菓子を作っていたって!失礼もクソもないわ!」

茜「いけない…!皆さん逃げてください!」

ゆに「えぇ~っ!でも鍵無いよぉ!」

ここでオーバーネクロになってしまえば、閉じ込められている人々を危険に晒してしまう
鍵もどこにあるのか見つかっておらず、探す時間がない

茜(ど、どうすれば…!)