19世紀、アイルランドのダブリン。アルバート・ノッブスは、ホテルのレストランで住み込みのウェイターとして生真面目に働き、ホロラン医師をはじめとする常連客や他の従業員からの信頼も厚かった。 アルバートは若くして両親を亡くし、一人で生きていかねばならなかった(男たちに集団レイプされた経験もあった)ため、若い頃から男性として働いてきた。女性であることを隠してきたので、アルバートは他の人との関わりを極力持たないようにして長年過ごしていた。そんなある日、泊まり込みで仕事に来たペンキ職人ヒューバート・ペイジと知り合う。互いに男性として生きている女性であることを知った2人は親しくなる。そして、ペイジが女性と「結婚」し、夫婦として暮らしていることを知ったアルバートは、かねてより開業を計画していたタバコ屋を、同僚のメイドであるヘレン・ドーズと「結婚」して2人で営むことを夢見るようになる。
こちらは2011年製作の イギリス アイルランド
フランス
アメリカ の合作映画です(113分)
基は舞台作品で、その時主演した グレンクローズ が 製作、共同脚本、主演 を務めた
念願の企画です ついつい バーバラストライサンド の 「愛のイエントル」 という作
品もあったな~と思い出しました 男性が女性になる作品に、「お熱いのがお好
き」、「トッツィ―」、「ミセス ダウト」 等ありますが、大体がコメディですが、女
性が男性に扮すると何故かシリアスな「ボーイズドントクライ」 等 作品になるのが不
思議ですよね
今作の舞台は19世紀のアイルランド 孤児院で育ち、若い頃に男達に乱暴された経験
によって、女性が一人で生きて行くのが難しい時代 その為 男性として アルバートノ
ックス の名で生きて行く事を決める バーテンダー等の仕事から始まり、現在は由
緒ある モリソンズ ホテル で 信頼される ウェイター として働き、客からのチップを
床下に貯め いつか自分で煙草店を開く夢を持っていた ある日 ホテルの塗装の為、ペ
ンキ職人の ペイジ が訪れるのですが、一日 アルバート の部屋に泊まる事になってし
まいます 添い寝するアルバートですがダニがかゆくて 、こっそりとコルセットを
出した姿を ペイジ に見られてしまいます
パニックで 「誰にも話さないでくれ」 と懇願するアルバート その姿を見た ペイジ
は自らシャツをはだけ、自分の胸を見せるのでした
彼も女性だったのでし
た!その上 ペイジ は妻を持ち結婚生活をしていると知った アルバート は衝撃を受け
ますそして、もしかしたら 自分にもそのような生活が出来るのではないか?と希望を
持ち始めるのです この ペイジ との出会いが アルバート にとって、後に良かった事
なのか、出会わなければ良かった事だったのかはそれぞれ分かれる部分ではあります
この後のアルバートの行動が私には唐突に感じてしまったのですが、共に働く ヘレン
という若い女性をデートに誘うのです、その前に彼女に対して好意を持っている行動
や仕草等の描写が無い為 逆に言えば、あまりにもアルバートの身勝手な行動にもみれ
ますし、ヘレンには恋人が居る事も知っていたはずなのですが、、、ただ、アルバー
トの目線で見れば彼女?(アルバート) は今まで自分を偽って生きて来た為、他者と
本気で向き合った事が無い、その為 相手の気持ちを深く 察する事や、相手の気持ちに
なって考える事に疎くなってしまっていて、現実を合理的にしか考えられなくなった
のではないのでしょうか、、、
よってアルバートとのデートはとても退屈で、愛情表現すら ヘレン にはしません、と
いうよりアルバートは恋愛等 した事が無いので、それを表現する事すら出来なかった
のでしょう 自分の 夢の店 の話を勝手に進めるアルバート 親子程の年齢差のヘレン
にはふられてしまいます (それは観ている私にも、そりゃそうだ!と思えてしま
うのです) その頃、町にはペストが流行します アルバートも感染しますが、命は助
かりました しかしペイジ の妻は亡くなってしまっていました ペイジの家を訪れる
アルバート 悲しみに暮れるペイジに自分と暮らそうと持ち掛けます ここでも
如実に、アルバートという人物の人間性の欠如が表されている場面です 伴侶を亡
くした人の悲しみを察する事が出来ないのです 多分悪気は無いのです、それ以上に
好意で言っているのかも知れないのであります
ある日ヘレンは妊娠しますが、男の方は最終的に 「ヘレンとお腹の子供の面倒は見れ
ない」 とホテルの従業員の部屋で、別れ話の口論になります 見かねたアルバートは
仲裁に入り、男に対して怒りをぶつけます この場面は、女性のアルバートが今に至
った怒り、男社会への怒り、いつも傷を負うのは女性だという怒り、つまりはこのシ
ーン 女性としての怒りが初めて爆発する、深い意味をもった場面に思えます そ
のもみ合いが原因でアルバートは強く頭を打ち、そのまま眠りにつく事になってしま
います アルバートが亡くなった後、長い歳月をかけ貯めたお金は、ホテルの女主人
に見つかります
しかし後に、ホテルの大規模な塗装の為、呼ばれたのが ペイジ でした アルバートの
残した お金 で新たな塗装をする事を察している ペイジ
そして結局 男に捨てられ、ホテルに子供と残った ヘレン を ペイジ が発見し、話しか
けます ヘレンの事はアルバートに聞いていましたからね 赤ん坊を抱いている ヘ
レン ペイジも抱かせてもらいます 子供の名前を聞くと アルバート と名付けていた
ヘレン しかしそのうち子供は何処かに引き取られ、彼女も路頭に迷う事になるとき
かされるのです ペイジ は ヘレンに向かって言います 「それじゃ、、、そうならな
いようにしよう」 とどうやら ペイジ はアルバートのお金を、塗装料 を吹っ掛けて取
り戻し 、ヘレンと子供の将来を思案しているような表情を浮かべるのでありました
これによって、アルバートの人生の 負の連鎖は断ち切れる事になったのであります
今作で最も印象的なシーンは、ペイジの妻が亡くなり、その服を二人して着て海岸で
走るアルバートの姿であります 初めて女性として開放される場面は、強く胸を打ち
ます ただ最後まで疑問に残るのは アルバートの 性 の アイデンティティ でありま
す 男性として女性が好きなのか、女性として女性が好きなのか、それとも生活、夫
婦という形をなす為には、自分が男性の外見の為、女性が相手に相応しいと思ってい
るのでしょうか?
若い頃に男性に乱暴されたトラウマで、男性は恐怖の対象となったのか?そこが少し
繊細で、こちらの理解が及ばない所でありました この時代の女性が現在を見たらど
う思う事でしょうと、ふと想いを馳せる私でありました ヘレンを ミア ワシコウスカ
(アリスインワンダーランド) ペイジを ジャネット マクティア (男気溢れるキャラ
クターを見事に演じておられます) ホテル好き、ウェイター好き、メイド好き、格
式美好きにはたまらない作品であります 時代に翻弄された女性の映画でありますの
で興味のある方はご覧になってみて下さいましです
では、また次回ですよ~!