名義株式の注意点 | 資金繰り 事業再生 M&Aアーク司法書士法人@代表社員 李 永鍋(リ ヨンファ)のブログ

1 名義株について


(1)名義株とは

名義株とは会社への実際の出資者と株主名義が異なる株式をいいます。


平成2年に商法が改正されるまでは株式会社設立には7人の発起人が必要でした(平成2年改正前商法第165条)。7人もの発起人を集めることは困難なことが多く、会社に無関係な親族などに名義を借りて株式の名義人となってもらい、実際には発起人のうち一部がお金を払い、会社を設立していました。これが名義株が発生する原因です。


中小企業、同族会社では、親族や従業員などの名義を借りた名義株が多いです。

名義株が発生しても本来であれば、名義が不要になった段階で名義貸与人と名義借人が共同して確認書等を作成して株主名簿の書き換え手続きをすれば良いのですが、その手続きをせずに放置しているケースがあります。双方が名義貸しについて忘れているケースもありますし、もともとの創業者が亡くなった後も名義書換えをせずに放置されている事もあります。


(2)相続税対策の名義株

これとは別に、中小企業が事業承継に伴う相続税対策のため、わざと経営者が出資して子ども名義などの名義株を利用するケースもあります。




2 名義株を解消する手続き3つ


 名義を貸し借りした時に、実際には出資をしていない旨の承諾書などがあれば問題はないと思いますが、実務でそのような承諾書があるケースは殆どありません。


名義株があるのにも関わらず解消のための書類が存在しない方向けに、解消に必要な書類3つを詳しくお話します!



名義株を解消する手続き3つ!


「名義株」があることが判明し、もともと出資した株主に名義を戻すにはどのような手続きが必要でしょうか?

その手続きは3つあります。



(1)株主名義変更に関する同意書

本来の出資者である株主に株式の名義を戻すための「株主名義変更に関する確認書」を作成します。



株式会社 〇〇〇〇 御中


 私、××××の名義の株式会社〇〇〇〇株式 合計◇◇◇株に関しましては、私が払い込みをしたものではなく、いわゆる名義株であって、私自身は何らの権利を有するものではありません。当該株式については本来の権利者である△△の要請があった場合、直ちに名義書換に応じることを確認いたします。


     (署名) ××××    (印) 

  


上記の確認書と一言一句合わせる必要はありませんが、名義株であることを確認する内容を記載した合意書や同意書を作成しましょう。そして、いつか税務調査などで税務署から株式の名義に変動があった理由を確認された際に、証拠として見せることが出来るように、必ず保管しておきましょう!


押印は、できれば実印とし、その印鑑証明書を添付して保管してください。


 そもそも名義人である株主が配当を受け取っている場合には、名義人が真の株主と判定される恐れがあります。名義株の判定は出資、配当、株主としての権利の行使などの各視点から総合的に行う必要があります。


出資した時の振込みを確認できる通帳などがあると良いです。


 



(2)株主名簿記載事項証明書

 次に会社から「株主名簿記載事項証明書」を発行してもらいます



この証明書を発行してもらうためには、真の株主と名義人が共同して、会社に対して株主名義の書換手続きを行います。そして、会社側がその書換について承諾をして、株主名簿が書き換えられれば、この証明書の発行が可能となります。

株主名義の書換手続きも必ず忘れずに行いましょう。


 


 


(3)配当金受領証

真の株主に対して配当を出し、真の株主が署名した配当金領収書を保管しておくことが望ましいです。


もちろん無理に配当をする必要はありませんが、真の株主であるかどうかの判定には、配当金を受領していることがポイントとなるケースが多くありますので、あるに越したことはありません。



3 名義株解消の注意点


これらの手続きは本当に「名義株」である場合において行うべき手続きです。

名義人と思っていた株主が配当を受け取っていたり、実際に株主総会の議事に参加しているなど株主としての権利を有していた場合には、名義人が真の株主として取り扱われるため、名義を変更すると贈与と判断され、贈与税が課税されるリスクがあります。




名義株と疑われる株式がある場合にはかならず専門家に相談しましょう。