第17回カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したミュージカル作品。 傘屋の娘ジュヌヴィエーブと工員の青年ギイの恋が、アルジェ戦争によって引き裂かれ、互いに愛し合いながらも、別々の道を歩くまでを描いた悲恋劇。

 

 

 

 

 

  

   -  LES PARAPLUIES DE CHERBOURG  -    監督 脚本 ジャック・ドゥミ

 

 出演 カトリーヌ・ドヌーヴ、ニーノ・カステルヌオーヴォ、アンヌ・ヴェルノン 

 

こちらは1964年制作の フランス フランス ドイツ ドイツ の合作映画です。(91分)

 

 

 

 

  第一部 旅立ち 57年11月。 アルジェリア戦争ただ中のフランス。 港町シェルブールに住む20歳の自動車整備工ギイと17歳のジュヌヴィエーヴは結婚を誓い合った恋人同士。ギイは病身の伯母エリーズと、ジュヌヴィエーヴはシェルブール雨傘店を営む母エムリ夫人と暮らしていた。 エムリ夫人は2人が若過ぎる事を理由に結婚に反対していたが二人は幸せな将来を夢見ていた。

 

 

 

 

そんなある日、ギイに召集令状が届き、2年間の兵役をつとめることになる。 別れを惜しむギイとジュヌヴィエーヴはその夜結ばれる。 ギイは幼馴染みのマドレーヌに伯母の世話を頼み、ジュヌヴィエーヴと永遠の愛を誓い合って、シェルブール駅で別れを告げ戦地へと旅立つギィ。

 

 

 

 

第二部 不在 1958年1月。 ギィが去った後、彼の子供を身ごもっている事に気付いたジュヌヴィエーヴはギイからほとんど手紙が来ないことを不安に感じていた。そんな中、以前店の窮地を救ってくれた宝石商のカサールから求婚の申し込みを受ける。 便りの無いギイを思いつつも、いつしかカサールに心を許していくジュヌヴィエーヴ 産まれてくる子どもを一緒に育てようという求婚を受け入れ二人は結婚するのだった。

 

 

 

 

第三部 帰還 1958年3月。 足を負傷し除隊となって帰郷したギイはシェルブール雨傘店を訪れるが、店は所有者が変わっていた。ジュヌヴィエーヴの結婚と移住を聞かされたギイは自暴自棄となり、復職した整備工場も些細なトラブルで退職して酒と娼婦に溺れる。朝帰りした彼を待っていたのは叔母エリーズの死の報せだった。 心を入れ替えたギイは伯母の遺産でガソリンスタンドを始めることを決意し、伯母の世話を続けてくれていたマドレーヌと結婚する。

 

 

 

 

1963年12月。 あるクリスマスの雪の夜、妻マドレーヌと息子フランソワが買い物に出ていった後、一台の車がギイのガソリンスタンドに給油に訪れる、、。

 

 

 

 

以前ご紹介した映画 「ロシュフォールの恋人たち」 の前に作られたジャック・ドゥミ監督&ミシェル・ルグラン音楽のコンビによるミュージカル作品で、あのカンヌ映画祭でパルムドールを受賞しています。 

 

 

 

 

正直オープニングクレジットの映像が映し出された途端に、もう私の中ではこの映画は絶対に好き!と思ってしまう程の完璧な映像で、それだけでも十分と言っても過言ではありません。 そんな素敵なオープニングから始まる切ない恋の物語。

 

 

 

 

 

この映画のスペシャルな所はいくつかあるのですが、まずミュージカル作品でありながら日常の中で突然踊り出すというお決まりのダンスシーンが一切登場しない事。 しかし、セリフは全て登場人物による歌で表現されていて、ほとんどの場面には何かしらの音楽が流れているのです。 ただ歌は演者本人ではなく、あのダニエル・リカーリ等が事前に歌ったものが使用されていたりするのですが、、。

 

 

 

 

普通からいえばかなり違和感のある設定なのですが、それを可能にしているのが美しく計算された映像や衣装、小物に至るまで、色や光にこだわった特殊な映画の魔法によって、非日常的な世界が実際にそこに存在しているかように信じ込ませてくれます。 それによって最初は違和感を覚えていた事も忘れ、いつしかこの美しい映画の世界観に陶酔してしまっているのです。

 

 

 

 

映画は 旅立ち、不在、帰還 の三部構成で語られ、傘屋の娘ジュヌヴィエーヴと自動車工の青年ギイの恋が戦争によって引き裂かれるという至ってシンプルな物語ですが、実はその根底にはアルジェリア戦争という悲劇が裏にあるシビアなお話でもあります。

 

 

 

 

そんな背景によって多くの恋人達が犠牲になったであろう現実を、あえて夢のような映像と美しい音楽で物語ったような本作、監督の真意は分かりませんが、映画のエピローグで再び出会うジュヌヴィエーヴとギイの表情に人生の全てが凝縮されているようです。「男の子ならフランソワ、女の子ならフランソワーズ」って、、。

 

 

 

 

物語自体はシビアな作品ですが、やはりこの映画の見所はその映像の華やかさで、部屋の壁紙のポップな色使いと衣装のコントラスト、屋外の実景までも色彩に溢れとにかくカラフルでお洒落。 

 

 

 

 

歌だけでなく、窓や店のウィンドウから見える雨や雪、そしてカーニバルといった景色や、ジュヌヴィエーヴの衣装や髪形ひとつにも心情が反映された効果や意味があって、様々な視点から人物や物語を堪能出来る作品でもあります。

 

 

 

まぁとにかくブロンドヘアーのカトリーヌ・ドヌーヴがただただ美しく画面に映えています。

ギイ役のニーノ・カステルヌオーヴォは当時のイケメンだったんでしょうね。宝石商のローランは微妙でしたが、、そうそうお母さんも意外になかなかの美女でしたよ~。

 

 

 

 

マネキンからの結婚式や、ラストのスタンドでジュヌヴィエーヴが去り、マドレーヌが帰ってくるショット等、奇跡的な映像美を随所に感じる事が出来る映画です。

 

 

 

 

過剰なまでに美しいファンタジックな映像と、情感を溢れさすような音楽の中で語られるすれ違う男女のラブストーリー。 ラストの感じ方はそれぞれだと思いますが、まるで大人の映像ポエムのような作品となっていますので、機会があれば一度ご覧になってみて下さいませ、です。

 

では、また次回ですよ~! パー

 

 

 

 

 

 

 

 

もうただただ素敵なオープニングで、この素敵な映像と音楽に嫉妬すら覚えます。