こんにちは。
あおい堂鍼灸院の今泉です。
円形脱毛症は症状の程度や具合から単発性や多発性、蛇行や汎発などと区分されているのが一般的です。私自身はその区分にはあまり意味を感じていないのですが言葉一つで状況が把握できるメリットはあるように思えます。
さて、そのような中でも本日の記事は汎発性と呼ばれる症例をご紹介します。
汎発性とは頭皮に関してはほぼ全頭に脱毛範囲が及び、尚且つ眉毛やまつげ、体毛に至るまで様々な全身の「毛」が抜けてしまうタイプの事です。「汎発」という言葉自体がやや難しい印象なので世間的には全頭型として表現されることが多いようにも思えます。
円形脱毛症は脱毛範囲の広狭のみによって治りやすさの違いが生じるわけではありませんが、やはり汎発性は難治である場合も多く、治り始めたとしても脱毛範囲の広さからビジュアル的に回復するまで多くの期間を要する実情があります。
症例は30代男性
下の画像は抜けている真っ最中です。
脱毛範囲は全頭に及びマイクロスコープで確認すると切れた毛やウネウネ曲がった毛、根元の薄茶色い毛、蟻の触角のように折れた毛などが所かまわず見られる状況です。
当院での施術の他は大学病院皮膚科脱毛外来での紫外線照射とセファランチン、グリチロンの服用を終始この記事の最後の場面までおこなわれています。
ただしアトピー性皮膚炎があるので痒い時だけステロイドの塗り薬を幹部に塗られています。
≪解説≫
全頭的に抜けが激しく厳しい状況です。髪に触れただけでもハラハラと落ちてきてしまいます。その中でも頭頂部を中心に後頭部や側頭部も症状が進んでしまっています。天辺の頭皮から髪の生え際に向かい脱毛範囲が広がっているようです。
≪解説≫
最初の画像から4週間後です。最初の画像からこの間、週1で通っていただきましたが抜ける勢いはそのままです。脱毛範囲は本来の生え際を残してほぼほぼ切れて抜けてしまったようです。皮膚科における紫外線照射も毎週継続中です。
≪解説≫
前の画像から4週間後です。この間も週1で通っていただきましたが残念ながら抜けを止めるには至っていません。従来からあったほぼ全ての髪が抜けてしまいました。紫外線照射も同条件で継続中です。
≪解説≫
前の画像から4週間後です。従来からの髪はほぼ全てが無くなり、切れ残った毛も大部分が抜けています。切れ残った毛は抜ける事が回復の過程の一つでもあるのでこちらの方は問題ありません。ただしマイクロスコープで頭皮を観察するとところどころに角栓が視認できるようになりました。
≪解説≫
前の画像から2週間後の画像です。あまり変化ないように思えますがよく見ると前頭部の1部から新しい産毛が生えだしてきています。マイクロスコープで頭皮を確認するとチラホラと白くて1ミリ以下程度の短い産毛が少数確認できます。どの円形脱毛症でもいえる事ですが生えてきた産毛は毛先がとがっています。習字にしようする筆先のような感じです。髪が生えだすとき、いきなり太くてしっかりした髪がズドンと生えだす事はありません。必ず毛先は細くなります。ただその後頭皮を掻く等の行為によって毛先のみが物理的に切れてしまう事はあります。その際は産毛であっても観察時は毛先がブチっと切れたような形状に見える事はあります。
≪解説≫
前の画像から4週間後です。諸条件変更有りません。頭頂部の画像を見ると黒い部分が見えます。これは産毛が生えだしてきている為です。一方で先に生えだしていた前頭部右側の産毛の一群は切れてしまっています。切れたこと自体は喜ばしい事ではありませんが、円形脱毛症が治る過程において生えてきたすべての髪がそのままずっと成長するとは限りません。ある程度抜けてしまう(切れてしまう)モノも含みながら生えだす毛の本数が途中で抜ける(切れる)髪の本数を上回って脱毛部が狭くなる事があります。この現象は何も生えだしてきた初期のみに見られる事ではなくビジュアルが健常時に近い時でも小さな脱毛部がポコポコと現れたりする事もあります。非常に不安を感じる現象ではありますがその時の回復力の勢いや現れた脱毛部の形状である程度大丈夫な脱毛部か否か先を見通せると感じています。
≪解説≫
諸条件変更なしですが画像の時間的経過をペースアップして前の画像から8週間後です。
生えだしてきた産毛の群が更に広く濃くなってきているのが分かります。円形脱毛症の治り方について特に初めて罹った多くの人が思われているのが、治る時は脱毛部全体全部から一斉に髪が生えだすと云うものです。そのような場合もないわけでは無いのですが殆どは上の画像のように産毛の群が1つ2つと増えて尚且つそれが独自に広がり、群同士が融合して髪のある部分が増えていきます。丁度抜けて悪化する際も脱毛部が単独で広がり、また隣の脱毛部と融合して大きくなる様と同じです。
≪解説≫
諸条件変更なしです。
