末期がんの患者さんが、
一番恐れていることは、なんだと思いますか？
「痛みへの恐怖」なのだそうです。
先日も、ある患者さんが話してくださいました。
「身体中に、脂汗が吹き出すほどの激痛。
あの激痛は二度と味わいたくない。
またあの痛みに、襲われるかと思うと
恐れと不安でいっぱいになる。」
それは、
大腸がんが原因で、腸閉塞による激痛でした。
なんども耐え難い痛みを、繰り返したと言います。
今は、緩和ケアの処方によって、
その痛みはほとんどなくなったと言い、
言葉を続けます。
「今は、他の痛みがあるけどね…」
それは、心の痛み。
「自分でも、なぜ癌になったかわからない。
なぜ、癌になる人とならない人がいるのかと考える。
健康な時と今とでは、考え(価値観)が変わった。
この先、またどう変わるか、あるいは変わらないのか、
自分でもわからない。」
病気になって、知った事がたくさんある、
思考の変わりゆく様も、その一つだと言います。
まさか自分が、こんなに苛つくなんて...
まさか自分が、こんなに不安に襲われるなんて...
あれほど、健康に気をつけていた私がまさか...
今まで知らなかった自分をみて、
自分で自分が、分からなくなる時があると。
癌という病気は、人を哲学者にもすると思う。
癌という病気にかかったからこそ、
人生とは何か、
病気とは何か、
人体の不可思議さを
己の身を持って実感し、
正面から、命と向き合う。
健康な身体であれば、
こんなことは、全く考えもしなかっただろうと、
その患者さんは、私に言いました。
話疲れて来たのか、
言葉数が少なくなり、そのうち寝息が聞こえてきます。
こうして、
アロマのトリートメント(優しいマッサージ)を
させて貰う時間は、
心にある思いを、話してくださる時間にもなっているのですよね。
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