3つの王国が君臨する世界 ある王国では、女王が“母となること”を追い求め、また、ある王国では、老婆が“若さと美貌”を熱望し、そして、もう一つの王国では、王女がまだぬ“大人の世界への憧れ”を抱いていた やがて、それぞれの願いは叶えられるが、そこには皮肉な運命の裏切りが待っていた…。
- IL RACCONTO DEI RACCONTI - 監督 マッテオ・ガローネ
出演 サルマ・ハエック、ヴァンサン・カッセル、ジョン・C・ライリー 他
こちらは2016年制作の イタリア フランス
の合作映画です(133分)
以前ご紹介した映画 「リアリティー」 の マッテオ・ガローネ 監督作品である本作は、前作とガラッと変わった ダークでビターな大人のファンタジー映画となっています。原作は17世紀にナポリで書かれた民話集で、50話の中から 3つの話を抜粋して物語が構成されています グリム童話は本作の後に出版されており、本作から影響をうけたと思われるお話もあるようです。
「五日物語」 には日本ではサブタイトルが付いていて、「三つの王国と三人の女」 となっています 映画では、隣接する三つの国の女性のお話が、それぞれ独立したストーリーごとに交錯して進んでいく構成となっています。
ロングトレリス国の王妃は、不妊に悩んでいましたが、ある日 謎の男のお告げで 「海底に棲む怪物の心臓を処女に調理させ、食べれば懐妊する」 と告げられます。 夫である国王は自分の命を犠牲にして怪物を殺し、その心臓を王妃が食べると、王妃は懐妊。
また、心臓を調理した下女も同じく懐妊し、双子のような男の子が2人生まれます 2人の男の子、エリアス王子とジョナは兄弟のように仲良くなり、いつも一緒にいるので、それが気に入らない王妃はジョナと母親を追放にしてしまうのでしたが、、、
ストロングクリフ国の王は、歌声の美しい老婆を若い女性と勘違いし、毎夜二人の住む家へとドア越しに愛を囁く、彼女に言い寄る妹と暮らす姉の老婆は若く見せかけ暗がりの中、王の寝室へ行くが バレてしまい、森に突き落とされる。
ところがそこで魔女に出会い老婆は若さと美貌を手に入れ、王と結婚 それを知った老いた妹は自分も若くなりたいと願いはじめ、、、
ハイヒルズ国の王は、自分が育てた巨大化したノミを溺愛し、娘である王女を愛さない。 不満を募らせる王女を嫁がせる気もない王は、難問を解いた男と娘を結婚させると言い出し、王女と結婚したい身分違いの男達が集まります。
誰も解けないと高を括っていた王でしたが、鬼が難問を解いてしまい、王の見栄の為に、王女は岩山に住む鬼のところへ連れ去られてしまうのでしたが、、、といった おとぎ話が、同時進行で描かれます。
サブタイトルにあるように、それぞれの女性の願望 「出産、若さ、結婚」 といったものに必要以上に執着したが為に、その後 我が身に代価として降りかかる出来事が、残酷な描写で描かれます 反面、王 と呼ばれる男達の傲慢さや、好色、見栄の為に 女性が犠牲になってもいるのですが、、。
映画はまるでCG?と思う程、美しい三つのお城が登場しますが、どれも実景で撮影されているようです 勿論、怪物や巨大化したノミ (クローネンバーグ臭がしますが) なんかは一部CGですが、、、撮影は大変美しく、色彩がとても効果的にデフォルメされ、白い部屋の黒いドレスと赤い心臓や、森の緑の中の深紅のシーツと白い肌と、絵画的な美しさが物語をより視覚的に神秘的な世界へと誘い込んでくれます。
この残酷なおとぎ話を飾る衣装も豪華で見事の一言で、それを観るためだけでも価値のある作品です。 俳優陣は サルマ・ハエック、ヴァンサン・カッセル、トビー・ジョーンズ、ジョン・C・ライリー と多国籍で、これまた渋いながらも豪華な顔ぶれです。
不妊の王女に助言した謎の男 (悪魔でしょうか?) が後半に王女にこう言います。「欲望でも行いでも相応の結果が伴う 凶行に及んだ欲望は、凶行でしか満たされませんそして代価が求められる 」 そんな怖くて美しい映画でありました。
キャッチコピーにある 「これはママが絶対に読んでくれなかった物語」 でございます 個人的には、物語も画もなかなか楽しめた作品でしたので、怖いもの見たさの方がおられれば是非ご覧になってみて下さいませ、です。
では、また次回ですよ~!
エンドクレジットも素敵だったので アップしてご紹介させて頂きまする こういうサービス精神があると 嬉しくなるものです