頭頂部の画像を見るとモヒカンのようなスタイルで生えてきていますがよく見ると正中線よりもやや左側にずれた感じで生えています。ここは東洋医学的には足太陽膀胱経(あしのたいようぼうこうけい)と呼ばれる経脈(けいみゃく:気の通り道)に相当します。紫外線照射ではどうなのか分からないのですが私の視点では鍼灸施術で「腎(じん:腎臓に纏わる気)」を補(ほ:増させる)してきた事と職業的にどうしても(笑)結びつけたくなります。膀胱と腎は東洋医学的に五行(ごぎょう:性質の様なもの)が同じなのです。
※出典『経絡流注講義』医道の日本社 横田観風著
西洋医学的には眼神経(がんしんけい:頭蓋骨の目のくぼみから出て前頭部辺りを管理する神経)の走行部位だと思いますが、眼神経は頭頂部より後ろまでは到達しないと思います(きっとたぶん)。
≪解説≫
生えてきた範囲が更に広がり、尚且つ産毛の毛の長さも伸びて来たようです。とは言え伸びる速さは健常時のそれとは比較に成らない程ゆっくりです。病み上がりの毛穴はまだ本調子ではありません。過去記事でも円形脱毛症の病態の本質は『髪が伸びなくなる事』であると定義してきました。回復して髪が生えてきてもまだ本来の能力を全開に引き出すことはまだ能わぬ時期のようです。
≪解説≫
当初の状態から思うとだいぶ黒くなってきました。生えていない部分は側頭部が中心です。西洋医学的には側頭筋(そくとうきん:アゴを噛みしめる筋肉)の直上ともいえます。脱毛範囲を管理する神経は下顎神経(耳介側頭神経)だと思いますがスンナリと認めにくい範囲に成っています。
上の図は過去記事で側頭筋がコルと皮膚に異常の出る部位を示した図です。赤丸の部分と脱毛部との関連性が臭いませんか?側頭筋の関連痛部位に関しては↓の過去記事をどうぞ。
東洋医学的には足少陽胆経(あしのしょうようたんけい:胆のうに関わる経脈)と云えます。
ここで一番最初の画像を思い出してみて下さい。
頭頂部を中心に抜けていました。頭頂部は足厥陰肝経(あしのけっちんかんけい:肝臓に関わる経脈)の流注(るちゅう:通り道)です。東洋医学では先ほどの腎と膀胱のように肝と胆も同じ性質を持つ仲間とされます。
どのような病気も
治りやすいところ、病の軽い部位から治りだします。
最終的に少陽胆経の部位が生えずに残ったという事は少陽胆経の部位が最も病が重かったと云えます。抜け始めた部位が厥陰肝経である事からもこの方の円形脱毛症は肝胆の病だったと云えます。東洋医学を少し勉強したことのある人は円形脱毛症は髪の病気だから「腎」が弱っているに違いないと決めがちです。間違いとは思いませんが、それだけでも無いと思います。元々「腎」の不調があった状態で新たに「肝」を病んだため「腎」に関する「肝」に発症した、または「肝」に関する「腎」を発症したと思えます。鍼灸の四診(ししん:望聞問切の四つの診断方法)で見当をつけて施術方針を決定します。
≪解説≫
左側頭部は脱毛部の形がだいぶ崩れてきました。回復の勢いが強い証拠です。一方で右側の側頭部は真ん中あたりに産毛の群が現れだしました。
因みに髪が伸びてきているのである程度のところできれいに散髪されています。
≪解説≫
短くされても髪が太くなってきているのでその存在感は失われていません。全頭型から回復されてきた方は時折生えてきた髪を短く刈られます。これは①伸びてきた髪の長さがバラバラであるので引っかかって抜けてしまうのを阻止するため、②抜け毛(生えてきているこのような状態でも抜け毛はあります)が長いと存在感があり不安になるので短くしておく、③まだ生えてきていない部位を把握しやすくする等のメリットがあります。デメリットとしては、①カットする際に生えだしたばかりの細い産毛を抜いてしまう事ある、②生えだしたばかりの産毛を視認しにくいため回復程度が分かりにくい等があります。短くしても長くしていてもその方のお気持ちが安定するのが最も良い事だと思いますのでどちらにしても良いと思います。
≪解説≫
あともう一息というところです。
画像はカメラのフラッシュを炊いて撮影しているので頭皮の肌色が見えやすい状況です。実際に室内の明かりでは頭頂部や後頭部は全く健常時と見分けがつきません。ただしこの状況でもマイクロスコープで観察すると切れ残った髪がごくたまに見つかります。回復時においても先ほどの小規模の脱毛が現れるのと同様に1~2本単位で髪が切れる(萎縮毛)事があります。切れ残った髪が有っても単体や極少数ならば心配ない事が殆どです。
≪解説≫
全て生えそろって脱毛前の状態と同じと成りました。
もしかするともっと濃くなることもあるかも知れませんが、外見上は全く普通の頭です。改めて書きますがフラッシュを炊いての厳しい条件での撮影です。室内の明かりで目視する分には全く申し分ない状況です。初めて行く床屋さんでも美容院でも何も言われないと思います。髪の伸びる速度も脱毛前にほとんど戻ったようです。
≪総評≫
実はこの症例は今から13年前のものです。
当時は今現在に比べて私自身まだ技が少なかった事もあり、今カルテを見返すと「あぁこんな風にしていたんだ……」などと温故知新の心境に成ります。もっとも皮膚科において紫外線治療もされていたので何が中心に功を奏したのかは誰も確定できません。しかし何はどうであれ脱毛症でお困りの方が喜ばれるのが一番なのでそこに私が関われた事を素直に喜びたいと思います。
病状としては汎発性としてはとても早い回復だったと思います。そしてここで気にってくるのがADTAFS(アタフス)との違いです。ADTAFSのFはフィーメールのF、アタフスのフは女性を意味する病名なので男性は関係ないようにも思えるのですが現状原因不明とされているので男性にADTAFSが男性に生じないとも限りません。経過全体を見ると共通項も多いように思えますが症状の始まりの部分が私には異なるように思えます。ADTAFSの場合はもっと初期から産毛が発毛しているように思えます。また私の感覚的な印象であてに成らないかもしれませんが今回の脱毛とADTAFSは別物のように思えますが真相はわかりません。
汎発性に限らず重い脱毛症の場合は何年、何十年と経てもなかなか変化しない場合もあります。その点では回復がかなり早い症例だったと言えます。
またこの方のケースは最初に掲載した画像から抜けを止める事が出来なかった。最終的には全頭、眉、体毛に至るまでかなりの脱毛に至ってしまいました。この方の様な急性の脱毛で脱毛範囲の拡大を止められるか否かはまだ分からないのが現状です。止められる時もあります。止められない時もあります。ただこれは結果から見て止められた止められなかったという話です。逆に確実に抜ける見通しも抜けが止まる見通しも誰もできない事だと思います。ただ止めることが出来そうか否かは現れた脱毛部の形状と抜ける勢いがその後を推し量るための最も有力な手掛かりに成りに成り得るように感じています。
時折感じる事なのですがある一定の時までに生えていた髪は最終的に全てが抜けてしまうという云わば時系列による『足きり』的な脱毛形態があります。例えば1月1日に生えていた髪は1月2日からどんどん抜け始めるが1月2日に生え始めた産毛は周囲の髪が抜ける一方の中スクスク育つような現象です。通常は同じエリアでは抜ける時は周囲全体が抜けて回復する時は周囲全体が回復するムードなのが多いのですが、この現象が見られずに同じエリアに抜ける髪と生えてきてこれから伸びていく髪が混在するような状況です。どちらかと言えば先ほどのADTAFS(アタフス)はこの『時系列的な足切り脱毛症』に似ています。このように一口に汎発性脱毛症と言っても様々な形態や病状の推移、経過が混在する状態で尚且つこれが円形脱毛症という一つの病名で区切られているので混乱してしまいやすいと思います。
脱毛範囲の拡大を阻止するために私も様々な施術を試みてきました。その中で今までしてきた施術において、それまで何もしなかったツボ(その人により異なる)に鍼をした日から抜けが減少したと云うものはそこそこ経験があります。こういうものを手ごたえと云うのかも知れませんが、この積み重ねを更に精査して新しい理論を構築していきたいと思います。なのである程度広がってしまった脱毛範囲の拡大阻止に関してはできない訳では無いと思うのですが難易度が高いのが現状です。ただまだ脱毛部が単発やごく小さいものである場合は早めに刺絡(しらく:鍼の手技の一つ)を施すのが私は良いと感じています。
一方で回復に関してはこの方の場合、早い段階から結構集中的に施術をしていたのが良かった気もします。基本は毎週で都合の合わない時は2週間程度の間隔で施術を出来ました。営業的な意味でとらえて欲しくないのですがやはり施術の頻度は回復の速度にある程度比例するように思えます。腕立て伏せを月に1回するのと毎日するのでは筋力の付き方が違うのと同様に施術も頻度が高い方が速い結果を望みやすいと感じます。筋トレと体質改善は本質が似ているのかも知れません。
よければ参考にしてみて下さい
≪参考過去記事≫
↓円形脱毛症の本質は髪が伸びないだって~?
↓ある程度決まってる??やはりこのブログの根幹です
以下は気になる品々……
胃が元気になる気がします(個人的な感想)。
副作用はお腹がすくこと?!
亜鉛も銅も入ってます。
チロシンも入っています!
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此方も見てみてください!
円形脱毛症の事がまとめてあります。
そしてあおい堂鍼灸院は
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